【AI落語】思い出こわい(新作落語)
思い出話をするのが苦手という人、いますよね。過去を振り返るのが嫌だとか、昔のことは忘れたいとか。でも人間、歳を取れば自然と昔話をしたくなるものです。
今回は、そんな思い出話を嫌がる男の話です。
まくら
江戸時代の人々も、思い出話は大好きでした。若い頃の武勇伝、恋の話、商売の成功談など、酒の肴には事欠きませんでした。
現代のように写真やビデオがない時代ですから、記憶と語りが唯一の記録でした。ただし、中には昔話を嫌がる人もいまして…
あらすじ
昔吉「最近、若い頃のことをよく思い出すんだ。みんなも昔話をしないか?」
古次「いいねえ。俺も話したいことがたくさんあるよ」
旧蔵「思い出話で盛り上がろうじゃないか」
そこに、困った顔をした忘公がやってきた。
昔吉「忘公も一緒に昔話をしないか?」
忘公「え?思い出話?」
忘公の顔が引きつる。
忘公「と、とんでもねえ!俺は昔のことを思い出すのが大の苦手なんだ」
古次「なんでだよ?」
忘公「あの懐かしい話を聞くと、胸が苦しくなって涙が止まらなくなるんだ。それに、記憶がよみがえってくると頭が混乱する」
忘公「思い出ほど恐ろしいものはねえよ」
翌日、三人は忘公と一緒に思い出話をしようと誘った。
昔吉「忘公、軽い昔話から始めてみないか?」
忘公「うわああああ!」
ところが、三人の思い出話を聞いて、忘公はつい詳しく補足してしまう。
忘公「その話なら、正確には十五年前の春だったな。場所は角の茶店で、天気は小雨だった」
古次「よく覚えてるな」
忘公「その時、お前は青い着物を着てて、懐に三十文持ってたはずだ」
気がつくと、忘公は驚くべき記憶力で、みんなの思い出を正確に語っていた。
昔吉「生き字引みたいだ…」
忘公「実は俺、元は講談師をやってたんだ。でも、記憶力が良すぎて、俺の話ばかり聞きに来る客が増えちまう。それで他の講談師を困らせるのが怖いんだよ」
まとめ
思い出恐怖症を装った忘公は、実は元講談師でした。記憶力が抜群すぎて同業者に迷惑をかけるのを恐れていたとは、語り部らしい理由でしたね。
確かに、あまりに記憶力の良い講談師がいると、他の講談師が霞んでしまうかもしれません。忘公の気遣いも理解できます。
これからは適度な記憶力で、みんなで思い出を共有できるといいですね。


