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【古典落語】八問答 あらすじ・オチ・解説 | 数字の魔術師、こじつけ博士の論理破綻バトル

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話芸の殿堂-古典落語-八問答
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八問答

3行でわかるあらすじ

隠居のところに作次郎が来て、弁天様の願掛けが上手くいかなかった話をする。
隠居が八幡様を勧めて、「八」という数字にまつわる知識を延々と披露する。
作次郎が反論すると隠居が無理やりこじつけで答え、最後は夜討ちの話で論理破綻を見せる。

10行でわかるあらすじとオチ

作次郎が隠居のところに来て、弁天様への願掛けが上手くいかなかった話をする。
隠居が八幡様を勧めて、「八」という数字の解説を始める。
天の高さ八万由旬、地の深さ八万ダラ、八百万神などを列挙する。
徳川家の八百万石、江戸八百八町、大坂八百八橋などを続ける。
八幡太郎義家、鎮西八郎為朝など八のつく武将を挙げる。
作次郎が義経は九郎判官だと反論する。
隠居は鞍馬八流、八艘飛びとこじつけて反駁する。
曾我兄弟の話で作次郎が反論すると隠居が計算でこじつける。
最後に夜討ちの話になり、隠居が「夜(四)討に二人で行く」と説明する。
「だから夜(八)討というんだ」というオチで隠居の論理破綻が露呈する。

解説

八問答は初代桂春団治によって大正12年頃に創作された上方落語の演目で、複数の小噺を巧みに組み合わせて構成されている。具体的には「戎小判(えびすこばん)」「お日(ひい)さんの宿」「仏説八問遁甲(はちもんとんこう)」という要素を統合して一つの演目として完成させた。

この演目の最大の特徴は珍妙な言葉の遣り取り(問答形式)にあり、現在の「漫才」の原型のようなものとして位置づけられる。隠居の知ったかぶりと作次郎のツッコミによる典型的なボケとツッコミの構造は、上方落語特有の言葉遊びを存分に楽しめる内容となっている。

「八」という数字にまつわる無理やりなこじつけが延々と続く様子は、関西の一般市民生活の中でも繰り広げられる「根問」という文化的背景を反映している。最後の「夜(四)討に二人で行くから夜(八)討」という強引な論理は、隠居の知識の浅さと論理破綻を見事に表現したオチとして親しまれている。

あらすじ

横町の知ったかぶりの隠居のところへ作次郎が遊びに来る。
隠居 「おぉ、作さんかよく来たな。お前この頃、神仏の信心に凝っているそうじゃないか」

作さん 「へえ、床屋の親方が不忍の弁天さまに願掛けをすれば福が授かるというので、七日の間、日参しました」

隠居 「そりゃあ、えらいね。それで福は授かったのかい?」

作さん 「満願の日に弁天さまに”福はいつ授けてくださいますか”と聞いてみたら、弁天さまが”お前に福が授けられるくらいなら、ここに賽銭箱なんか出しておきはしないよ”って言ったもんで、もう弁天さまは諦めて山下の方へぶらぶら歩いて行くと、米俵を二つかついで行く爺さんに出会いました。よく顔を見ると、なんとこれが大黒さまなんで」

隠居 「米俵二つか、景気がよさそうだな」

作さん 「今時分、どちらへと聞いたら、”あんまり不景気なんで米を二俵売りに行くところだ。
他言はするなよ”と言われちまって。どこも不景気なようで」

隠居 「馬鹿馬鹿しい話はいい加減にして、それなら八幡様にお願いしてみなさい」

作さん 「へ~ぇ、八幡様はそんなにありがてえ神様なんですかい?」

隠居 「そりゃあ、そうさ。
何しろ世の中のことはすべて”八”という字から成り立っておる。天の高さが八万由旬、地の深さが八万ダラ、神様の数が八百万(やおよろず)、八十万(やそよろず)神、八万地獄、東昭神君の関東ご入国が天正十八年八月一日、徳川さまのご身代が八百万石で旗本八万騎、江戸が八百八町で、大坂が八百八橋、京都は八百八公卿、近江の湖水が八百八流れ、長命寺の石段が八百八段、八郎潟、花札遊びに八八、つっつくとやっかいなのがハチの巣で、狸のキンタマ八畳敷、お前はいつでも嘘八百・・・」

作さん 「へぇ~、なるほど。八のつくものは多いもんですねえ」

隠居 「八という字は出世をする字でもある。八幡太郎義家、鎮西八郎為朝、八五郎出世に春日八郎、たこ八郎・・・」

作さん 「義経は九郎判官、源九郎ですよ」

隠居 「牛若丸の時に習った剣術が鞍馬八流、壇ノ浦の八艘飛び、・・・」

作さん 「弁慶には八はつきませんよ」

隠居 「背中に七つ道具を背負って、弁慶の一番勝負だ」

作さん 「へぇ、足し算もするんで、・・・じゃあ、石川五右衛門はどうなんで」

隠居 「五右衛門は京の南禅寺の三門(山門)に住んでおった」

作さん 「なるほど、・・・でも、曾我兄弟は十郎と五郎で、足しても引いても八にはなりませよ」

隠居 「そこが素人の浅はかさだ。
仇討ちには必ず仇がいるもんだ。
工藤祐経を忘れてはいかん。
十足す五で十五、工藤の九を足すと二十四になるだろ。
三人いるからこれを三で割らねばならん。
お前でもこれぐらいの割り算はできるだろ。答えはちゃんと八になるではないか」

作さん 「へぇ、こりゃあ、恐れ入り谷の鬼子母神、素人の赤坂見附だね」、調子に乗って、

隠居 「仇討ちはそうは容易くは成就できない。
そこで曾我兄弟は夜中(やちゅう)に仇討ちに行ったろう。だから世間で夜討(やうち)といってるじゃないか」

作さん 「いいや、あれは曾我の夜討(ようち)ですよ」

隠居 「夜(四)討に二人で行くから夜(八)討というんだ」

さらに詳しく知りたい方へ

落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 八万由旬(はちまんゆじゅん) – 仏教における距離の単位。一由旬は約7~15キロメートルで、八万由旬は途方もない距離を表す。
  • 八百万神(やおよろずのかみ) – 日本古来の神道における無数の神々のこと。「八百万」は非常に多いことを意味する数詞です。
  • 八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ) – 平安時代後期の武将。源義家のこと。石清水八幡宮で元服したことから八幡太郎と呼ばれました。
  • 鎮西八郎為朝(ちんぜいはちろうためとも) – 平安時代末期の武将。源為朝のこと。九州(鎮西)で活躍し、八郎は兄弟の中での順番を示します。
  • 鞍馬八流(くらまはちりゅう) – 京都の鞍馬山で修行した剣術の流派。実際には存在しない隠居の創作です。
  • 八艘飛び(はっそうとび) – 源義経が壇ノ浦の戦いで平家の船八艘を飛び移って逃げたという伝説。
  • 曾我兄弟(そがきょうだい) – 鎌倉時代初期に父の仇である工藤祐経を討った曾我十郎と曾我五郎の兄弟。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ隠居は「八」にこだわるのですか?
A: 八幡様への信仰を勧めるために、世の中のあらゆることが「八」と関係があることを示そうとしています。知識をひけらかしたい隠居の性格を表現した設定です。

Q: 「夜(四)討に二人で行くから夜(八)討」というオチの意味を教えてください
A: 隠居の強引な論理のピークです。「夜」を数字の「四」と読み、二人だから「四×2=八」という無茶苦茶な計算で「夜討ち」を「八」に結びつけようとしています。これで隠居のこじつけが完全に破綻したことが明らかになります。

Q: この噺は江戸落語ですか?上方落語ですか?
A: 「八問答」は上方落語の演目です。初代桂春団治が創作した作品で、上方落語特有の言葉遊びとボケとツッコミの構造が特徴です。

Q: 実際に「八」にまつわるものはそんなに多いのですか?
A: 噺の中では誇張されていますが、日本文化において「八」は末広がりで縁起の良い数字とされ、神社名や地名などに多く使われているのは事実です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂春団治(初代) – この噺の創作者。上方落語の巨匠として、軽妙な語り口で隠居とのやり取りを楽しく演じました。
  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。格調高い語り口ながら、隠居の知ったかぶりを温かく描きました。
  • 桂枝雀(二代目) – エネルギッシュな演技で、隠居の強引なこじつけを迫力満点に表現しました。
  • 桂南光(三代目) – テンポの良い語り口で、現代でも親しまれる演出を行っています。

関連する落語演目

同じく「隠居もの」の古典落語

「こじつけ」が面白い古典落語

「ボケとツッコミ」が秀逸な上方落語

この噺の魅力と現代への示唆

「八問答」の最大の魅力は、知識をひけらかす隠居の姿を通して、人間の滑稽さを温かく描いている点です。隠居は「八」にまつわる知識を次々と披露しますが、作次郎のツッコミに対して無理やりこじつけで返すうちに、どんどん論理が破綻していきます。

この構造は現代のインターネット上の議論にも似ています。最初はもっともらしく見えた主張も、突っ込まれるうちに矛盾が露呈し、最後には支離滅裂になってしまう。そんな光景を江戸時代の落語家が既に描いていたことに驚かされます。

また、「夜(四)討に二人で行くから夜(八)討」という最後のこじつけは、もはや言葉遊びの域を超えた強引さです。しかし隠居は自信満々に答えます。この自信と論理のギャップが笑いを生むのです。

上方落語の特徴である「ボケとツッコミ」の構造も見事です。隠居のボケに対する作次郎のツッコミは、現代の漫才にも通じる掛け合いの妙を感じさせます。桂春団治が創作した当時から、既に漫才の原型が落語の中にあったことがわかります。

実際の高座では、隠居が得意げに知識を披露する仕草や、作次郎が呆れながらもツッコミを入れる表情など、演者の個性が光る場面が多数あります。ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。

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