スポンサーリンク

【古典落語】茶目八 あらすじ・オチ・解説 | 今顔から火が出ました幇間

スポンサーリンク
話芸の殿堂-古典落語-茶目八
スポンサーリンク
スポンサーリンク

茶目八

3行でわかるあらすじ

幇間の茶目八がひいきの旦那のお妾さんと駆け落ちしようとし、金の延べ棒や銀の塊、骨董品などを背負ったり懸けたりして出発準備をする。
しかしいざ出発というところでお妾さんが旦那を呼び、旦那に発見されてしまう。
『火事場泥棒みたい』と言われて『今顔から火が出ました』と答える恥ずかしいオチで終わる。

10行でわかるあらすじとオチ

幇間の茶目八がひいきの旦那のお妾さんの家を訪問する。
旦那のことをべんちゃら三昧で誉めそやすが、お妾さんは嫌になったと言う。
お妾さんが旦那の悪口を言い、茶目八が便乗して同意する。
茶目八が旦那に滝の打たれで死にそうになったと嘘をつく。
お妾さんが『一緒に逃げて』と駆け落ちを提案する。
茶目八ががっついて『逃げましょ』と即答する。
金の延べ棒や銀の塊、骨董品などを持って逃げることになる。
茶目八が沢山の財産を背負ったり懸けたりして準備完了。
いざ出発というところでお妾さんが旦那を呼び出して発覚。
『火事場泥棒みたい』と言われ『今顔から火が出ました』と答えるオチ。

解説

「茶目八」は、上方落語の中でも特に人気の高い幇間噺の一つで、欲深くてお調子者の幇間を主人公にした作品です。茶目八というキャラクターは、「裏も表も、陰も日向もある」と表現されるように、筆頭から不純な動機を持った人物として描かれています。

この作品の面白さは、茶目八の欲深さが段階的にエスカレートしていく構成にあります。初めは単にお妾さんの愚痴を聞いていただけだったのが、『逃げましょ』と即答し、さらに金の延べ棒や銀の塊まで持って逃げようとする姿は、幇間という職業を超えた完全な泥棒として描かれています。

最後のオチである『今顔から火が出ました』は、「火事場泥棒」という比喩と「顔から火が出る」(恥ずかしい)という慣用句をかけた絶妙な言葉遊びです。このオチは、茶目八の恥ずかしさと機転の良さを同時に表現したもので、上方落語特有の言葉のセンスを示した名場面として評価されています。この作品は、欲深な人間の哀しさと可笑しさを描いた、人間喜劇の秀作として親しまれています。

あらすじ

茶目八という裏も表も、陰も日向もある幇間。
とにかく口から出まかせにベラベラと喋るのが面白いので、意外にひいき客も多い。

ある日、茶目八はひいきの旦那のお妾(てかけ)さんお家に行って、旦那のことをべんちゃら三昧で誉めそやす。
さぞかしお妾さん喜ぶと思いきや、「わて、この頃うちの旦さん嫌になってるねん」

茶目八 「なんででんねん。あんなに男前やし、金は仰山持ってはるし、よう気がつくし・・・」

お妾さん 「けど、あの人あっちこっちで浮気ばっかりしてるしな。それにちょっと油断のならんとこあると思はへんか、あんた」

こう言う誘い水にはすぐに乗って行くのが茶目八で、
「そう言うとな、こないだわたし旦那に殺されかけましたんや。
朝早うに寝ているところを叩き起こされて、散歩じゃ言うてあちこち引きずり回され、ついでに高津さんから、生玉さんまで行こかちゅうて、朝飯も昼飯も食わされずに一心寺さんから、清水さんまで引っ張られて、”玉出の滝に打たれるねん。
お前も一緒に打たれえ”言うて、裸にされて滝に飛び込まされましたんやがな。
腹が減ってフラフラのところへ冷たい滝の水を被って、目が回ってドタッと倒れてしもうた。旦さんは滝のしずくを頭にちょこっと振りかけて、”これでも同じこっちゃ”言うてさっさと行ってしまいますのや」

お妾さん 「そやろ、そういう所のある人やさかい、わたしが別れるちゅう気持ち、分るやろ。あんたわたしと一緒になって連れて逃げてえな」

茶目八 「逃げまひょ、逃げまひょ」

お妾さん 「旦さんから預かってる金の延べ棒や銀の塊なんかはどうしたら・・・」

茶目八 「そんなもん置いとくことがおますかいな。行きがけの駄賃ですがな、もろて行きまひょ」、がっついた茶目八は骨董品、掛け軸、鏡台、宣徳の火鉢、柱時計なんかを背負ったり、首にぶら下げたり、お妾さんはおまけに猫まで茶目八の懐に押し込んでいる。

お妾さん 「茶目八さん歩けますか」

茶目八 「へえ、何とか歩けますわ」で、駆け落ちの準備完了、いざ出発のところで、

お妾さん 「まあ、面白い格好やこと。旦さん、早く出て来て見てみなはれ」

旦那 「茶目八、ええ格好やな」

茶目八 「わぁー、旦さん、居てはったんかいな」

旦那 「何やお前、火事場泥棒見たいやないか」

茶目八 「へえ、火事にもあいまひょかいな。今、顔から火が出ました」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 幇間(ほうかん) – 太鼓持ちとも呼ばれる職業的な遊び人。宴席で座を盛り上げ、客の機嫌を取る役割を担っていました。プライドを捨てて道化を演じる職業です。
  • お妾(てかけ) – 正妻以外に男性が囲っている女性。江戸時代から明治時代にかけては、裕福な商人や旦那衆が妾宅を持つことが一般的でした。
  • 金の延べ棒・銀の塊 – 江戸時代の財産の保管方法。紙幣がなかった時代、金銀は延べ棒や塊の形で保管されていました。
  • 宣徳の火鉢(せんとくのひばち) – 明の宣徳年間(1426-1435)に製作された銅製の火鉢。骨董品として高い価値がありました。
  • 高津さん・生玉さん・一心寺さん・清水さん – 大阪の有名な寺社。高津宮、生國魂神社、一心寺、清水寺のことで、すべて大阪市内にあります。
  • 玉出の滝(たまでのたき) – 大阪にあった滝行の場所。現在の大阪市西成区玉出付近にあったとされる修行場です。

よくある質問(FAQ)

Q: 茶目八は実在の人物ですか?
A: 茶目八は架空の人物ですが、江戸時代から明治時代にかけて実在した幇間という職業をモデルにしています。幇間は実際に旦那衆の遊びのお供をし、座を盛り上げる職業として存在していました。

Q: なぜお妾さんは最後に旦那を呼んだのですか?
A: これは茶目八を試すための罠でした。お妾さんは茶目八の欲深さを見抜いており、旦那と共謀して茶目八の本性を暴いたと解釈できます。

Q: 「顔から火が出る」という表現の意味は?
A: 恥ずかしくて顔が真っ赤になることを表す慣用句です。「火事場泥棒」と言われたことに対して、「火事」という言葉を受けて「顔から火が出た(恥ずかしい)」と返す、機転の利いた言葉遊びになっています。

Q: 上方落語と江戸落語でこの噺に違いはありますか?
A: 「茶目八」は主に上方落語で演じられる演目です。大阪の地名(高津、生玉、玉出など)が多く登場し、関西弁で演じられるのが特徴です。江戸落語では類似の幇間噺はありますが、この噺そのものは演じられません。

Q: 現代でも演じられていますか?
A: はい、現在も上方落語の定席で演じられています。特に幇間という職業が現代では存在しないため、江戸時代の風俗を知る貴重な演目として人気があります。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語四天王の一人。茶目八の調子の良さと欲深さを絶妙に表現し、品格を保ちながらも滑稽さを演出しました。
  • 桂春団治(三代目) – 爆笑王と呼ばれた名人。茶目八のがめつさを誇張して演じ、観客を爆笑の渦に巻き込む演出が得意でした。
  • 桂文枝(六代目) – 現代の上方落語界の重鎮。古典を大切にしながらも、現代的な解釈を加えた演出で若い世代にも人気。
  • 桂ざこば – 豪快な語り口で知られ、茶目八の図々しさを憎めないキャラクターとして演じます。

関連する落語演目

同じく「幇間」が登場する古典落語

欲深い人物が主人公の古典落語

上方落語の他の名作

この噺の魅力と現代への示唆

「茶目八」は、人間の欲深さを描いた風刺的な作品です。幇間という職業は、プライドを捨てて客の機嫌を取ることで生計を立てていましたが、茶目八はその立場さえも忘れて欲に目がくらんでしまいます。

興味深いのは、茶目八が最初から最後まで全く反省していない点です。旦那の悪口に便乗し、お妾さんの駆け落ち話に即答し、金品を身につけるのにも躊躇がありません。この徹底した欲深さが、かえって憎めないキャラクターとして愛される理由かもしれません。

現代でも、利益のために立場や信義を忘れる人は少なくありません。SNSで簡単に人の悪口に便乗したり、利益のために簡単に裏切ったりする姿は、江戸時代の茶目八と変わらないのかもしれません。

最後のオチ「今、顔から火が出ました」は、窮地に陥っても機転を利かせて笑いに変える、幇間の職業的な習性を表しています。恥ずかしい状況でも笑いに変える、これこそが幇間の真骨頂であり、ある意味でプロフェッショナルな姿勢とも言えるでしょう。

実際の高座では、演者によって茶目八のキャラクター設定が異なります。憎めない小悪党として演じる場合と、徹底的にがめつい人物として演じる場合で、作品の印象が大きく変わります。また、大阪の地名や寺社の説明を交えながら、当時の風俗を伝える貴重な演目でもあります。


関連記事もお読みください

タイトルとURLをコピーしました