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【古典落語】足上がり あらすじ・オチ・解説 | 丁稜の失言が招く番頭の大ピンチ

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話芸の殿堂-古典落語-足上がり
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足上がり

足上がり(あしあがり) は、大店の番頭が丁稚の定吉を連れて贅沢な芝居見物を楽しむが、定吉の失言で横領がバレてしまう上方落語の傑作です。「足が上がってますわ」という、幽霊の演技と「クビになる」の二重の意味を持つオチが秀逸です。

項目内容
演目名足上がり(あしあがり)
ジャンル古典落語・上方落語
主人公大店の番頭と丁稚の定吉
舞台大阪の大店と中座(芝居小屋)
オチ「番頭さん、さいぜんに足が上がってますわ」
見どころ番頭と定吉の主従関係、四谷怪談の演技、「足が上がる」のダブルミーニング

3行でわかるあらすじ

大店の番頭が丁稚の定吉を連れて芝居見物に行き、贅沢な遊びを楽しむ。
定吉に嘘の口実を言わせようとするが、旦那にバレて横領まで暴露される。
何も知らない番頭が帰宅後、定吉の「足が上がってますわ」の失言でオチがつく。

10行でわかるあらすじとオチ

大店の番頭が芝居好きの丁稚・定吉を中座に連れていく。
桟敷の枡席を買い切り、芸妓たちも大勢引き連れた贅沢な芝居見物。
定吉は好きな芝居を美味しい料理とともに楽しみ、お小遣いまでもらって大満足。
先に帰る際、番頭は「佐々木さんの所で碁がはずんで引き止められた」と嘘を言うように言い含める。
しかし店に帰ると、佐々木さんが番頭を待っていたことが判明。
観念した定吉は、番頭の芝居遊びのことを洗いざらいぶちまける。
「筆の先から出る」(横領)という発言までばらし、番頭はクビになる。
旦那は明日請人を呼んで話をつけると決意。
その後、何も知らない番頭が上機嫌で帰ってきて、定吉と芝居談義。
最後に定吉が「足が上がってますわ」と失言し、番頭の運命が決まっていることを暗示する絶妙オチ。

あらすじ

ある大店(おおだな)の番頭、芝居好きの丁稚の定吉を連れて、中座で芝居見物。
桟敷の枡席を買い切り、芸妓たちやらもぎょうさん引き連れての贅沢な遊びだ。
好きな芝居を見せてもらい、美味い料理もたらふく食べ、おまけに若い芸妓から小遣いまでもらった定吉は大満足で先に帰る。

番頭は「帰ったら大旦那さんに、番頭さんのお伴で佐々木さんの所へ行きましたら、碁がはずんで番頭さんは引き止められてしまい、わたしは先に帰って参りました」と言うように言い含める。
店へ帰ると閉まっている。
定吉は「番頭はんのお帰りや」で、すぐ開けてくれるが、定吉一人と分かるや頭をポカポカとぶたれる。

定吉を呼んだ大旦那、「こない遅うまでどこへ行ってたんや。番頭どんはどうした」、定吉は手筈どおり、「・・・佐々木さんの所で碁がはずんで・・・」だが、大旦那「・・・佐々木さんは番頭どんに用事があると、つい今しがたまでここに座って待っていたんや・・・、正直に言わんか」

観念した定吉は、洗いざらいをぶちまける。
ついには「番頭さんは今日の費用はみんな筆の先から出るんや・・・」と得意げに言っていたと簡単に裏切り、寝返ってしまった。
大旦那「どうもこの間から様子がおかしいとは思うていたが、飼い犬に手を噛まれるとは、このことじゃ・・・明日、請人を呼んで話をつけてしまおう」。
定吉は自分が喋ったばっかりに番頭さんの足が上がる、暇を出されることになってしまって悔やむが後の祭りだ。

そうとも知らず上機嫌で夜更けに帰って来た番頭、店の者は先刻承知で開けると、番頭は抜かりなく甘党・辛党に気を配った土産物を配る。
番頭は定吉を呼び芝居の話を始める。
定吉は番頭の所業が大旦那にバレていることなどおくびにも出さず、定吉が中座から帰った後の芝居の話に聞き入る。

番頭は四谷怪談の隠亡堀の戸板返し、蛇山の庵室、伊右衛門の夢の場と、身振り手振りで得意げに話して行く。

番頭 「・・・お岩、まだ浮かばれぬな・・・寄るな、寄るでない・・・何、何、この子を育ててくれと申すか、ああよしよし、確かに育てるほどに、迷わず成仏してくれ、おお、よしよしよし、・・・む、こりゃ赤子と思いのほか、石仏。・・・・ヒッヒ-ヒッヒヒッヒェー」

定吉 「ああ怖(こわ)、・・・わて今晩、よう寝ん、こらとても一人で便所へ行かれへん。こんな怖い話はじめて聞きました」

番頭 「わしが今この蚊帳(かや)の陰へスーッと消え込む時に身体(からだ)が宙に浮いたように見えたやろ」

定吉 「宙に浮くはずや、番頭さん、さいぜんに足が上がってますわ」

解説

『足上がり』は、上方落語の古典作品で、江戸時代の商家文化と人間関係を巧みに描いた名作です。

番頭と丁稚の関係性

この噺の面白さは、番頭と丁稚・定吉の主従関係にあります。番頭は定吉を芝居見物に連れて行って良い思いをさせながら、一方で口止めのために嘘をつかせようとする。しかし、定吉の純朴さと正直さが、結果的に番頭を窮地に追い込むという皮肉な構造になっています。

横領の暴露と商家の厳格さ

「筆の先から出る」という表現は、帳簿操作による横領を意味しており、江戸時代の商家の経営実態を反映しています。当時の大店では信用が最も重要で、横領は即座に暇(解雇)につながる重大な背信行為でした。

「足が上がる」のダブルミーニング

オチの「足が上がってますわ」は、幽霊の演技で足が宙に浮いていることと、「足が上がる」(暇になる・クビになる)の二重の意味を持つ絶妙な言葉遊びです。定吉の無邪気な発言が、番頭の運命を決定的に表現している名オチです。


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 大店(おおだな) – 江戸時代の大商店。多くの奉公人を抱え、厳格な階級制度があった。番頭はその中でも重要な管理職でした。
  • 丁稚(でっち) – 商家に奉公する少年。10歳前後で奉公に出され、読み書きそろばんを学びながら商売を覚えました。定吉のような丁稚は商家の最下級の奉公人です。
  • 番頭(ばんとう) – 商家の最高幹部職員。経理や人事などを任され、主人に代わって店を切り盛りする責任者。信用を失えば即座に解雇される立場でした。
  • 中座(なかざ) – 大阪・道頓堀にあった芝居小屋。江戸時代から続く上方歌舞伎の中心地で、庶民の娯楽の殿堂でした。
  • 桟敷(さじき) – 芝居小屋の特等席。一般の席より高い位置にあり、料金も高額。贅沢な見物席として知られていました。
  • 枡席(ますせき) – 四角く区切られた観覧席。複数人で座れる広さがあり、飲食も可能な特別席でした。
  • 請人(うけにん) – 身元保証人。奉公人が商家に入る際、その人物を保証する役割。問題があれば責任を負う立場でした。
  • 筆の先から出る – 帳簿操作による横領の隠語。経理担当者が架空の支出を計上して着服することを指します。
  • 暇を出す(いとまをだす) – 解雇すること。商家では信用が最も重要で、横領が発覚すれば即座に暇を出されました。

よくある質問(FAQ)

Q: 足上がりの舞台は江戸時代のいつ頃ですか?
A: 具体的な年代は明示されていませんが、中座での芝居見物や商家の奉公人制度から、江戸時代後期(18世紀後半〜19世紀前半)と推定されます。この時代は町人文化が最も栄えた時期でした。

Q: 番頭が横領していた金額はどのくらいですか?
A: 噺では具体的な金額は語られませんが、桟敷の枡席を買い切り、芸妓を大勢引き連れるには相当な金額が必要でした。当時の感覚では、現在の数十万〜百万円相当の横領と推測されます。

Q: 定吉はなぜ簡単に番頭を裏切ったのですか?
A: 定吉は純朴で正直な性格として描かれています。大旦那の前で嘘がつけなかったこと、また「筆の先から出る」という言葉の重大性を理解していなかったことが原因です。決して悪意からではなく、無邪気さゆえの行動でした。

Q: 「足が上がる」という慣用句は現代でも使われていますか?
A: 現代では「クビになる」「解雇される」という直接的な表現が主流で、「足が上がる」はあまり使われません。しかし落語の世界では、この言葉遊びの妙が今も楽しまれています。

Q: この噺は江戸落語にもありますか?
A: 「足上がり」は上方落語の演目で、江戸落語での上演は稀です。商家の文化や中座という具体的な劇場名など、上方(関西)の要素が強い噺だからです。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語四天王の一人として、この噺でも品格ある語り口で商家の雰囲気を見事に表現。特に番頭の横領がバレる場面の緊張感の演出が絶品でした。
  • 桂春団治(三代目) – 爆笑王の異名を持つ名人。定吉の無邪気さと番頭の焦りを対比させる演技が秀逸。特に最後のオチの間の取り方が見事でした。
  • 桂文枝(六代目) – 現代の上方落語界の重鎮。古典を現代風にアレンジしながらも、本筋を崩さない演出で若い世代にも人気があります。
  • 桂吉弥 – 現代の名手の一人。丁稚の定吉の純朴さを可愛らしく演じ、番頭との掛け合いのテンポが絶妙です。

関連する落語演目

同じく「商家の奉公人」が登場する古典落語

言葉遊びのオチが秀逸な上方落語

この噺の魅力と現代への示唆

「足上がり」は、単なる横領事件の話ではなく、人間関係の機微と言葉の妙を描いた作品です。番頭は定吉に良くしてやったつもりでいますが、結局は自分の保身のために嘘をつかせようとします。一方、定吉の純朴さが図らずも真実を明らかにしてしまう。

現代の職場でも、上司と部下の関係、不正の隠蔽と内部告発など、この噺が描くテーマは普遍的です。特に「筆の先から出る」という横領の手法は、現代の企業不正にも通じるものがあります。

また、最後のオチ「足が上がってますわ」の絶妙さは、落語という話芸の真骨頂を示しています。芝居の話から自然に導かれる言葉が、実は番頭の運命を暗示しているという構造の巧みさ。これこそが古典落語が現代まで愛され続ける理由でしょう。

実際の高座では、演者によって定吉の純朴さの表現や、番頭が芝居を演じる場面の迫力が異なり、それぞれの個性が光ります。機会があれば、ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。上方落語の定席である天満天神繁昌亭では、今も定期的に演じられている人気演目です。


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