【AI落語】音楽こわい(新作落語)
音楽が嫌い、なんて人は珍しいですよね。最近は街中でもイヤホンをして音楽を聞いている人をよく見かけますし、音楽が生活の一部になっている人も多いでしょう。
でも中には、本当に音楽が苦手という人もいるものです。今回は、そんな音楽嫌いを公言する男の話を作ってみました。果たして、その理由は本当なのでしょうか。
まくら
昔から「音楽は世界共通の言語」なんて言いますが、確かに音楽には国境を越える力がありますね。悲しい時に聞く音楽、楽しい時に聞く音楽、それぞれ心に響くものがあります。
江戸時代なら三味線や太鼓、現代ならギターやピアノ。楽器は違っても、音楽を愛する心は変わらないものです。
ただし、中には音楽を聞くのが苦手だという人もいまして…
あらすじ
音楽談議
ある秋の夜、長屋の連中が集まって、最近聞いた音楽の話をしていた。
亀吉「この間、街角で三味線弾きの音楽を聞いたんだが、なかなか上手でよ。思わず足を止めちまった」
虎太「俺は太鼓の音が好きだな。あのドンドンという響きが胸に響くんだ」
竹次「笛の音色もいいもんだぜ。風流で、心が落ち着く」
そこへ、浮かない顔をした源蔵がやってきた。
亀吉「おう、源蔵。どうした、そんな顔をして」
源蔵「実は、隣の部屋の奴が夜中に三味線の練習をしてるんだ。うるさくてかなわねえ」
虎太「音楽が聞けていいじゃねえか」
源蔵「とんでもねえ!俺は音楽が大の苦手なんだ」
みんな驚いて源蔵を見る。
竹次「音楽が苦手?そんなやつがいるのか?」
源蔵「ああ、音楽ほど恐ろしいものはねえ。あの音を聞くと、頭がくらくらして、足がふらつくんだ」
源蔵は大げさに身震いして見せる。
源蔵「特に三味線の音なんか聞いた日には、もう気が狂いそうになる。考えただけでも寒気がする」
亀吉「そりゃあ、大変だな」
源蔵「だから俺は、音楽のあるところには近づかねえことにしてるんだ。もう限界だ、今日は早く寝るぜ」
源蔵は慌てたように自分の部屋に戻っていった。
仲間たちの悪だくみ
虎太「あいつ、本当に音楽が嫌いなんだな」
竹次「珍しいやつもいるもんだ」
亀吉「よし、源蔵をからかってやろうじゃねえか」
虎太「どうやって?」
亀吉「簡単さ。楽器を集めて、源蔵の部屋の前で演奏会をやるんだ」
竹次「面白そうだな。きっと源蔵は腰を抜かすぜ」
虎太「でも、楽器なんてどこで調達するんだ?」
亀吉「街の楽器屋に頼んで、古い楽器を借りてこよう」
三人は早速、楽器屋に向かった。
楽器の調達
楽器屋の親方「いらっしゃい。珍しいお客さんだね。楽器を習いたいのかい?」
竹次「いえ、友達をびっくりさせたくて、楽器を借りたいんです」
楽器屋の親方「面白いことを考えるねえ。どんな楽器がいい?」
虎太「とにかく音の出るものなら何でも」
楽器屋の親方「それなら、この辺りの楽器はどうだい?修理待ちの楽器だから、安く貸すよ」
親方が指差した棚には、三味線、太鼓、笛、琴などがところ狭しと並んでいた。
亀吉「これで十分だ。全部借ります」
楽器屋の親方「全部って、こんなにたくさん?随分と本格的だねえ」
三人は楽器をかき集めて、長屋に戻った。
演奏会の準備
夜が更けて、長屋が静まり返った頃、三人は源蔵の部屋の前に楽器を並べ始めた。
竹次「これでもか、これでもかってな」
虎太「明日の朝、源蔵がこれを見たら、どんな顔をするかな」
亀吉「きっと卒倒するぜ」
竹次「でも、俺たち楽器なんて弾けないぞ」
虎太「適当にやればいいさ。音が出ればそれで十分だ」
三人は楽器を囲んで、にやにやしながら朝を待った。
翌朝の騒動
翌朝、源蔵が戸を開けると同時に、三人が一斉に楽器を鳴らし始めた。
亀吉「ドンドンドン!」(太鼓)
虎太「ピーピー!」(笛)
竹次「ペンペン!」(三味線)
源蔵「うわあああああ!」
源蔵の悲鳴が長屋中に響き渡った。
源蔵「や、やめてくれ!音楽は勘弁してくれ!」
亀吉「どうだ、源蔵!音楽の洗礼を受けろ!」
虎太「これでも嫌いか?」
竹次「参ったか?」
三人は下手くそな演奏を続ける。すると突然、源蔵が立ち上がった。
源蔵「もうだめだ!我慢できねえ!」
源蔵は三味線を奪い取ると、見事な音色で弾き始めた。続いて太鼓、笛と、次々に楽器を奪っては美しい音楽を奏でる。
亀吉「え?」
虎太「うまい…」
竹次「プロじゃねえか」
演奏が終わると、源蔵はため息をついた。
源蔵「実は俺、音楽が好きで好きでたまらねえんだ。でも下手くそな演奏を聞かされるのが一番つらいんだよ。おめえらの演奏があまりにひどくて、つい手が出ちまった」
まとめ
音楽嫌いを装った源蔵の正体は、実は音楽の達人だったという意外な展開でした。「音楽が怖い」のではなく「下手な音楽が怖い」というのは、なるほど音楽好きならではの悩みですね。
完璧主義者の音楽愛好家にとって、中途半端な演奏ほど苦痛なものはないのかもしれません。結果的に仲間たちは、源蔵の素晴らしい演奏を聞くことができて、むしろ得をしたような気もします。
音楽への愛が深すぎるゆえの悩み。現代でも、こんな人はいそうですね。


