へっつい盗人
3行でわかるあらすじ
清八と喜六が友達の宿替えの祝い物としてへっつい(かまど)を贈ろうと、金がないので道具屋から盗むことにする。
夜中に道具屋に忍び込むが、喜六が大声を出したり騒いでへっついを落として仕中間割れを起こす。
道具屋の親父に見つかり、「へっついさんだけに、お前が烊きつけられたんやな」という地口オチ。
10行でわかるあらすじとオチ
清八の所へ喜六が遊びに来て、清八は友達の松ちゃんが宿替えをしたので何か祝い物をしようと持ちかける。
清八は松ちゃんの女房が宿替え先のへっついの具合が悪いと言っていたのを聞いていたので、へっついを贈ることにする。
しかし値が張るので二人には買えず、丼池の道具屋から盗むことにする。
清八は喜六に盗み出す段取りを説明し、日が暮れたらもう一度来るように言う。
日が暮れて喜六が紋付羽織衲でやって来て、「ぶちええ行こかぁ~丼池の道具屋へへっついさん盗みに行こぅ~」と大声を出す。
天秤棒と縄を持ち、怠しまれないよう「ヨイヨイヨとサ」と掛け声を掛けながら丼池の道具屋の前まで行く。
清八がへっついを持ち上げ、喜六が下に縄を通す所まで行くが、暗くて縄が通らず、清八が手を放してへっついが喜六の手に落ちる。
喜六が「痛ぁ~」と大声で騒いで仕中間割れが始まり、道具屋の親父が出て来る。
喜六が「わてが悪いことおまへんのや、この男がへっつい盗みに行こうと誘いまんのんで」と言い、親父が「へっついさんだけに、お前が烊きつけられたんやな」とオチをつける。
解説
「へっつい盗人」は上方落語の代表的な演目で、初代桂春團治が得意ネタとして確立した泥棒噺の名作である。この演目の最大の特徴は、清八と喜六という上方落語の定番コンビの絶妙なかけ合いと、最後の「へっついさんだけに、お前が烊きつけられたんやな」という秀逸な地口オチにある。
上方落語における清八と喜六は、東京落語の熙八と熊さんに相当するキャラクターで、清八は略した狡献さを持つ調子者、喜六は素直でおっちょこちょいのおばさんという定型が確立されている。この「へっつい盗人」では、清八の計畫的な性格と喜六の天然さが対照的に描かれ、特に喜六が大声で「へっついさん盗みに行こぅ~」と叫んでしまうシーンは、上方落語の笑いのエッセンスが凝縮されている。
落語における泥棒噺の特徴として、「落語の方で『~泥棒、~盗人』と名の付く噺の犯罪は滞多と成功しません。たいてい失敗する様子を楽しむようになっています」と説明されるように、この演目でも清八と喜六の泥棒は見事に失敗し、その道中で繰り広げられる不手際なやりとりが笑いを誘う構成となっている。
最後のオチ「へっついさんだけに、お前が烊きつけられたんやな」は、「へっつい」(かまど)と「烊きつける」(だましてそそのかす)という言葉の二重の意味を用いた地口オチである。これは清八が喜六を「烊きつけた」(だました)という意味と、へっつい(かまど)で「烊きつける」(火をつける)という意味を掛けた精巧な言葉遊びであり、上方落語特有の機智とユーモアが結集した名オチとして愛され続けている。
あらすじ
清八の所へ喜六が遊びにやって来る。
清八は友達の松ちゃんが宿替えをしたので、何か祝い物をしようと持ちかける。
清八は「安くて、手軽で、場がある物」がいいという。
喜六はそれなら「カンナ屑」はどうかといい、向うには婆さんがいるから婆さんのためになる物がいいというと、喜六は棺桶を推奨する。
何かビックリする物には爆弾と相変わらず話にならない。
清八は松ちゃんの女房が宿替え先のへっついの具合が悪い、と言うのを聞いていたので、へっついにしようという。
ちょっと値が張るので二人には買えない。
清八は丼池の道具屋の前に手頃なへっついが置いてあるからそれを夜中にちょっと失敬して来ようという。
いくら喜六でもそれは盗人と分かる。
捕まったらどうなると聞くと、清八は堺の別荘行きだという。
それもレンガつくりの立派な鉄格子付きで、向うからお迎えが来るという。
やっと監獄と分かった喜六に清八は盗み出す段取りを説明し、日が暮れたらもう一度来るように言う。
日もとっぷりと暮れた頃、清八の表の戸をドンドン、「ぼちぼち行こかぁ~丼池の道具屋へへっついさん盗みに行こぉ~」と大声で喜六。
静かにしろに「大丈夫、丼池までは聞こえへん」となるほどさすが喜六だ。
見ると紋付羽織袴の出で立ちだ。
今夜の泥棒の開業式にと家主の留守を幸いに箪笥から借りて来たという。
無論、こたつの上の猫には断って来たとか。
天秤棒と縄を持ち、怪しまれないよう仕事で重い物を運んでいるように、「ヨイヨイヨとサ、ヨイヨイヨとサ」と掛け声を掛けながら丼池の道具屋の前までやって来た。
清八は「ここらで一服しょ~か」と仕事に取り掛かるが、喜六は竹の垣をどけようとして石燈籠の頭を落として大きな音を出したり、長小便に行ったりでなかなか仕事がはかどらない。
やっと清八がへっついを持ち上げ、喜六が下に縄を通す所まで行ったが、暗くて縄がへっついの下に通らない。
ついに持ちこたえられなくなって清八が手を放し、へっついが喜六の手の上にドスンと落ちた。
喜六 「痛ぁ~! 痛ぁ~! 痛ぁ~!」
清八 「大きな声出すな」と喜六をどついた。
喜六 「何でへっつい落とされた上にどつかれなあかんねん、お前!そらわいはアホじゃ。アホやからこそ、夜中にこんなことしに来てるんやないかい」と盗人の仲間割れ、喧嘩が始まった。
あまりの騒々しさに道具屋の親父が出て来た。
親父 「何だお前ら、この夜更けに何さらしてんじゃい」
喜六 「わてが悪いことおまへんのや、この男がへっつい盗みに行こうと誘いまんのんで」
親父 「ははぁ~、へっついさんだけに、お前が炊きつけられたんやな」


