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【古典落語】一つ穴 あらすじ・オチ・解説 | 浮気現場大乱闘嫉妬バトル

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話芸の殿堂-古典落語-一つ穴
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一つ穴

3行でわかるあらすじ

大津屋の旦那・半兵衛が浮気をしているので、おかみさんが飯炊きの権助に小遣いを渡して後をつけさせる。
権助が妾宅を突き止めて報告すると、おかみさんが嫉妬で妾宅に乗り込み、旦那と大喧嘩になって家の中が大混乱となる。
権助が仲裁に入ると、旦那から「犬だ」と言われ、おかみさんからは「一つ穴の狐」と言われて、寄ってたかって畜生扱いされると怒る。

10行でわかるあらすじとオチ

三日も家を空けて帰った大津屋の旦那・半兵衛が、またすぐに出掛けようとする。
おかみさんが飯炊きの権助に小遣いを渡し、旦那の行く先を突き止めるよう頼む。
旦那は権助を煙に巻こうとするが、権助が後をつけて柳橋の妾宅を突き止める。
権助が黒板塀の節穴から覗くと、旦那が色白のアマっこ(妾)とじゃらついているのを見つける。
犬に噛まれて「痛い!」と叫んでしまい、障子戸が閉まって中の様子が分からなくなる。
権助が店に戻って報告すると、おかみさんが嫉妬で妾宅に乗り込む覚悟を決める。
おかみさんと権助が妾宅に向かい、おかみさんが「ババアが来た」と宣戦布告して乗り込む。
おかみさんと旦那が大喧嘩になり、火鉢を倒したり刺身皿を投げたりして家の中が大混乱となる。
権助が仲裁に入ると、旦那が「貴様は犬だ、畜生だ」と罵る。
権助が怒って「あんたは犬だと言い、おかみさんは一つ穴の狐だと言った。寄ってたかって畜生扱いだ」と抗議するオチで終わる。

解説

「一つ穴」は江戸時代の商家における夫婦関係と使用人の立場を描いた古典落語です。「一つ穴の狐」とは同じ穴に住む狐、つまり同じ仲間・グルという意味で、おかみさんが権助を旦那の味方だと疑って言った言葉です。このタイトルがそのままオチに使われる構造になっています。

この演目の見どころは、まず権助の巧妙な尾行術です。旦那が絵草子屋で権助の気を逸らそうとしても、権助が策略を見抜いて後をつける場面は、使用人の知恵と機転を表現しています。黒板塀の節穴から覗き見するという古典的な設定も、当時の江戸の町並みと庶民の生活を表現した要素です。

おかみさんの嫉妬の描写も印象的で、「厚化粧と高価な着物姿」で妾宅に乗り込む様子や、「宇治川の先陣争いの磨墨・池月の名馬も顔負け」という足の速さの表現など、女性の嫉妬を戯画化した表現が効果的です。妾宅での大乱闘場面は、火鉢を倒して灰神楽となり、刺身が頭に降り注いで幽霊のようになるという視覚的な笑いが描かれています。

最大の見どころは権助の立場の微妙さです。おかみさんに頼まれて尾行したのに「一つ穴の狐」(旦那の仲間)と言われ、旦那からは「犬」(告げ口する奴)と罵られる。使用人として板挟みになった権助の怒りと無念さが、この落語の核心となっています。江戸時代の商家の複雑な人間関係を背景にした、社会性のある作品として評価されています。

あらすじ

「捨てて見やがれただ置くものか藁の人形に五寸釘」、「悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ」と都々逸にも落語にもよく登場する悋気の噺です。

三日も家を空けて帰って来た大津屋の旦那の半兵衛さん、またすぐに出掛けるようだ。
おかみさんは嫌がる旦那に飯炊きの権助を伴に付けされる。
権助にこっそりと小遣いをやり、行く先を突き止めようとの魂胆だ。

旦那は小汚い身なりで、ぞんざいな田舎言葉を大声で喋る権助と店を出る。
旦那は権助を何とか煙に巻いてしまおうと、絵草子屋に入り、権助が美人画に見惚れている隙に、そーっと店から出た。
煙に巻いたと思わせて後をつけ出した権助さん。
これが智将権助の策略だ。

すっかり安心した旦那は柳橋あたりの路地を入った小綺麗な家に入った。
権助が黒板塀の節穴から覗くと、旦那が色白のアマっこと、じゃらじゃらじゃらとじゃらついている。
すると足元を犬に噛みつかれ、思わず、「痛ぇ!」と叫んでしまった。
途端に障子戸がピシャと閉まって中の様子は分からなくなった。

店へ戻って仔細をおかみさんに御注進に及ぶ忠義者の権助さん。
話を聞くうちに、嫉妬で目が吊りあがり、鼻息が荒くなって来たおかみさん、ついに敵地に乗り込む覚悟をし、権助に道案内を頼む。
そこまでするのはやり過ぎと押さえる常識者の権助さんだが、おかみさんは聞く耳を持たず、「お前も旦那と同じ、”一つ穴の狐”だね」ときた。
権助さん、「狐だなんて言われたら承知できねぇ」と折れ、向うで喧嘩なぞしないようにと釘を刺し、敵陣へ出撃だ。

向うの女に負けてはならじ、引けはとるまいと、厚化粧と高価な着物姿のおかみさんと、尻をはしょった薄汚れた身なりの権助の不揃いの珍コンビが柳橋を目指す。
おかみさんの足の速さは宇治川の先陣争いの磨墨・池月の名馬も顔負けだ。
女の家の前に着いたおかみさんは、ひとまず、荒い呼吸を整え、身なりを整え妾宅に入る。
取り次ぎの女中に、「大津屋の与兵衛さんにババア(婆あ)が来たと伝えてくださいな」と切り出し、宣戦布告の先制攻撃だ。

その勢いに押された女中は奥のお妾さんの所へ御注進。
これを聞いたお妾さんは、「生意気なやつだね」と強気で涼しい顔で玄関にお出ましだ。
そして厭味ったらしく、「半兵衛さんは奥でお休みですよ」と、その憎々しく自信ありげなこと。
怒りと嫉妬と自負心とでおかみさん、「あたしは半兵衛の家内です」と大音声に呼ばわり、お妾がひるむ隙に、半兵衛が寝ている奥の座敷へ突進だ。

おかみさんは叩き起されて驚き、あわてふためく半兵衛旦那を一気に攻め始める。
もう半兵衛は落城寸前、切腹覚悟の状態になった。
おかみさんは一緒に帰ろうと、半兵衛の袂(たもと)を引くが、半兵衛は世間体が悪いと嫌がる。
あまりしつこく袂を引くので、怒った半兵衛さん、「女の一人くらい囲うのは男の甲斐性だ」と、へ理屈を言って開き直って反撃開始、窮鼠猫を噛むというやつだ。

袂を引いたり押し返したりしているうちに火鉢の鉄瓶を倒して二人は灰神楽となり、半兵衛が投げた刺身皿が後ろの柱に当たって刺身がおかみさんの頭の上に降り注ぎ、刺身のつまが頭から垂れ下がってまるで幽霊、昼間からここはお化け屋敷となったか。
身の危険を感じたか、お囲いさんは厠(かわや)へ、女中は台所へ緊急避難だ。
この騒ぎの隙に猫がしのび込んで来て残り物の魚をくわえて飛び出して行った。

そこへ家の中のあまりの騒ぎに我慢が出来ず、権助さんが飛び込んで、二人の間に仲裁に入った。
権助を見て、やっと顛末の飲み込めた半兵衛旦那は、「貴様が犬で連れて来たんだな、てめぇは犬だ、畜生だ」と口汚く罵った。
犬とは聞きづてならぬと、

権助 「おらぁ国へ帰(けぇ)ると、権左衛門のせがれで名主様から三番目の席に着こうという家柄だ。どこが犬だ」

旦那 「何を言いやがる。あっちこっち嗅ぎ回って、つげ口するから、犬だ」

権助 「寄ってたかって畜生扱いだ。あんたは犬だ犬だといい、おかみさんは一つ穴の狐だと言った」


落語用語解説

一つ穴の狐(ひとつあなのきつね)

同じ穴に住む狐、つまり同じ仲間・グルという意味の慣用句。この噺ではおかみさんが権助を「旦那と一つ穴の狐だ」と疑って言う言葉として登場する。実際には権助はおかみさんの味方として旦那を尾行したのに、おかみさんから「旦那の仲間」と疑われて不当に扱われる。タイトルがそのままオチに使われる巧妙な構造となっている。

悋気(りんき)

嫉妬のこと。特に恋愛や夫婦関係における嫉妬を指す。この噺では大津屋のおかみさんが旦那の浮気に対して抱く嫉妬が主題となっている。「悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ」という都々逸が冒頭に引用され、江戸時代の夫婦関係における嫉妬の扱いが表現されている。

妾(めかけ)

正妻以外の女性で、男性が囲って養う女性のこと。江戸時代の商家では、経済力のある旦那が妾を囲うことは珍しくなかった。この噺では大津屋の旦那・半兵衛が柳橋に妾を囲っており、「女の一人くらい囲うのは男の甲斐性だ」と開き直る場面がある。当時の男性優位社会を反映した設定となっている。

柳橋(やなぎばし)

神田川と隅田川の合流地点にあった橋の名前で、その一帯は花柳界として栄えた。料亭や待合茶屋が軒を連ね、芸者や妾を囲う場所として知られていた。この噺では大津屋の旦那が柳橋に妾宅を構えており、権助が黒板塀の節穴から覗き見る設定となっている。江戸の花街文化を象徴する地名である。

権助(ごんすけ)

江戸時代の商家における飯炊きや雑用を担当する下男の典型的な名前。この噺では大津屋の飯炊きとして登場し、おかみさんに頼まれて旦那の尾行を担当する。「小汚い身なりでぞんざいな田舎言葉を大声で喋る」という設定で、「国に帰ると権左衛門のせがれで名主様から三番目の席に着こうという家柄」と自負する人物として描かれている。

節穴(ふしあな)

板塀の板の節が抜けてできた穴。覗き見に利用されることが多く、江戸時代の落語には頻繁に登場する小道具である。この噺では権助が黒板塀の節穴から妾宅の中を覗き見て、旦那とアマっこ(妾)がじゃらついている様子を確認する場面で使われる。犬に噛まれて「痛い!」と叫んでしまう滑稽な展開に繋がる。

宇治川の先陣争い(うじがわのせんじんあらそい)

源平合戦の一場面で、宇治川の戦いにおける梶原景季の磨墨(するすみ)と佐々木高綱の池月(いけづき)という二頭の名馬による先陣争いの故事。この噺ではおかみさんが妾宅に向かう足の速さを表現するために「宇治川の先陣争いの磨墨・池月の名馬も顔負け」と比喩的に使われており、嫉妬に燃えるおかみさんの勢いを戯画化している。

よくある質問(FAQ)

なぜおかみさんは権助を「一つ穴の狐」と言ったのですか?

おかみさんは権助が旦那の浮気を止めようとせず、むしろ「そこまでするのはやり過ぎ」と妾宅への乗り込みを止めたことから、権助が旦那の味方(仲間)ではないかと疑いました。「一つ穴の狐」とは同じ穴に住む狐、つまり仲間・グルという意味で、権助を旦那と同じ側の人間だと非難したのです。実際には権助はおかみさんに頼まれて尾行したのに、不当に疑われて怒りを感じています。

なぜ権助は旦那から「犬」と呼ばれたのですか?

旦那の半兵衛は、権助が自分の浮気を嗅ぎ回って(尾行して)、おかみさんに告げ口したことを「犬のような行為」だと罵りました。「あっちこっち嗅ぎ回って、つげ口するから、犬だ」という台詞から、旦那が権助の行為を裏切りと捉えていることがわかります。権助は「国に帰ると名主様から三番目の席に着こうという家柄」と自負しているため、「犬」呼ばわりされたことに激怒しています。

この噺のオチの意味は何ですか?

権助がおかみさんに頼まれて旦那を尾行したところ、旦那からは「犬」(告げ口する奴)と罵られ、おかみさんからは「一つ穴の狐」(旦那の仲間)と疑われました。「寄ってたかって畜生扱いだ」という権助の怒りは、使用人として板挟みになった立場の理不尽さを表現しています。どちらの味方をしても文句を言われる権助の無念さが、この落語の核心となっており、江戸時代の商家の複雑な人間関係を風刺しています。

この噺の時代背景と社会風刺的な意味は何ですか?

「一つ穴」は江戸時代の商家における夫婦関係と使用人の立場を描いた作品です。経済力のある旦那が妾を囲うことは当時珍しくなく、「女の一人くらい囲うのは男の甲斐性だ」という旦那の開き直りは、男性優位社会を反映しています。一方でおかみさんの嫉妬と妾宅への乗り込みは、女性の反抗と自己主張を表しています。権助という使用人が板挟みになる構造は、身分制度における弱者の立場を風刺しており、社会性のある作品として評価されています。

名演者による口演

五代目古今亭志ん生

志ん生の「一つ穴」は、権助のキャラクターを生き生きと描き出すスタイルが特徴です。絵草子屋で旦那を煙に巻く策略、節穴から覗き見する場面、妾宅での大乱闘の仲裁など、権助の知恵と勇気が軽妙に表現されています。オチの「寄ってたかって畜生扱いだ」も権助の怒りと無念さが見事に表現され、聴衆を笑わせます。

八代目桂文楽

文楽の口演は細部まで計算された緻密な演出で知られ、「一つ穴」でも旦那の尾行、節穴からの覗き見、妾宅での大乱闘と、各場面が詳細に描かれています。おかみさんの嫉妬の描写が特に印象的で、「宇治川の先陣争いの磨墨・池月の名馬も顔負け」という足の速さの表現が効果的に使われています。オチへの伏線も巧みに張られています。

十代目柳家小三治

小三治の「一つ穴」は、権助の板挟みの立場を深く掘り下げる演出が特徴です。おかみさんに頼まれて尾行したのに「一つ穴の狐」と疑われ、旦那からは「犬」と罵られる理不尽さが立体的に描かれています。権助の「国に帰ると名主様から三番目の席に着こうという家柄」という自負と、実際の扱いのギャップが人間ドラマとして表現されています。

三代目桂米朝

米朝の口演は、江戸時代の商家と花柳界の雰囲気を豊かに描き出すことで知られます。「一つ穴」でも、柳橋という花街の背景、妾を囲う習慣、使用人の立場など、当時の社会状況を詳細に説明し、聴衆に伝えています。おかみさんと旦那の大乱闘場面では、火鉢や刺身皿が飛び交う視覚的な笑いが効果的に表現されています。

関連する落語演目

  • 明烏 – 花柳界を舞台にした廓噺の代表作
  • へっつい幽霊 – 使用人の立場と知恵が描かれる
  • 粗忽長屋 – 勘違いから生まれる滑稽な展開
  • 芝浜 – 夫婦の絆と嫉妬が描かれる人情噺
  • 寝床 – 旦那と使用人の関係が描かれる

この噺の魅力と現代への示唆

「一つ穴」の最大の魅力は、権助という使用人の板挟みの立場を巧みに描いたところにあります。おかみさんに頼まれて旦那を尾行したのに、おかみさんからは「一つ穴の狐」(旦那の仲間)と疑われ、旦那からは「犬」(告げ口する奴)と罵られる。どちらの味方をしても文句を言われる理不尽さは、現代の中間管理職や板挟みになりやすい立場の人々にも共感できる状況です。

この噺は江戸時代の商家における夫婦関係と妾の問題を描いています。旦那の半兵衛が柳橋に妾を囲い、「女の一人くらい囲うのは男の甲斐性だ」と開き直る様子は、当時の男性優位社会を反映しています。一方でおかみさんが嫉妬に燃えて妾宅に乗り込む姿は、女性の反抗と自己主張を表しており、夫婦関係における権力闘争が描かれています。

権助の尾行術も見どころの一つです。旦那が絵草子屋で権助の気を逸らそうとしても、権助が策略を見抜いて「煙に巻いたと思わせて後をつける」という知恵と機転は、使用人ながら一筋縄ではいかない人物像を表現しています。黒板塀の節穴から覗き見するという古典的な設定も、江戸の町並みと庶民の生活を表現した要素として効果的です。

妾宅での大乱闘場面は視覚的な笑いが満載です。おかみさんが「ババアが来た」と宣戦布告して乗り込み、火鉢を倒して灰神楽となり、刺身皿が投げられて刺身のつまが頭から垂れ下がって幽霊のようになる様子は、漫画的な表現で聴衆を楽しませます。「昼間からここはお化け屋敷となったか」という描写も、騒動の激しさを巧みに表現しています。

オチの「寄ってたかって畜生扱いだ」という権助の台詞は、この噺の真髄を表す一言です。「あんたは犬だ犬だといい、おかみさんは一つ穴の狐だと言った」という権助の怒りは、身分制度における弱者の立場を風刺しており、江戸時代の商家の複雑な人間関係を浮き彫りにしています。

現代社会においても、この噺は多くの示唆を与えてくれます。まず、板挟みの立場と理不尽さです。権助のようにどちらの味方をしても文句を言われる状況は、現代の職場でも頻繁に見られます。上司と部下の板挟みになる中間管理職、親と教師の板挟みになる子供など、立場の弱い者が理不尽に扱われる構造は時代を超えて存在します。

また、夫婦関係と浮気の問題も普遍的なテーマです。旦那の浮気とおかみさんの嫉妬という構図は現代でも変わらず、浮気を「男の甲斐性」と開き直る旦那の態度は、現代でも見られる問題行動です。おかみさんが妾宅に乗り込む様子は、現代の「修羅場」に通じるドラマチックな展開として共感を呼びます。

身分制度と権力関係も見逃せません。権助が「国に帰ると名主様から三番目の席に着こうという家柄」と自負しながらも、実際には使用人として畜生扱いされる様子は、社会的地位と実際の扱いのギャップを表しています。現代でも学歴や家柄と実際の待遇が一致しない状況は多く存在し、権助の無念さは現代人にも共感できる感情です。

「一つ穴」は、使用人の板挟みの立場と、江戸時代の商家における夫婦関係と妾の問題を巧みに描いた古典落語の傑作です。嫉妬、浮気、身分制度、権力関係という複数のテーマが絡み合い、権助という一人の人物の視点から社会を風刺した名作として、今も多くの落語家によって演じ続けられています。


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