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【古典落語】でば吉 あらすじ・オチ・解説 | 悪女VS純情男の騙し合い怪談噺

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話芸の殿堂-古典落語-でば吉
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でば吉

3行でわかるあらすじ

出っ歯の吉蔵が遊女小照に身請け金を騙し取られそうになる。
兄貴分の吾助の知恵で偽の心中話を仕掛け、小照の悪辣な本性が露呈。
幽霊のふりをして仕返しし、最後は聞き間違いの連続で爆笑のオチへ。

10行でわかるあらすじとオチ

出っ歯の吉蔵(でば吉)が兄貴分の吾助に、遊女小照の身請け金六十両を要求。
吾助は小照に間夫がいることを知っており、吉蔵が騙されていると忠告。
吾助の提案で、吉蔵は偽の心中話を小照に持ちかけることに。
灰を毒薬と偽って小照を試すと、小照は簪を取り返すため吉蔵を千日墓原へ。
吉蔵が偽の毒薬を飲んで死んだふりをすると、小照は身ぐるみ剥いで逃走。
吾助と吉蔵は小照への仕返しとして、墓原で幽霊のふりをして脅かす。
小照は気絶し、喜助だけ逃げ、二人は小照の身ぐるみを剥いで仕返し成功。
喜助が戻って倒れている小照を介抱すると、朦朧とした小照が「幽霊」と。
喜助は「にゅ〜めん」「出刃で切られた」「極楽?」と聞き間違いを連発。
言葉の行き違いによる滑稽な会話がオチとなる。

解説

「でば吉」は、純情な男と悪女の騙し合いを描いた怪談風の人情噺です。
主人公の吉蔵は「出っ歯」という特徴的な容姿から「でば吉」と呼ばれ、その純朴さと容姿のギャップが笑いを誘います。
遊女小照の悪辣な本性を暴く偽の心中場面では、死んだふりをした吉蔵から簪を奪おうと「指を一本ずつ折る」という恐ろしい台詞が出て、女の怖さを際立たせます。
後半の幽霊による仕返しは痛快で、最後の聞き間違いのオチは「幽霊→にゅ〜めん」「でば吉→出刃で切られた」「毒薬→極楽」と、朦朧とした小照の言葉を喜助が全く違う意味に取り違える言葉遊びの妙が光ります。
千日墓原という実在の場所を舞台にすることで、怪談話にリアリティを持たせつつ、最後は滑稽な聞き間違いで笑いに転じる構成が見事です。

あらすじ

出っ歯の吉蔵、”でば吉”が兄貴分の三木屋の吾助のところへやって来て、「嫁はんをもらうから六十両を出してくれ」と言い出す。
死んだ吉蔵の親が吾助に百両預けてあるのだ。
吾助が相手は誰かと聞くと、

吉蔵 「ミナミの”みやこ”という店の小照という女や」

吾助 「やっぱりそうか。
お前だまされてるねん。
あいつには間夫がおる。
兄貴と称している男や。
こないだ小照の店で二人が話しているのを立ち聞きしてしもたんや。兄貴ちゅうやつが、”おい、頼んどいた五十両でけたんか?”、”もうじき船場の吉蔵、でば吉が持って来ると思うねん”、”あんなやつにそんな大金が出来るわけないやろ”、”吉蔵は兄貴分の吾助が出してくれるから、その金でわてを身請けする言うてた”、どや、あんな女やめとけ」

吉蔵 「小照はそんな女やありゃせんがな」

吾助 「ほんなら、これから小照のとこへ行って、”人殺してきたから死なんならん、一緒に死んでくれ”言うて、この火鉢の灰を紙にくるんで、”これ毒薬や、半分づつ飲もう”言うてあいつの気持ち試してみな。
あいつが飲みよったら性根が見えた、おれのとこへ連れて来い。お前の女房にしたる」

早速、吉蔵は小照のところへ行って話すと、
小照 「急に死ぬちゅうても、わては用意もあるし、・・・そならあんた先に千日の墓原へ行って待ってておくれ。すぐに後から行くよってに」、「そんなら、待っとるで」、吉蔵は小照の頭から簪(かんざし)をひょいと抜き取っって出て行った。

小照は店の喜助に相談すると、
喜助 「アホなことしなはんな。そんなとこ行かんと放っときなはれ」

小照 「そやかてでば吉のやつ、簪抜きよった。あれ高いねんがな」

喜助 「そなら薬一緒に飲む時に、エヘンと咳払いしなはれ。そたらすぐにわしが飛び出して連れて帰るよってに」、ということで千日の墓原へ行って、いよいよの時に何べんも咳払いをしても喜助は現れない。

もうこれ以上待っては死ぬ気などないことがでば吉にバレてしまうと、
小照 「あんた先に飲んでおくれ。男ちゅうもんは薄情やさかい、わてが死んだらあんた逃げるかも知れん」、とうとう先にでば吉に飲ませてしまった。
偽せ毒薬を飲んで、

吉蔵 「ああ、体がしびれてきた。お前も早よ飲めや・・・」と、死んだふりだ。

小照 「わてもすぐ行くさかいに・・・」、やっと喜助が来て、「死んでまっか」、

小照 「死によった。簪取り返さんと・・・」

喜助 「・・・懐の中でギュッと握りしめてますわ。あきらめなはれ」

小照 「相手は死人や。
指一本づつ折りいな。痛いことあらへん」、やっぱり女は鬼だ魔物だ。

喜助 「ありゃ、指折る言うたら、手ぇ離しよったで」、簪どころか小照は奪衣婆のように財布から何から身ぐるみ剥いでとんずらしてしまった。

泣き泣き吾助の家に飛び込んで来たでば吉に、
吾助 「どや、小照は本性現したやろ。よっしゃ、仇取ってやろう」、吾助は小照と喜助が千日の墓原を通るように段取りして、そこへでば吉の幽霊を出させる。

「うらめしい~・・・」、「きゃあ~」と小照は目を回し、びっくりした喜助は一人で逃げて行ってしまった。
こないだの仕返しと、でば吉と吾助は小照を身ぐるみ剥いで帰ってしまった。

店に逃げ帰った喜助だが小照のことが心配になって、若い者を引き連れて墓原へ戻る。
裸で倒れている小照に、
喜助 「おい、小照さん、しっかりしなはれ!」、もうろうとしながら、

小照 「ゆ~れん、幽霊や・・・」

喜助 「なに、にゅ~めん・・・」

小照 「でば、でば、でば吉や・・・」

喜助 「でば、出刃で切られた・・・」

小照 「ど、ど、毒薬や・・・」

喜助 「極楽や?何言うねん。ここは地獄の千日の墓原や」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • でば吉(でばきち) – 出っ歯の吉蔵の愛称。江戸時代は身体的特徴をあだ名にするのが一般的でした。
  • 間夫(まぶ) – 遊女の馴染み客や情夫のこと。「間男」とも書き、遊女と密通する男を指します。
  • 身請け(みうけ) – 遊女の年季奉公の契約を金銭で解消し、自由の身にすること。大金が必要でした。
  • 六十両 – 江戸時代の高額な金額。現代の価値で約600万円から1000万円相当。庶民には大金でした。
  • 千日墓原(せんにちぼばら) – 大阪にあった墓地。現在の千日前付近で、怪談話の舞台としてよく使われました。
  • 簪(かんざし) – 女性の髪飾り。遊女の簪は高価で、身分や格を示す大切な装身具でした。
  • 奪衣婆(だつえば) – 地獄で死者の衣服を剥ぎ取る鬼婆。この噺では小照の冷酷さを表現するために引き合いに出されます。
  • 兄貴分 – 江戸時代の商家では、親方や先輩が年下の者の面倒を見る習慣があり、その関係を指します。

よくある質問(FAQ)

Q: でば吉は上方落語ですか、江戸落語ですか?
A: 上方落語(大阪の落語)の演目です。「ミナミ」や「千日墓原」など大阪の地名が登場し、大阪弁で演じられます。

Q: 六十両は現代のいくらくらいですか?
A: 時代や換算方法により異なりますが、概ね600万円から1000万円程度と言われています。当時の庶民にとっては一生かかっても貯められないような大金でした。

Q: 千日墓原は実在した場所ですか?
A: はい、実在しました。現在の大阪・千日前付近にあった大きな墓地で、多くの怪談話の舞台となった有名な場所です。明治時代に移転されました。

Q: オチの聞き間違いはどういう意味ですか?
A: 朦朧とした小照が「幽霊(ゆうれい)」と言うのを喜助が「にゅ~めん(煮麺)」と聞き間違え、「でば吉」を「出刃で切られた」、「毒薬(どくやく)」を「極楽(ごくらく)」と次々に聞き違える言葉遊びのオチです。

Q: この噺は怪談ですか、人情噺ですか?
A: 怪談の要素を含んだ人情噺です。幽霊が登場しますが本物ではなく、純情な男が悪女に騙されかけるという人間ドラマが中心で、最後は笑いで締めくくります。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 上方落語四天王の一人で人間国宝。小照の悪女ぶりと吉蔵の純朴さを見事に演じ分けました。
  • 桂枝雀(二代目) – エネルギッシュな語り口で、幽霊場面の恐怖と笑いを絶妙に表現。聞き間違いのオチも秀逸でした。
  • 桂文枝(六代目) – 現代的な解釈を加えながらも、古典の味わいを残した演出で人気があります。
  • 桂ざこば – 豪快な語り口で小照の悪辣さを強調し、痛快な仕返し場面を印象的に演じます。

関連する落語演目

同じく「遊女・廓」がテーマの古典落語

「幽霊・怪談」要素を含む古典落語

「聞き間違い・言葉遊び」がオチの古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「でば吉」のオチは、「幽霊→にゅ~めん」「でば吉→出刃で切られた」「毒薬→極楽」という三段階の聞き間違いが絶妙です。朦朧とした状態で発せられる言葉を全く違う意味に取り違える喜助の早とちりが、緊張感のある場面を一気に笑いに変える見事な構成です。

この噺が描く「純情な男が悪女に騙される」というテーマは現代でも通じるものがあります。しかし、単なる被害者の話で終わらず、知恵を使って仕返しをするという痛快さが魅力です。兄貴分の吾助が吉蔵を救うために知恵を絞る姿は、江戸時代の人間関係の温かさを感じさせます。

一方で、小照の「指を一本ずつ折りいな」という台詞は、女性の恐ろしさを強調する演出として印象的です。死んだふりをした相手から簪を奪い取るために平然と暴力を振るう姿は、愛情のない金銭目的の関係の冷酷さを象徴しています。

実際の高座では、吉蔵の純朴さ、小照の悪女ぶり、喜助の間抜けさを演じ分ける演者の技量が見どころです。特に幽霊場面の怖さと笑いのバランスが、演者によって大きく異なるのも楽しみの一つです。機会があれば、ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。


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