【AI落語】寿限無登山版(新作落語)
登山ブームが続いておりますが、最近の登山愛好家の方々の山に対する愛情は並大抵ではありませんね。富士山だけでは飽き足らず、世界の名峰を制覇したがる。
そんな山好きが高じて、息子に世界中の美しい山の名前を全部付けてしまった登山家一家のお話を、古典落語「寿限無」風にアレンジしてみました。果たして山のような長い名前は、登山と同じく険しい道のりを辿るのでしょうか。
まくら
登山愛好家という人種は、山の名前に異常なほど詳しいものでございます。エベレストやK2なんてのは当たり前、チョモランマだのサガルマータだの、現地での呼び方まで知っている。
ある登山用品店を営む山田さん、これが筋金入りの山男でして、世界各地の山を登り歩いておりました。そんな山田さんに待望の男の子が生まれまして、「この子には世界中の美しい山の名前を全部付けてやろう」と考えたのが、今日のお話でございます。
あらすじ
命名への情熱
山田「おい、かあちゃん。この子の名前が決まったぞ」
奥さん「どんな名前なの?」
山田「世界の名峰を全部入れてな」
そこで考えに考え抜いて付けた名前が、これがもう山のように長い。
「ヒマラヤ山脈主峰エベレスト・チョモランマ・サガルマータ標高八千八百四十八メートル世界最高峰登頂成功祈願込アンデス山脈最高峰アコンカグア南米大陸制覇記念北米大陸最高峰デナリ・マッキンリー極寒地帯踏破証明書付アフリカ大陆最高峰キリマンジャロ赤道近傍登山成功体験談収録欧州最高峰エルブルス双耳峰完全制覇達成報告書添付南極大陸最高峰ヴィンソン・マシフ極地登山専門技術習得済オセアニア最高峰カルステンツ・ピラミッド岩登り技術向上確認済K2世界第二位高峰登頂困難度最高級挑戦権獲得済カンチェンジュンガ世界第三位標高八千五百八十六メートル登山許可証発行済ローツェ世界第四位エベレスト隣接峰同時登頂可能性検討中マカルー世界第五位標高八千四百八十五メートル単独登頂計画立案済チョー・オユー世界第六位比較的登りやすい八千メートル峰入門編推奨ダウラギリ世界第七位標高八千百六十七メートル初登頂一九六〇年記念マナスル世界第八位日本人初登頂成功の栄光ある歴史継承者」
奥さん「あんた、正気?」
山田「大丈夫、山仲間なら皆覚える」
保育園での混乱
その子が五歳になって保育園に入園。
保育士「お名前を教えてください」
山田Jr.「ヒマラヤ山脈主峰エベレスト・チョモランマ・サガルマータ標高八千八百四十八メートル世界最高峰登頂成功祈願込アンデス山脈最高峰アコンカグア南米大陸制覇記念北米大陸最高峰デナリ・マッキンリー極寒地帯踏破証明書付アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ赤道近傍登山成功体験談収録欧州最高峰エルブルス双耳峰完全制覇達成報告書添付南極大陸最高峰ヴィンソン・マシフ極地登山専門技術習得済オセアニア最高峰カルステンツ・ピラミッド岩登り技術向上確認済K2世界第二位高峰登頂困難度最高級挑戦権獲得済カンチェンジュンガ世界第三位標高八千五百八十六メートル登山許可証発行済ローツェ世界第四位エベレスト隣接峰同時登頂可能性検討中マカルー世界第五位標高八千四百八十五メートル単独登頂計画立案済チョー・オユー世界第六位比較的登りやすい八千メートル峰入門編推奨ダウラギリ世界第七位標高八千百六十七メートル初登頂一九六〇年記念マナスル世界第八位日本人初登頂成功の栄光ある歴史継承者です」
保育士「ちょっと、息切れしちゃった」
名前を言い終わる頃には、まるで本当に山を登ったような疲労感。出席簿に書ききれず、別紙で対応する始末。
小学校での珍事
小学校に入学しても大変。
先生「では自己紹介をお願いします」
山田Jr.が例の長い名前を言い始めると、クラスメートたちは途中で居眠りを始める始末。名前を言い終わった時には、もう給食の時間になっておりました。
友達からは「エベレスト君」と呼ばれて、体育の時間には必ず鉄棒の一番上まで登らされる羽目に。
遭難騒動
ある日、学校の遠足で山登り。この子が道に迷って行方不明になってしまいました。
友達「先生!ヒマラヤ山脈主峰エベレスト・チョモランマ・サガルマータ標高八千八百四十八メートル世界最高峰登頂成功祈願込アンデス山脈最高峰アコンカグア南米大陸制覇記念北米大陸最高峰デナリ・マッキンリー極寒地帯踏破証明書付アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ赤道近傍登山成功体験談収録欧州最高峰エルブルス双耳峰完全制覇達成報告書添付南極大陸最高峰ヴィンソン・マシフ極地登山専門技術習得済オセアニア最高峰カルステンツ・ピラミッド岩登り技術向上確認済K2世界第二位高峰登頂困難度最高級挑戦権獲得済カンチェンジュンガ世界第三位標高八千五百八十六メートル登山許可証発行済ローツェ世界第四位エベレスト隣接峰同時登頂可能性検討中マカルー世界第五位標高八千四百八十五メートル単独登頂計画立案済チョー・オユー世界第六位比較的登りやすい八千メートル峰入門編推奨ダウラギリ世界第七位標高八千百六十七メートル初登頂一九六〇年記念マナスル世界第八位日本人初登頂成功の栄光ある歴史継承者が行方不明です!」
先生が無線で連絡を取ろうとしますが、名前を言っている間に子供は自力で下山完了。
改名決意
とうとう父親も諦めました。
山田「やはり短い名前にしよう。『岳』でどうだ」
奥さん「それなら覚えやすいわね」
最後の混乱
改名後、初めての登山遠足。今度は天気が急変して、みんなで避難することになりました。
友達「『岳』、早く逃げろ!」
通りがかりの登山者「え?山(岳)から逃げるって、一体どこに逃げるんだ?」
まとめ
世界の名峰を詰め込んだ寿限無、いかがでしたでしょうか。登山愛好家の情熱は素晴らしいものですが、やはり何事も適度が大切ですね。
それにしても、改名してもなお混乱を招くという結末は、我ながら予想外でした。シンプルイズベストと言いますが、時としてシンプルすぎても困りものです。
古典落語の構造を借りて現代のネタを作るのは楽しいものです。他の寿限無バリエーションもお楽しみいただければと思います。
この作品はフィクションであり、実在の登山家や登山用品店とは一切関係ございません。**


