イメチェンの大惨事
美容院ってのは女性にとって聖地みたいなもんでしょうな。
髪型一つで印象がガラリと変わる。
でも、その大切な髪を他人に任せるってのは、ある意味命がけ。
今日は、そんな美容院で起こった悲劇…いや、喜劇の話をひとつ。
聞いてやってください。
まくら
女性の髪への思い入れってのは、男にはなかなか理解できません。
「ちょっと切りすぎた」だけで大泣きしたり、「思ったより短い」で一週間外出できなくなったり。
でも確かに、髪型って大事ですよね。
特に大切な日を控えてる時なんかは。
あらすじ
来月結婚式を控えた花子さん、三十路手前の会社員。
普段は忙しくて、近所の千円カットで済ませることが多い。
でも今回ばかりは違う。
人生一番の晴れ舞台、絶対に失敗は許されない。
花子「すみません、予約の田中です」
美容師「はーい!お待ちしておりました。今日はどうされますか?」
花子「実は来月結婚式で…思い切ってイメチェンしたいんです」
美容師「おめでとうございます!じゃあ、どんな感じにされたいですか?」
花子は雑誌の切り抜きを取り出した。
外国人モデルの写真で、ふんわりとしたウェーブヘア。
花子「こんな感じで」
美容師「素敵ですね!でも、このモデルさん、天然パーマなんですよ」
花子「え?」
美容師「お客様の髪質だと、パーマをかけないとこうはなりませんが」
花子「じゃあ、パーマで」
美容師「わかりました!任せてください」
運命の分かれ道
シャンプー台で髪を洗いながら、美容師が質問してきた。
美容師「パーマの強さはどれくらいにしますか?」
花子「え?強さ?」
美容師「ゆるふわか、しっかりか、それとも…」
花子「あ、しっかりで!中途半端は嫌なので」
美容師「承知しました!しっかりパーマですね」
実は、この美容師さん、新人だった。
「しっかりパーマ」の意味を取り違えてしまったのだ。
ゆるふわパーマをしっかりかけるのではなく、しっかりしたパーマと理解してしまった。
薬剤を塗られ、ロッドを巻かれて一時間。
花子は雑誌を読みながらウキウキしている。
花子「楽しみだなあ。みんなビックリするだろうなあ」
隣の客「あら、結婚式?いいわねえ」
花子「はい!今度こそ、きれいになって…」
いざ、仕上がりへ
ロッドを外し、シャンプーをして、いよいよ仕上げ。
美容師が慎重にドライヤーを当てていく。
美容師「お疲れ様でした!いかがでしょうか?」
鏡を見た花子の顔が固まった。
花子「え…?」
そこには、昭和のアイドル級のくるくるパーマの花子がいた。
まるで松田聖子の全盛期のような、強烈なカール。
花子「ちょっと…これは…」
美容師「しっかりかかりましたね!このパーマなら三ヶ月は持ちますよ」
花子「い、いや、もうちょっと…ゆるく…」
美容師「パーマは一度かけると、しばらくは直せないんです」
花子「しばらくって、どれくらい!?」
美容師「半年くらいは…」
絶望の淵で
鏡の前で呆然とする花子。
どう見ても、結婚式にはふさわしくない。
いや、どこにも出かけられない。
花子「あの…何とかならないんですか?」
美容師「ストレートパーマをかければ…でも今日は無理です。髪が傷んじゃうので」
花子「じゃあ、いつ?」
美容師「一週間後には…」
花子「結婚式まで三週間しかないのに!」
泣きそうになる花子を見て、店長が出てきた。
店長「どうされました?」
事情を聞いた店長は青くなった。
店長「す、すみません!新人が…責任を持って直します」
花子「本当ですか?」
店長「はい!でも…」
花子「でも?」
店長「お代はいただけません」
意外な展開
店長が花子の髪を見て、何かひらめいた様子。
店長「お客様、もしかして…昭和レトロがお好きですか?」
花子「え?」
店長「最近、昭和ブームなんです。このヘアスタイル、実は今すごく流行ってるんです」
花子「そうなんですか?」
店長「はい!芸能人でも、わざとこのパーマをかける人がいるくらい」
半信半疑の花子だったが、他に選択肢もない。
仕方なく、そのまま帰ることにした。
花子「でも、結婚式で浮かないかな…」
店長「大丈夫です!昭和テーマの結婚式とか、今人気なんですよ」
帰り道での出会い
電車の中で、花子は帽子を深くかぶって縮こまっていた。
すると、隣に座った老婦人が声をかけてきた。
老婦人「あら、素敵な髪型ね」
花子「え?」
老婦人「私の若い頃を思い出すわ。その頃はみんなそんな髪型だったのよ」
花子「そ、そうですか?」
老婦人「ええ。お嬢さん、結婚式?」
花子「はい…どうしてわかるんですか?」
老婦人「その髪型、花嫁さんの定番だったのよ。昭和の」
運命の再会
翌日、会社に行くと同僚たちが驚いた。
同僚A「花子ちゃん、すごい髪型!」
同僚B「昭和っぽくて可愛い!」
同僚C「結婚式に向けて?いいじゃない」
意外な好反応に、花子は少し安心した。
すると、営業部の山田さんが通りかかった。
山田「おお、田中さん!その髪型、うちの母親にそっくり」
花子「え…」
山田「母親の結婚式の写真見たことあります?昭和五十年代の」
花子「いえ…」
山田「そんな感じです。母親、今七十歳ですけど」
花子の顔が再び青くなった。
でも山田さんは続けた。
山田「でも、母親の結婚式の写真、すごく綺麗なんですよ。その時代の流行りってことでしょ?」
結婚式当日
結局、花子はそのパーマのまま結婚式を迎えた。
式場で新郎の両親と対面。
新郎母「まあ、花嫁さん!素敵な髪型ですね」
花子「あ、ありがとうございます…」
新郎母「私の結婚式の時とそっくり!懐かしいわ」
新郎父「そうそう、あの時の髪型だ」
新郎母「あの時代は、みんなこんな髪型だったのよ」
新郎の親戚のおばあちゃんたちも大絶賛。
おばあちゃんA「あら、昔の花嫁さんみたい!」
おばあちゃんB「品があっていいわねえ」
おばあちゃんC「最近の若い子は、こんな上品な髪型しないから」
最後の真実
披露宴後、新郎が花子に言った。
新郎「お疲れ様。すごく綺麗だったよ」
花子「ありがとう…でも、この髪型、失敗なの」
新郎「失敗?」
花子「美容院でパーマかけすぎちゃって…」
新郎「そうだったんだ。でも良かったよ。実は僕、昭和っぽい女性がタイプなんだ」
花子「え?今、初めて聞いた」
新郎「言えなかったんだよ。今どきじゃないから」
そこへ新郎の母親がやってきた。
新郎母「花嫁さん、どちらの美容院?私も同じ髪型にしてもらいたいの」
花子「え?本当ですか?」
新郎母「ええ!息子がね、『お母さんもああいう髪型にすれば?』って」
花子、夫となった男性を見つめ直した。趣味、完全に昭和だった。
まとめ
いやはや、人生何が幸いするかわかりませんな。
失敗だと思った髪型が、結果的には大成功。
おかげで新郎の好みも判明して、一石二鳥。
でも花子さん、今度は昭和ファッションも覚悟した方がいいかもしれません。
だって、旦那さんの理想の奥さん像、完全に昭和ですからね。


