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【古典落語】坊主二題 あらすじ・オチ・解説 | ざんぎり坊主になった地蔵様

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坊主二題

3行でわかるあらすじ

好色坊主の弁長さんが檀家の女中お里に惚れて、祥月命日を間違えたふりして訪問し、車井戸で「スキスキ」と聞こえて抱きつくが「キライキライ」で撃沈する。
体毛が濃くて困った弁長さんが珍念に教わって鳥もちを塗った地蔵の頭に尻を乗せるが、くっついて離れなくなり、やっと外れると「お地蔵さんがざんぎり坊主になった」というオチで終わる二題話。

10行でわかるあらすじとオチ

好色坊主の弁長さんが檀家の女中お里に惚れてしまう。
祥月命日を間違えたふりをしてお里の家を訪問する。
お里が車井戸に水を汲みに行き、弁長さんが後をつける。
車井戸の音が「スキスキスキスキ」と聞こえてチャンス到来と思う。
後ろからお里に抱きつくが、お里が驚いて綱を放してしまう。
水桶が井戸に落ちて「キライキライキライキライ、ドボズン(ど坊主)」となる。
弁長さんは体中毛深くて特にケツの回りの毛が邪魔で困っている。
小坊主の珍念が地蔵の頭に鳥もちを塗って尻を乗せる脱毛法を教える。
弁長さんが実行するが鳥もちを塗りすぎてケツが地蔵の頭にくっつく。
珍念に引っ張ってもらってやっと外れると「お地蔵さんがざんぎり坊主になった」がオチ。

解説

「坊主二題」は、好色で俗っぽい坊主を主人公にした古典落語の代表的な坊主噺で、二つの独立したエピソードで構成されている作品です。第一話では車井戸の音を「スキスキ」と勘違いして女中に抱きつくも「キライキライ」で撃沈する場面、第二話では脱毛法で地蔵の頭にケツがくっつく場面が描かれ、どちらも坊主の滑稽さと俗世への欲望を笑いに変えています。

特に印象的なのは、車井戸の音の聞きなしで、実際に車井戸(滑車を使った井戸)の音は「キーキー」という音がするため、「スキスキ」と「キライキライ」の対比が絶妙な音の表現として機能しています。また、水桶が落ちる「ドボズン」を「ど坊主」にかけた言葉遊びも秀逸で、弁長さんの失敗を音で表現した巧妙な演出となっています。

第二話の「ざんぎり坊主」のオチは、明治維新後に普及した西洋風の短髪「ざんぎり頭」と、鳥もちで毛が抜けた地蔵の頭を重ね合わせた時代性のある笑いです。坊主の体毛の悩みという生々しい話題を、地蔵様という神聖な存在と組み合わせることで、不敬と滑稽さのギリギリのバランスを保った絶妙な作品として評価されています。

あらすじ

「仏馬」の弁長さん。
今度は寺の檀家の女中のお里さんに惚れてしまった。
惚れればすぐに行動に移すのが弁長さんのいいところ?

檀家の祖先の祥月命日を間違えたふりをしてそそくさと訪れる。
家人に気づかれないようにお里さん近づく機会を狙っていると、お里さんが庭のはずれの車井戸に水を汲みに出て行った。

チャンス到来と後ろの方から車井戸に近づくと、水を汲み上げる車井戸の音が、「スキスキスキスキ・・」と聞こえた。

こりゃしめたと、後ろからお里さんに抱きつくと、お里さんはびっくりして綱を放したので水桶が井戸の中に、「キライキライキライキライ、ドボズン(ど坊主)」

弁長さんは体中毛深くて困っている。
ことにケツの回りの毛は邪魔くさい。
小坊主の珍念が尻の毛を全部一ぺんに抜く方法を教えてくれる。

地蔵の頭へ鳥もちを塗って、この上に尻をまくって座って、しばらくしてから飛び降りるという脱尻毛法だ。
早速、試みた弁長さん、鳥もちを多く塗り過ぎたのかケツが地蔵の頭にピタッとくっついてしまって飛び降りられない。

不様な格好を見てゲラゲラ笑っている珍念に手を引っ張ってもらって、なんとか飛び降りた弁長さん。
地蔵さんを振り返り、「あっ、お地蔵さんがざんぎり坊主になった」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 車井戸(くるまいど) – 滑車を使った井戸。綱を引いて水桶を上下させる仕組みで、「キーキー」という音が特徴。
  • 祥月命日(しょうつきめいにち) – 故人の亡くなった月日のこと。毎月の命日と区別して、年に一度の命日を指す。
  • 檀家(だんか) – 特定の寺に所属して、葬祭や法要を任せる家のこと。寺の経済基盤を支える存在。
  • 鳥もち(とりもち) – もちのきの樹皮から作る粘着物。鳥を捕獲するために使われた強力な接着剤。
  • ざんぎり頭 – 明治維新後に流行した西洋風の短髪スタイル。「散切り頭」とも書く。
  • 小坊主(こぼうず) – 寺で修行中の若い僧侶。雑用をこなしながら仏道を学ぶ。
  • 仏馬(ぶつま) – 別の落語演目。弁長さんが主人公で、この「坊主二題」の前日譚にあたる。
  • ど坊主 – 「大坊主」の俗称。ここでは「ドボン」の音と「坊主」を掛けた洒落。

よくある質問(FAQ)

Q: 弁長さんは実在の人物ですか?
A: いいえ、弁長さんは落語の創作キャラクターです。好色で俗っぽい坊主の典型として、複数の坊主噺に登場する人気キャラクターです。

Q: なぜ坊主が女性に惚れる話が多いのですか?
A: 江戸時代の僧侶は妻帯が禁じられていましたが、実際には戒律を破る者も多く、その矛盾を風刺的に描いたものです。庶民は聖職者の人間臭い一面を笑い話として楽しんでいました。

Q: 車井戸の音は本当に「スキスキ」と聞こえるのですか?
A: 実際の車井戸の音は「キーキー」という軋み音です。弁長さんの恋心が「スキスキ」と聞かせた勘違いで、結果的に「キライキライ」になるという音の対比が笑いを生んでいます。

Q: ざんぎり頭はいつ頃の流行ですか?
A: 明治維新(1868年)以降、文明開化の象徴として流行しました。「ざんぎり頭を叩いてみれば文明開化の音がする」という言葉もあります。

Q: この噺は現代でも演じられていますか?
A: はい、古典落語の定番として現在も演じられています。ただし、体毛の話など下ネタ要素があるため、演者によってアレンジされることもあります。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙な語り口で弁長さんの好色ぶりを愛嬌たっぷりに演じ、車井戸の音の表現が絶妙。
  • 立川談志(五代目) – 毒舌を効かせながら、坊主の偽善性を鋭く風刺。独特の解釈が話題に。
  • 柳家小三治(十代目) – 品のある語り口で下ネタも上品に表現。間の取り方が秀逸。
  • 三遊亭圓楽(六代目) – テンポよく二題を演じ分け、若い世代にも人気の高座を展開。
  • 桂文治(十一代目) – 伝統的な演出を守りながら、現代的な感覚も取り入れた名演。

関連する落語演目

同じく「坊主」が主人公の古典落語

言葉遊び・聞きなしが秀逸な古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「坊主二題」は、聖職者である坊主の俗っぽい一面を描いた風刺的な作品ですが、単なる下ネタ話ではありません。

第一話の車井戸のエピソードは、恋に浮かれた人間の勘違いと失敗を描いています。「スキスキ」と都合よく聞こえた音が、実は「キライキライ」だったという展開は、自分の願望で現実を歪めて解釈してしまう人間の性を表現しています。現代でも、SNSのメッセージを都合よく解釈して勘違いする場面など、通じるものがあります。

第二話の脱毛エピソードは、見た目を気にする坊主の俗世への執着を描いています。宗教者でありながら体毛を気にするという矛盾、そして安易な解決法に飛びついて失敗する様子は、現代の美容整形やダイエットブームにも通じる普遍的なテーマです。

「ざんぎり坊主」というオチは、明治維新という時代の転換期を象徴しています。伝統的な地蔵様が西洋風の髪型になるという図式は、日本の近代化の混乱と滑稽さを一言で表現した秀逸な締めくくりです。

実際の高座では、車井戸の音の表現や、弁長さんがケツを地蔵にくっつける仕草など、演者の技量が問われる場面が多く、それぞれの個性が光る演目となっています。


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