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【古典落語】べかこ あらすじ・オチ・解説 | 九州の上方噺家の大失敗

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話芸の殿堂-古典落語-べかこ
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べかこ

べかこ は、九州巡業中の上方噺家が佐賀城で大失敗する上方落語。鳥が「コケコッコー」ではなく「べかこ」と鳴くというオチが秀逸です。

項目内容
演目名べかこ
ジャンル古典落語・上方落語
主人公泥丹坊堅丸(上方噺家)
舞台佐賀城
オチ鶏が「コケコッコー」ではなく「べかこ」と鳴く
見どころ容姿をけなされた噺家が「べかこ」で仕返しを試み、大騒ぎを起こす顛末

3行でわかるあらすじ

九州巡業中の上方噺家・泥丹坊堅丸が佐賀城の姫君の気鬱を癒すため招かれ、城内を案内されるが腰元たちに容姿を散々にけなされる。
とっさに「べかこ」で驚かしてやろうとするも、騒ぎを起こして召し捕られてしまう。
縄目の身になった泥丹坊は絵の鳥に鳴いてくれと頼むと、鳥が絵から出てきて「べかこ」と鳴くオチの上方落語。

10行でわかるあらすじとオチ

上方の噺家・泥丹坊堅丸が九州巡業中、佐賀城から姫君の気鬱を癒すため招かれる。
家老に城内を案内され、鳥の間で休憩中に腰元たちがのぞきに来る。
腰元たちは泥丹坊の顔を「狆が茶を吹いた顔」「水桶の紐通し」と散々にけなす。
怒った泥丹坊は襖の下から「べかこ~!」と顔を突き出して腰元たちを驚かす。
城内大騒ぎになり、泥丹坊は召し捕られて柱に縛り付けられてしまう。
「明朝、鳥が鳴くまで縄は解かない。絵の鳥に鳴いてもらえ」と無茶を言われる。
泥丹坊は必死に絵の鳥に「コッカコー」と鳴いてくれと頼む。
すると絵から本物の鳥が出てきて羽ばたきをする。
泥丹坊が期待して「コッカコーと鳴いてくれ」と頼む。
鳥は「べかこ」と鳴いてオチがつく。

解説

「べかこ」は、上方落語の代表的な作品の一つで、九州を舞台にした珍しい落語です。泥丹坊堅丸という上方の噺家が佐賀城で大失敗する物語は、芸人の苦労と人間の見栄やプライドを描いた秀作です。腰元たちに容姿をけなされた泥丹坊が「べかこ」で仕返しを試みるも、かえって事態を悪化させてしまう展開は、短気を起こすことの愚かさを教えています。

最後に絵の鳥が「べかこ」と鳴くオチは、鳥が「コケコッコー」と鳴けず「べかこ」と鳴いたという言葉遊びで、泥丹坊の運命を象徴的に表現した見事な仕掛けです。「べかこ」という擬音語が全編を通じて効果的に使われ、聞き手の記憶に残る印象的な作品となっています。

上方落語特有の軽妙な語り口と、九州という異郷の地での出来事という設定が、物語に独特の味わいを与えており、古典落語の中でも特に親しまれている演目の一つです。

あらすじ

泥丹坊堅丸という上方の噺家、九州に巡業に来て肥前の武雄の温泉場の大黒屋市兵衛とい宿屋の親父さんに世話になりながら、あちこちのお座敷や催し物で仕事をしていた。

ある日、佐賀のお城から家老の菅沼軍十郎が訪れ、姫君の気鬱(きうつ)の病いを癒すため城へ来て泥丹坊に面白い噺をしてもらいたいと言ってきた。
早速、市兵衛さんは泥丹坊を身綺麗にして、二人で城へ向かった。

家老の菅沼は噺の前に泥丹坊を城内の部屋を案内すると言い、狩野派の絵が描かれている松の間から梅の間、桜の間へと案内した。
さらに牡丹の間、紅葉の間、菊の間と続くが、泥丹坊が連想するのは花札だけと風雅がない。

やっと次の鶏(にわとり)の間で休憩、ここで待つようにと言い家老は泥丹坊を一人残して出て行った。
お茶とお菓子でくつろいでいると、外の廊下を衣擦れの音、腰元たちがが覗きに来たのだ。

小萩さん、「この前の上方からの役者と申す芸人は踊りを見せてくれましたが、ホンによい男ございましたなぁ、今日の噺家とか申す芸人も、きっともっとよい男でございましょ~なぁ」と、期待に胸躍らせ、ちょっと覗き見して思わず吹き出し、「うふ、わたしはこのような面白い顔をした男を見たことがございません。 ちょうどまぁ、狆(ちん)が茶を吹いたような顔」ときた。

わたくしもと覗いた牡丹さんは、「まぁ、ホンにこれはちょうど、水桶の紐通しのような顔でございます、ちょ~どあの鼻があぐらをかいている具合が・・・」、なんて散々な言いように泥丹坊も頭にきてびっくりさせてやろうと、覗き見している襖(ふすま)の下に這って行った。

ちょっとわたしにも見せてと紅葉さんは、座布団の上にいるはずの噺家を探すが見当たらない。「どこに、どこに」と、襖を少しづつ開け出した。

その真下で待っていた泥丹坊が「べかこ~!」と顔を突き出したから、「きゃぁ~!」、「べかこ、べっかぁこ~」、「きゃ~」、バタバタ、バタバタと城内は大騒ぎとなった。

「あの噺家とか申す芸人が腰元たちを追いかけ回してております」で、「何とけしからんやつ」と、哀れ泥丹坊先生は召し捕られてしまった。
泥丹坊は、「あんまり顔の悪口ばっかり言うから、冗談、洒落のつもりで”べかこ”をしてお女中たちを驚かしただけだ」と、申し開きをしても通じない。
あいにく市兵衛さんは忙しいからと先に武雄に帰ってしまい、頼みの綱の家老の菅沼さんはどこへ行ったやらで泥丹坊先生の回りに味方はいない。

「明朝、鶏(にわとり)が鳴くまで縄目を解くことはあいならん。目の前に鶏の絵が描いてある、この鶏に鳴いてくれと頼むがよい」と、無茶なことを言って家来の侍は泥丹坊を柱にくくりつけ行ってしまった。
もう成す術(すべ)のなくなった泥丹坊は絵の鶏に鳴いてくれと頼むしかない。

泥丹坊 「お前、名人の手になる鶏やろ。わしのためにひとつ”コッカコ-”と鳴いてくれ。 どう~ぞ、頼む~!」、その祈りが通じたものか、絵の中から鶏が出て来た。 

泥丹坊 「コッカコーと鳴いてくれ、頼む~!」、

鶏はバタバタ~、バタバタ~と羽ばたきをしたかと思うと、「べかこ」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 泥丹坊堅丸(でいたんぼうかたまる) – 架空の噺家の名前。「泥丹坊」は大坂で活躍した実在の講談師の名前から取られたとされます。
  • 気鬱(きうつ) – 現代でいう鬱病のような精神的な病気。江戸時代は身分の高い女性がよくかかるとされていました。
  • 狩野派(かのうは) – 室町時代から江戸時代にかけて活躍した日本画の流派。城や寺院の襖絵を多く手掛けました。
  • 狆(ちん) – 日本原産の愛玩犬。短い鼻と大きな目が特徴で、江戸時代は上流階級に愛されました。
  • べかこ – あかんべーのこと。舌を出して相手をからかう仕草。地方によって「べっかんこう」「あっかんべー」とも言います。
  • 縄目(なわめ) – 罪人として縄で縛られること。「縄目の恥」とも言い、武士にとっては最大の屈辱でした。

よくある質問(FAQ)

Q: 「べかこ」は実際にどんな仕草ですか?
A: 下瞼を指で下げて、舌を出す仕草です。現代の「あかんべー」と同じで、相手をからかったり驚かせたりする時に使います。地域によって呼び方が異なり、関西では「べかこ」「べっかんこう」と呼ばれます。

Q: なぜ鳥も「べかこ」と鳴いたのですか?
A: これが落語の妙味です。泥丹坊が「べかこ」をして騒ぎを起こしたことが、最後まで祟る形になっています。絵から出てきた鳥まで「コケコッコー」ではなく「べかこ」と鳴くというオチは、泥丹坊の運の悪さを象徴的に表現しています。

Q: この噺は実話に基づいているのですか?
A: いいえ、完全な創作です。ただし、江戸時代には実際に上方の芸人が九州各地を巡業することがあり、大名家に招かれることもありました。この噺はそうした時代背景を基に作られています。

Q: 佐賀城は実在しますか?
A: はい、佐賀城は実在します。現在の佐賀県佐賀市にあった鍋島氏の居城で、現在は佐賀城公園として整備され、本丸歴史館が建てられています。

Q: この噺は江戸落語でも演じられますか?
A: 「べかこ」は上方落語の演目で、江戸落語ではほとんど演じられません。舞台が九州であることや、上方の噺家が主人公であることなど、上方落語らしい特徴が強い作品です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 上方落語四天王の一人。人間国宝。この噺を復活させた功労者で、泥丹坊の滑稽さと哀愁を見事に表現しました。
  • 桂枝雀(二代目) – 爆笑王と呼ばれた名人。「べかこ」の場面での表情と動作が秀逸で、観客を大いに沸かせました。
  • 桂南光(三代目) – 「べかこ」の愛称でも親しまれる落語家。自身の愛称と同じ演目を得意とし、独特のテンポで演じます。
  • 桂文枝(六代目) – 現代的な解釈を加えながら、古典の良さを残した演出で若い世代にも人気があります。

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この噺の魅力と現代への示唆

「べかこ」は、芸人の悲哀と人間の短気が招く災いを描いた作品です。容姿をけなされて腹を立てる泥丹坊の気持ちは理解できますが、「べかこ」という幼稚な仕返しが大事に発展してしまう展開は、感情的な行動の危うさを教えています。

現代でも、SNSでの誹謗中傷に対して感情的に反応し、かえって炎上してしまうケースがよくあります。泥丹坊の失敗は、挑発に乗らず冷静に対処することの大切さを示唆しています。

また、この噺には上方と九州という地域性の違いも描かれています。上方の軽妙な芸風が九州の武家社会では理解されず、文化の違いが誤解を生むという側面もあります。グローバル化が進む現代においても、文化の違いを理解し尊重することの重要性を感じさせます。

最後の「べかこ」と鳴く鳥のオチは、一度犯した失敗は最後まで付きまとうという教訓でもあります。しかし同時に、どんな状況でも笑いに変えてしまう落語の精神も感じられ、人生の苦難をユーモアで乗り越える知恵を教えてくれます。

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