大工手習い
大工さんといえば腕の立つ職人ですが、文字は苦手という人も多いはず。
そんな大工さんが手習いを始めたら、どんなことになるか。
職人気質と文字の世界が出会った時の珍騒動を描いてみました。
職人の手に筆は馴染まない
大工の腕前は立派でも、筆の使い方はまた別の話。
手習いを始めた大工さんの奮闘記です。
あらすじ
腕の良い大工の金太郎が、文字を覚えたいと思い立った。
金太郎:「俺も文字が書けるようになりたい」
女房:「どうしたんです、急に」
金太郎:「見積書を書けないと、客に馬鹿にされるんだ」
女房:「それは困りますね」
金太郎:「手習いの先生に頼んでみよう」
女房:「それがいいですね」
—
金太郎は手習いの先生を訪ねた。
先生:「大工の金太郎さんですね」
金太郎:「先生、文字を教えてください」
先生:「もちろんです。何から始めましょうか」
金太郎:「とりあえず、名前が書けるようになりたい」
先生:「分かりました。まずは筆の持ち方から」
金太郎:「筆の持ち方?」
—
先生が筆を渡すと、金太郎は金槌を握るように持った。
先生:「金太郎さん、筆はもっと優しく」
金太郎:「優しく?」
先生:「はい、こうやって」
金太郎:「なるほど、こうですか」
先生:「そうです。では『金』という字を書いてみましょう」
金太郎:「『金』ですね」
—
金太郎は筆を紙に当てて、いきなり叩いた。
ドン!
先生:「あ、それは叩くんじゃなくて」
金太郎:「叩かないんですか?」
先生:「筆は撫でるように動かすんです」
金太郎:「撫でる?」
先生:「はい、優しく」
金太郎:「難しいな」
—
しかし、金太郎の癖は直らない。
金太郎:「えいっ!」
ドン!
半紙に穴が開いた。
先生:「あ、破けちゃいました」
金太郎:「すみません」
先生:「新しい紙を用意しますね」
金太郎:「今度は気をつけます」
—
しかし、次も同じことになった。
金太郎:「えいっ!」
ドン!
また穴が開く。
先生:「金太郎さん、筆は工具じゃありませんよ」
金太郎:「でも、つい力が入っちゃって」
先生:「力を抜いてください」
金太郎:「はい」
—
一時間後、金太郎の前には穴だらけの半紙が山積みされていた。
先生:「これは…」
金太郎:「全部破いちゃいました」
先生:「でも、面白い模様ですね」
金太郎:「模様?」
先生:「穴の形が文字みたいに見えます」
金太郎:「本当ですか」
先生:「これは新しい書道かもしれません」
—
噂を聞いて、芸術家がやってきた。
芸術家:「これが立体書道ですか」
先生:「はい、金太郎さんの作品です」
芸術家:「素晴らしい!これは革命的だ」
金太郎:「革命的?」
芸術家:「平面の文字から立体の文字へ。これは売れますよ」
金太郎:「売れる?」
芸術家:「一枚千文で買い取ります」
—
結局、金太郎の「立体書道」は大評判になった。
金太郎:「文字を覚えようとしたのに、芸術家になっちゃった」
先生:「でも、儲かってるからいいじゃないですか」
金太郎:「文字はまだ書けませんけど」
先生:「でも、あなたの『金』という字は、私より高く売れました」
金太郎:「穴の開いた『金』ですけどね」
客:「今日はどんな立体文字がありますか」
金太郎:「本日は穴あき『大工』でございます」
まとめ
筆を金槌のように使って、文字に穴を開けてしまう大工。
でも、それが逆に芸術として評価されるという話でした。
失敗も見方を変えれば成功になる、そんな教訓が込められています。
でも、普通に文字を書けるようになりたかったでしょうね。


