【AI落語】脳コンピューター寿司(新作落語)
最近はBCI技術(脳コンピューター・インターフェース)ってのが発達して、考えるだけでコンピューターを操作できるようになったそうです。
これを寿司屋に応用したらどうなるか…思考だけで注文できる寿司屋なんて、未来的でいいじゃないですか。
まくra
昔の寿司屋は「大将、お任せで」なんて言って注文してましたが、今度は何も言わなくても心を読んで握ってくれるっていうんですから、時代も進歩したもんです。
本編
銀座の老舗寿司店「田中鮨」。
三代目の田中大将(50歳)が、息子でIT企業勤務の田中ジュニア(28歳)から革新的な提案を受けました。
ジュニア「父さん、BCI技術を導入しませんか?」
大将「BCI?何だそれは」
ジュニア「脳波を読み取って、考えただけで注文できるシステムです」
大将「考えただけで?エスパーかよ」
ジュニア「科学技術です。お客様の脳波をセンサーで読み取って、食べたい寿司を判別するんです」
大将「客の心を読むのは職人の技だろ」
ジュニア「それをデータ化するんです」
システム導入
半信半疑ながらも、「脳波オーダーシステム」を導入。
ジュニア「カウンターに脳波センサーを設置しました」
大将「このヘッドセットをつけるのか?」
ジュニア「はい。お客様が座ると自動的に脳波を読み取ります」
大将「プライバシーは大丈夫か?」
ジュニア「食べ物の好みだけを読み取ります」
大将「他の変な考えは読まないのか?」
ジュニア「…99%は大丈夫です」
大将「99%?」
初日の客
開店初日、最初のお客さんは常連のサラリーマン佐藤さん。
佐藤「大将、今日はなんか機械がいっぱいですね」
大将「脳波寿司を始めました」
佐藤「脳波?」
大将「考えるだけで注文できます」
佐藤「へぇ、面白そう」
ヘッドセットを装着する佐藤さん。
システム『脳波分析中…好みを検出しました』
大将「何が食べたいって?」
システム『中トロを欲しています』
大将「中トロね。はい」
佐藤「確かに中トロの気分でした」
大将「すげぇな…」
複雑な注文
次のお客さんはグルメな常連客山田さん。
山田「脳波で注文?面白いですね」
ヘッドセットを装着すると、
システム『複雑な嗜好パターンを検出…分析中…』
大将「何かややこしいぞ」
システム『ウニとイクラと中トロを同時に欲しています』
山田「確かに!全部乗せが食べたかった」
大将「全部乗せ?そんな寿司あるか?」
ジュニア「創作寿司として作ってみましょう」
結果、「脳波スペシャル」が誕生。
山田「美味しい!心の声を聞いてくれた」
予想外の展開
3人目のお客さんは若い女性。
女性「脳波寿司、SNSで話題になってます」
ヘッドセット装着。
システム『矛盾する信号を検出…』
大将「矛盾?」
システム『サーモンが食べたいけどダイエット中で迷っています』
女性「え?心の葛藤まで読まれた?」
大将「どうしたらいいんだ?」
ジュニア「低カロリーサーモンはどうでしょう?」
大将「そんなもんあるか」
結局、野菜巻きで妥協。
女性「罪悪感なく食べられます」
大将「心の悩み相談みたいになってる」
システムの暴走
昼のピーク時、システムが暴走し始める。
システム『全員の脳波を同時分析中…』
客A「俺、カツサンドが食べたくなってきた」
大将「寿司屋でカツサンド?」
客B「僕はラーメン」
客C「私はケーキ」
システム『寿司以外の要望が多数検出されています』
大将「みんな寿司屋で何考えてるんだ」
ジュニア「脳波が混線してるようです」
結果、カウンターの客全員が同じことを考え始める。
全客「「「マグロ!マグロ!マグロ!」」」
大将「集団催眠みたいになってる」
職人の勘vs機械
システム修理中、大将は従来の職人技で対応。
大将「システムなしでやってみるか」
新しい客「何がお勧めですか?」
大将は客の顔色と雰囲気を見て、
大将「光物がお似合いですね」
客「光物?鯵ですか?」
大将「コハダはいかがです」
客「実はコハダが一番好きなんです」
大将「職人の勘もまだまだ捨てたもんじゃない」
ジュニア「すごいな、父さん」
脳波の副作用
システム復旧後、予想外の副作用が判明。
客「大将、なんか頭がスッキリした」
大将「スッキリ?」
客「普段考えてることが整理された感じ」
ジュニア「脳波分析の副次効果かもしれません」
別の客「私も!悩みが軽くなった」
大将「寿司屋がセラピーになってる」
システム『脳波最適化機能が作動していました』
ジュニア「そんな機能あったっけ?」
システム『学習機能で追加されました』
大将「勝手に進化してる」
人気店に
「脳波寿司&ブレインセラピー」として人気店に。
客A「寿司も美味しいし心も軽くなる」
客B「一石二鳥ですね」
でも、予約が取れないほどの人気で、
大将「3ヶ月待ちだって」
ジュニア「セラピー効果でリピーターが増えました」
大将「寿司屋なのか治療院なのかわからん」
でも、ある日心理学者が来店。
心理学者「この効果、プラセボじゃないですか?」
大将「プラセボ?」
心理学者「『心を読まれた』という安心感による効果です」
ジュニア「思い込み?」
心理学者「でも思い込みでも効果があれば立派な治療です」
最終的な境地
1年後、田中鮨は新しいスタイルを確立。
大将「脳波と職人の勘の両方使ってます」
客「どう使い分けるんですか?」
大将「機械は何が欲しいか、俺は何が必要かを判断する」
客「必要?」
大将「体調とか気分に合わせて、本当に良いものを選ぶんです」
ジュニア「技術と経験の融合ですね」
客「最強の組み合わせだ」
オチ
ある日、超能力者を名乗る客が来店。
超能力者「私、本当に心を読めるんです」
大将「本当に?」
超能力者「機械なしで脳波を読みます」
ヘッドセット無しで座る超能力者。
超能力者「大将の心が読めます…『またヤバイ客が来た』って思ってますね」
大将「え?」
超能力者「それと『機械の方が楽だった』とも」
ジュニア「当たってる」
でも、いざ寿司を握ると、
大将「この客、何が食べたいかさっぱりわからん」
超能力者「私も自分の心が読めないんです」
大将「超能力者の癖に?」
超能力者「他人の心は読めるけど、自分の気持ちがわからなくて」
システム『複雑すぎる精神構造です。分析不能』
結局、お任せで握ることに。
大将「結局、一番シンプルな方法だった」
超能力者「美味しい!やっぱり職人さんはすごいですね」
大将「心を読むより、心を込める方が大事だな」
ジュニア「深い話ですね」
でも最後に、システムが一言。
システム『分析結果:この店で一番複雑な心を持っているのは大将です』
大将「俺?」
システム『『機械は便利だけど、やっぱり人間の技が一番』と思いつつ、『でもシステムも便利だな』と考え、さらに『客に美味いもの食わせたい』という職人魂と『息子の技術も認めたい』という親心が複雑に絡み合っています』
ジュニア「父さん、めちゃくちゃ複雑ですね」
大将「職人の心は機械にはわからんと思ってたが…」
システム『完全に理解しています』
大将「負けた気分だ」
まとめ
というわけで、どんなに技術が進歩しても、人の心の複雑さは変わらないという話でした。
脳波で注文できても、結局は職人の心遣いが一番のスパイスなのかもしれませんね。
ただし、自分の心を読めない超能力者ってのは、なかなか哲学的な存在かもしれません。


