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【古典落語】鼻利き長兵衛 あらすじ・オチ・解説 | 超絶嗅覚男のジャンジャン無限ループ作戦

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話芸の殿堂-古典落語-鼻利き長兵衛
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鼻利き長兵衛

3行でわかるあらすじ

十里四方何でも嗅ぎつける鼻を持つ長兵衛は、喧嘩っ早く座を白けさせるので町内で嫌われている。
町内の連中が長兵衛を避けて王子の料理屋で飲んでいると、長兵衛が鼻で嗅ぎつけて追いかけてきた。
酒を飲みながら「ン」の字回しゲームをすると、長兵衛は「ジャンジャンジャン」と言い続けて田楽を無限に食べようとした。

10行でわかるあらすじとオチ

十里四方何でも嗅ぎつける鼻を持つ長兵衛は、喧嘩っ早く座を白けさせるので町内の嫌われ者だった。
町内の連中が長兵衛を避けて王子の料理屋でゆっくり酒を飲もうと出かけ、甚兵衛も誘って行った。
長兵衛は鼻を利かせて皆の居場所を嗅ぎつけ、王子まで追いかけて料理屋に現れた。
料理屋の女中に甚兵衛の妻が井戸端で転んで死んだという嘘を言わせ、甚兵衛を泣かせて驚かせた。
その後嘘だったことを明かすと、甚兵衛は安心して長兵衛に礼を言った。
皆で酒を飲みながら田楽を食べることになり、「ン」の字回しゲームを始めた。
六さんは「きんかんばんのまんきんたん」で六本、留公は「みかんきんかん酒のかん」で四本田楽を取った。
長兵衛は火事の話をした後、「ジャンジャン」と三味線の音を言い続けて田楽を取ろうとした。
辰公が「いつまでやってるんだ」と文句を言うと、長兵衛は涼しい顔で答えた。
「田楽が焼けて来るまで」と、抜け目なく無限に田楽を食べ続ける算段を見せたのだった。

解説

「鼻利き長兵衛」は、超人的な嗅覚を持つ男を主人公にした古典落語です。十里四方(約40km四方)何でも嗅ぎつけるという設定は、現実離れした能力として笑いを誘います。しかし、その能力とは裏腹に、長兵衛は喧嘩っ早く座を白けさせる嫌われ者として描かれており、このギャップが作品の面白さの一つです。

この噺の構成は巧妙で、前半は長兵衛の鼻利き能力と嫌われぶりを描き、中盤では甚兵衛の妻の死という嘘話で感情を揺さぶり、後半は「ン」の字回しという言葉遊びでオチへと導きます。特に甚兵衛の妻の件は、聴き手も一瞬だまされる仕掛けになっており、長兵衛の狡猾さを印象づけます。

最大の見どころは「ン」の字回しゲームでのオチです。通常は「ン」のつく言葉を言って田楽を食べるルールですが、長兵衛は「ジャンジャンジャン」という三味線の音を連続して言い続けます。これは言葉ではなく音なので、ルールの盲点をついた抜け道です。「田楽が焼けて来るまで」という答えで、無限に食べ続ける算段を明かす長兵衛の抜け目なさが、この噺の最大の笑いどころとなっています。

長屋噺と酒呑み噺の要素を併せ持つこの作品は、江戸庶民の機知と図々しさを描いた、古典落語らしいユーモアに満ちた一席です。

あらすじ

鼻利き長兵衛という男、十里四方ならなんでも嗅ぎつけるという鼻を持っているが、どこにでも現れて喧嘩っ早く、酒を飲むとからんだり野暮なことを言って座を白けさすので町内で嫌われている。

ある日、町内の連中が四、五人集まって、どこか長兵衛の来ないところでゆっくり酒を飲もうということになった。

辰公 「王子まで足を延ばしたら、いくら長兵衛の鼻だって嗅ぎつけやしまい。鼻利き長兵衛は御免だが、かかあ孝行の甚兵衛さんを連れて行こう」、かみさんが臨月という甚兵衛さんを誘うと、
甚兵衛 「生まれるのは今月の末だそうで。王子に是非一緒に連れて行ってください」と言うので、五人ほどでがやがやと王子へ出掛け、料理屋へあがった。

辰公 「あぁ、この座敷はいいね。
ゆっくり遊ぶには持って来いだ。
姉さん、木の芽田楽が食べたいんだが、よろしくお頼みするよ。事によると鼻の頭の赤い男が、私達を訪ねて来るかも知れないが、そうしたら、”来ていない”と言って断ってくださいな」、長兵衛のいない座敷は和気あいあいで盛り上がっている。

一方、取り残された長兵衛は、クンクンと鼻を利かせて、「おや、かかあ孝行の甚兵衛も行っていやぁがる。
畜生め、近所で飲むと俺が押し掛けるてぇんで、王子くんだりまで出掛けやがったんだな。くそっ!こうなったら押してかけて行って驚かしてやろう」と、王子へ急行だ。

女中(料理屋) 「御免下さいまし」、「はい、なんで姐さん?」

女中 「あのぅ、ただいま鼻の頭の赤い方がお出でになりました」

辰公 「えっ、来ましたか。
だから断っておいたんだ。帰してくれましたか」

女 「ええ、一度お断り申したのでございますけれども・・・、この中に甚兵衛さんという方がおいでになりますか」

辰公 「甚兵衛というのは酔ってここに寝ている人だよ」

女中 「その甚兵衛さんというお方のおかみさんが、今月が臨月なんだそうで・・・甚兵衛さんがお留守になったものですから、おかみさんが井戸端へ水を汲みにお出になって、すべって転んだ途端に赤ん坊が産まれて、それを見ておかみさんが血が上がって亡くなってしまったそうで、・・・長屋中大騒ぎの所へ、鼻の頭の赤い人がちょうど通り掛かって、甚兵衛さんのいる所を嗅ぎ当ててやろうと言って、ここにいる事を嗅ぎ当てて、わざわざ知らせにお出でなすったんだそうでございます」、びっくりしてみなで甚兵衛を揺り起こすと、

甚兵衛 「あんたらが殺したも同じだ。私を今日こんな所に引っ張って来たから、・・・私がいりゃぁ、水なんぞは汲ませやしません」と、気が動転し泣き出す始末だ。
すると長兵衛が入って来て、

長兵衛 「やあ、皆さんこんにちわ、汗をかいてやって来たんだ。すぐに一杯飲ましてくれ」

辰公 「おい、長兵衛、後でゆっくり飲ましてやるから、先に甚兵衛さんのかみさんの話を聞かしてくれ」

長兵衛 「おかみさんは家で裁縫仕事でもしていましょうよ」

辰公 「甚兵衛さんの留守に、おかみさんが井戸端ですべって転んで、血が上がって死んだって・・・」

長兵衛 「おぉ、こいつは上手くはまったな。ここに甚兵衛さんのいる事が分かっているから、口から出まかせにあんな事を言ったのよ」、「なんだ嘘かい」、「嘘だとも」

辰公 「畜生め、聞いたか甚兵衛さん、全部嘘だそうだ」、今泣いた子がもう笑って、

甚兵衛 「はい、これでやっと安心いたしました。どうも長兵衛さん、いろいろお世話様になりまして・・・」、別に礼を言う必要はないのだが。

辰公 「まぁ、折角来たのだから今日はゆっくり飲ましてやる」

長兵衛 「ありがてぇ、早速一杯・・・おぉ、田楽があるな、こいつを一つ」

辰公 「ちょっと待った。
その田楽をむやみに食っちゃいけない。ンの字廻しで”ン”と一つ言ったら一本食べるんだ」

六さん 「それじゃ、あたしが先へやらしてもらいますよ。きんかんばんのまんきんたん、というのはどうで」

辰公 「金看板の万金丹・・・じゃぁ、六本持っていきな」

留公 「みかんきんかん酒のかんで四本だ」、俺にもやらせろとしゃしゃり出て、

長兵衛 「なんですよ、火事なんてえものはね、妙なもので三月に出た火事は大きくなるんだそうで、四月の火事はじきにに消えるそうですよ。
それからまた三月頃は昼火事が多いそうでね。まぁ、先へジャンジャン、それから直きに、ジャンジャンジャン、ジャンジャンジャン」

辰公 「おい、それが数の内か」、「そうですよジャンジャンジャン」

辰公 「おい、姉さん、算盤貸しておくれ」

長兵衛 「ジャンジャンジャン、ジャンジャンジャン・・・」

辰公 「こらぁ!黙ってればいい気になって、一体何時いつまでやってるんだ」

長兵衛 「田楽が焼けて来るまで」

さらに詳しく知りたい方へ

落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 鼻利き(はなきき) – 嗅覚が鋭い人のこと。転じて、物事の機微を察知する能力が高い人を指すこともあります。
  • 十里四方(じゅうりしほう) – 一里は約3.9キロメートルなので、十里は約39キロメートル。十里四方とは約40km四方の範囲を指します。
  • 王子(おうじ) – 現在の東京都北区王子。江戸時代には行楽地として知られ、料理屋や茶屋が並んでいました。
  • 田楽(でんがく) – 豆腐や里芋などを串に刺して焼き、味噌を塗った料理。江戸時代の庶民に人気の酒の肴でした。
  • 木の芽田楽(きのめでんがく) – 田楽に木の芽(山椒の若芽)を添えたもの。香りが良く、高級な田楽として知られていました。
  • ンの字回し – 「ン」のつく言葉を言って数を競うゲーム。江戸時代の酒席で楽しまれた言葉遊びの一種です。
  • 臨月(りんげつ) – 出産予定日が近い妊娠最終月のこと。

よくある質問(FAQ)

Q: 長兵衛の鼻は本当に十里四方を嗅ぎつけられるのですか?
A: これは落語的な誇張表現です。実際には不可能ですが、嗅覚が異常に鋭いという設定を極端に表現することで、笑いを生んでいます。

Q: 「ジャンジャンジャン」というオチの意味を教えてください
A: 三味線の音を表す擬音語「ジャンジャン」を言い続けることで、「ン」の数を無限に稼ぎ、田楽を無限に食べようとする長兵衛の抜け目なさが笑いのポイントです。「田楽が焼けて来るまで」という答えで、その算段が明らかになります。

Q: なぜ甚兵衛の妻の死という嘘をついたのですか?
A: 長兵衛が嫌われ者でありながらも、座に入り込むための狡猾な手段です。驚かせた後に嘘だと明かすことで、かえって甚兵衛が礼を言うという展開になり、長兵衛の図々しさを印象づけます。

Q: この噺は江戸落語ですか?上方落語ですか?
A: 「鼻利き長兵衛」は江戸落語の演目です。江戸の地名(王子)や江戸の長屋文化が描かれており、江戸らしい言葉遊びが特徴です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん朝(三代目) – 長兵衛の図々しさと抜け目なさを軽妙に演じ、言葉遊びの楽しさを引き立てる名演で知られます。
  • 柳家小三治 – じっくりとした語り口で、長兵衛の嫌われぶりと狡猾さを丁寧に描き出す演出が特徴です。
  • 春風亭一朝 – テンポの良い語り口で、「ジャンジャンジャン」の連続を面白おかしく演じる演出が人気です。
  • 柳家喬太郎 – 現代的な感覚を加えながらも、古典の良さを残した演出で若い世代にも親しまれています。

関連する落語演目

同じく「嫌われ者」が主人公の古典落語

「言葉遊び」が秀逸な古典落語

「酒呑み噺」の古典落語

江戸落語の他の名作

この噺の魅力と現代への示唆

「鼻利き長兵衛」の最大の魅力は、嫌われ者でありながらも憎めない長兵衛のキャラクターです。超人的な嗅覚を持ちながら、それを人々に嫌われる原因にしか使わない。この皮肉な設定が、笑いを生んでいます。

長兵衛は明らかに嫌われているのに、図々しく追いかけてきて座に加わります。現代で言えば「空気を読まない人」ですが、その図々しさが逆に痛快でもあります。避けられても気にせず、むしろ嘘をついてまで座に入り込む。この逞しさは、現代人が失いつつある強さかもしれません。

甚兵衛の妻の死という嘘は、現代の感覚では悪質に見えるかもしれません。しかし、これも長兵衛の狡猾さを示すエピソードとして、聴き手を楽しませる仕掛けになっています。最終的に甚兵衛が礼を言うという展開も、江戸の人情を感じさせます。

「ンの字回し」という言葉遊びは、江戸の酒席文化を反映しています。現代でも宴会芸や言葉遊びは楽しまれていますが、「ジャンジャンジャン」という音を使ってルールの盲点をつく長兵衛の機転は、現代のクイズ番組などにも通じる知的なユーモアです。

「田楽が焼けて来るまで」という答えは、無限に食べ続けようとする長兵衛の食い意地と抜け目なさを表現した秀逸なオチです。図々しいながらも、その発想の面白さに笑ってしまう。これが落語の醍醐味といえるでしょう。

実際の高座では、長兵衛が鼻を利かせる仕草や、「ジャンジャンジャン」を延々と言い続ける場面など、演者の個性が光る場面が多数あります。ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。

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