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【古典落語】代書屋 あらすじ・オチ・解説 | 履歴書が全部抹消!河合浅治郎の職歴大惨事とボタ餅86個の衝撃

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話芸の殿堂-古典落語-代書屋
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代書屋

3行でわかるあらすじ

履歴書を書いてもらいに代書屋を訪れた河合浅治郎の職歴が次々と問題ありで抹消されていく。
饅頭商(開店せず)、減り止め販売(2時間で辞める)、ガタロ(川底のくず鉄拾い)、飛田遊郭行きなど全て履歴書に書けない内容ばかり。
最後に賞罰欄で「大食い大会でボタ餅86個食べて優勝した」と自慢して「そんなアホなこと書けるかいな」で代書屋が呆れるオチ。

10行でわかるあらすじとオチ

「ジレキショ(履歴書)」を書いてもらいに代書屋を訪れた河合浅治郎(数え年50歳)の職歴聞き取りが始まる。
最初に巴焼きの機械を借りて饅頭商をやろうとしたが家賃が高くて開店せず、代書屋が「饅頭商を営む」と書いて即抹消。
次に平野町の露天商で下駄の歯の裏に打つゴムの「減り止め」を売ったが寒くて一つも売れず2時間で辞めて再び抹消。
本職は「ガタロ」という川に入って網で川底をすくいくず鉄を拾う商売で、代書屋が苦心して「河川に埋没したる廃品を回収して生計を立つ」と書く。
昭和10年10月10日の職歴を聞くと「松ちゃんと女郎を買いに行った日」と答えて、またもや抹消となる。
これ以上聞いても抹消ばかりなので、代書屋は念のため賞罰を聞く。
河合浅治郎が「大きな賞状もろて新聞に写真入りで載った」と自慢気に答えて代書屋が驚く。
「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を86個食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り」と得意満面。
代書屋が「そんなアホなこと書けるかいな」と呆れ果てる。
履歴書作成という真面目な場面が次々と馬鹿馬鹿しい展開になる職業コメディのオチ。

解説

「代書屋」は明治から昭和初期にかけて実在した職業を題材にした古典落語で、特に大阪を舞台とした上方落語の代表作として知られています。代書屋とは文字が書けない人のために手紙や履歴書、各種書類を代筆する商売で、識字率がまだ低かった時代には重要な職業でした。

この落語の面白さは、真面目な履歴書作成という場面で次々と起こる想定外の展開にあります。河合浅治郎というキャラクターは典型的な与太郎的人物で、彼の職歴が「饅頭商(開店せず)」「減り止め販売(2時間で辞める)」「ガタロ(川底のくず鉄拾い)」「飛田遊郭行き」など、全て履歴書には書けない内容ばかりという設定が秀逸です。

特に「ガタロ」という職業は実際に存在した大阪の底辺労働で、川に入ってくず鉄を拾う仕事でした。代書屋が苦心して「河川に埋没したる廃品を回収して生計を立つ」と格調高く書き直すユーモアは、職業の尊厳を保とうとする代書屋の職人気質を表現しています。

最後の「大食い大会でボタ餅86個食べて優勝」という賞罰は、履歴書の項目としては完全に場違いでありながら、本人にとっては誇らしい実績という皮肉な対比が笑いを生んでいます。この落語は職業の格差や学歴社会への風刺も含んでおり、庶民の生活実態をユーモラスに描いた名作として現代でも愛され続けています。

あらすじ

「儲かった日も代書屋の同じ顔」、今日も陰気な顔で店に座っている代書屋へ男が入ってくる。
ジレキショとか、ギレキショ(履歴書)なんてのを書いてくれと言う。
家に無いので隣の家に借りに行ったら家中探してくれたが見つからず、人に聞いたら代書屋へ行ったらすぐに書いてくれると教わって来たという。

代書屋が就職するのかと聞くとに、男は勤めに行くのだと始めからかみ合わない。
本籍・現住所・戸主で名前は「河合浅治郎」までは何とかたどり着き、履歴書は埋まって行く。

次は生年月日だ。
男は「御大典の提灯行列の日・・・・」なんて言うから昭和三年だが、どうも見てもそんなに若くない。
よく聞くと揃いの法被で提灯行列をした日だとか。
年を聞くと数えの五十で、生まれた日は秋の彼岸の中日の明けの日で、代書屋は男の生年月日を割り出した。
次の学歴は尋常小学校を卒業と思いきや二年で卒業だと。

やっと職歴に取り掛かる。
職歴と言っても分からないだろうと、「あんたが今までやってきた商売、仕事を全部順番に言ってもらいましょ」に、男は「最初は提灯行列の明けの年、友達に巴焼きの機械を借りて、玉造の駅前に店を借りようとしたが、家賃が高すぎて止めといた」で、代書屋は「饅頭商を営む」と書き始めて一行抹消だ。

次はその年の十二月、平野町での露天商で売ったのは「へり止め」。
着物の襟(えり)を止める襟止めではなく、下駄の歯の裏に打って歯が減るのをふせぐゴムの「減り止め」というけったいな物で代書屋も初めての珍物だ。「減り止めを商う」とも書けず、代書屋は「履き物付属品を販売す」とさすがプロの技だが、男は「十二月で寒くて、一つも売れないのでアホらしくなって二時間で止めた」だと。
代書屋はまたかと呆れて、「一行末梢、判をこっち貸しなはれ」と渋い顔だ。

代書屋は、稼いだ金でご飯を食べていた本職は何かと聞くと、男は「ガタロ」と答えた。「へり止め」以上に分からん商売に代書屋が「何でんねん、そのガタロて?」と聞くと、男は「胸のとこまでのゴムの靴を履いて川へ入って金網で川底をすくって中から鉄骨の折れたのやら、釘の曲がったやつやらをよって拾い集める商売だと言う。

なるほどやっていることは分かったが、「ガタロ商を営む」とは書けず、「河川に埋没 したる廃品を回収して生計を立つ」と苦心してひねり出した。
男も「そういう具合に書いてもろたら、この商売がぐっと引き立つ。”生計を立つ”なんてとこはすかっと気持ちがいい」なんて感心している。

男は次は昭和十年十月十日、場所は大阪の飛田とすらすらと言い出した。
今度はまともな商売と期待した代書屋に、「松ちゃんと女郎を買いに行った日だ」と、抜け抜けと抜かした。
またもや「一行抹消」となった。

これ以上聞いても何行も抹消になるのは必定、後はいい加減に書くからと言って、代書屋は念のため「賞罰」を聞く。
罰はともかく、賞などあろうはずもないと思いきや、「大きな賞状もろて、新聞に写真入りで載った」で、代書屋はびっくり。
男は自慢気に、「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を八十六食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り・・・・・」、

代書屋 「そんなアホなこと書けるかいな」、おなじみの「代書屋」でございます。


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 代書屋(だいしょや) – 文字が書けない人のために、手紙や履歴書、各種書類を代筆する職業。明治から昭和初期にかけて、識字率がまだ低かった時代には駅前や繁華街に店を構える重要な職業でした。
  • 巴焼き(ともえやき) – 大阪名物の饅頭の一種。巴の形をした焼き饅頭で、専用の焼き機を使って作られました。当時は屋台などで販売されていました。
  • 減り止め(へりどめ) – 下駄の歯の裏に打ち付けるゴム製の補強材。下駄の歯が削れて減るのを防ぐための道具で、露天商などが販売していました。
  • ガタロ – 大阪の底辺労働の一つで、川に入って川底から鉄くずや釘などの廃品を拾い集める仕事。胸まである長靴を履いて金網で川底をすくっていました。正式名称は「川底拾い」で、戦前の大阪では実際に存在した職業です。
  • 飛田(とびた) – 大阪市西成区にあった遊郭街。正式には「飛田新地」と呼ばれ、明治から昭和にかけて大阪最大の遊郭として栄えました。
  • 御大典(ごたいてん) – 天皇の即位の礼のこと。昭和天皇の即位は昭和3年(1928年)で、全国各地で提灯行列などの祝賀行事が行われました。
  • 賞罰(しょうばつ) – 履歴書の項目の一つで、過去に受けた表彰や処罰を記載する欄。通常は公的な表彰や刑罰を記載するもので、大食い大会の優勝などは書きません。

よくある質問(FAQ)

Q: 代書屋という職業は実際に存在したのですか?
A: はい、明治から昭和初期にかけて実在した職業です。識字率が低かった時代、文字が書けない人のために手紙や履歴書、官公庁への届出書類などを代筆していました。駅前や繁華街に店を構え、庶民の生活に欠かせない存在でした。

Q: なぜ河合浅治郎の職歴は全て抹消されたのですか?
A: 饅頭商(開店せず)、減り止め販売(2時間で辞めた)、遊郭通いなど、履歴書に書ける正式な職歴ではなかったからです。代書屋は職人としてのプライドから、何とか格調高く書こうと苦心しますが、内容があまりにも履歴書には不適切なため次々と抹消せざるを得ませんでした。

Q: 「ガタロ」を「河川に埋没したる廃品を回収して生計を立つ」と書き換えた場面が面白いのはなぜですか?
A: 底辺労働である「ガタロ」という仕事を、代書屋が格調高い文章表現に変換することで、職業の尊厳を保とうとする職人気質が表れているからです。この対比が笑いを生むとともに、代書屋の誠実さも感じさせる名場面です。

Q: ボタ餅86個は現実的に食べられる量ですか?
A: かなり困難な量です。一般的なボタ餅1個が約80gとすると、86個で約6.9kg。これは現実には食べるのが非常に難しい量で、だからこそ大食い大会の優勝という設定に説得力があり、同時に履歴書には書けない馬鹿馬鹿しさが際立ちます。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 上方落語(大阪落語)の代表作です。大阪の地名(飛田、玉造、平野町)や大阪弁、大阪特有の職業(ガタロ)が登場することからも分かります。上方落語らしい庶民の生活感とユーモアが詰まった作品です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語四天王の一人として、この噺を格調高く演じながらも庶民の悲哀をユーモラスに表現しました。代書屋の呆れ顔と河合浅治郎の能天気さの対比が絶妙でした。
  • 桂枝雀(二代目) – 上方落語を代表する名人。エネルギッシュな語り口で、河合浅治郎のキャラクターを生き生きと演じ、観客を爆笑の渦に巻き込む高座で知られました。
  • 桂ざこば(二代目) – 大阪弁の味わい深さを活かした演出で、代書屋と河合浅治郎のやり取りをリアルに描きます。庶民的な温かみのある高座が魅力です。
  • 桂南光(三代目) – 「べかこ」の愛称で親しまれ、軽妙な語り口でこの噺の面白さを現代的に表現しています。

関連する落語演目

同じく「職業」を題材にした古典落語

与太郎的キャラクターが登場する古典落語

コメディ要素が強い古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「代書屋」は単なるコメディではなく、昭和初期の庶民の生活実態を生き生きと描いた社会派落語でもあります。河合浅治郎のような、まともな職歴を持てなかった人々の存在を、笑いに包みながら温かく描いています。

現代でも履歴書に書ける「正式な職歴」と、実際に生きるために行ってきた様々な仕事との間にはギャップがあります。フリーター、派遣労働、ギグワークなど、従来の枠組みに収まらない働き方が増える中で、この噺が描く「履歴書に書けない職歴」というテーマは、むしろ現代的な意味を持つようになっています。

代書屋が「河川に埋没したる廃品を回収して生計を立つ」と格調高く書き直す場面は、どんな仕事にも尊厳があるという職業観を示しています。これは現代の多様な働き方を尊重する価値観にも通じるものがあります。

最後の「ボタ餅86個」という賞罰は、社会的な評価と個人の誇りのズレを象徴しています。履歴書には書けないけれど、本人にとっては立派な実績。このズレこそが人間の面白さであり、落語が描く人間賛歌でもあるのです。

実際の高座では、演者によって河合浅治郎のキャラクターが大きく異なります。純粋な馬鹿として演じるか、どこか憎めない愛嬌のある人物として演じるか。それぞれの解釈を聴き比べるのも落語の楽しみ方の一つです。

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