【AI落語】火事こわい(新作落語)
「まんじゅうこわい」シリーズ、今回は火事をテーマにしてみました。
火事いうたら、昔から「火事と喧嘩は江戸の華」て言いますけど、関西でも火事は怖いもんです。特に木造家屋が多かった時代は、一度火が出たら大変なことになりましたからな。
そんな火事を題材に、また関西弁で一席やらせてもらいます。
まくら
火事の話になると、つい昔のことを思い出します。
私の祖父なんか、「昔は消防車がなかったから、みんなでバケツリレーしてたんや」て言うてました。今思えば、あんな方法でよう火を消せたもんやと思いますが、当時の人は必死やったんでしょうな。
それでも火事は怖いもん。でも、怖がり方も人それぞれ。中には変わった怖がり方をする人もおります。
あらすじ
冬の寒い夜のことや。
近所の若い衆が四人、炬燵に当たりながら世間話をしとった。外は木枯らしが吹いて、えらい寒い夜や。
太助「今日は寒いなあ。こんな日は炬燵が一番やで」
次郎「せやけど、空気が乾燥しとるから、火の用心せなあかんな」
三平「そうやなあ。この季節は火事が多いからな」
四蔵「火事の話はやめてくれや…」
太助「どないしたんや四蔵?」
四蔵「俺は火事が怖うてたまらんねん」
みんな顔を見合わせた。
次郎「火事なんて、誰でも怖いやろ」
四蔵「俺の怖がり方は違うねん。異常なくらい怖いんや」
三平「そんなに?」
太助「せやったら、みんなで怖いもん言い合うてみよか」
四蔵「えらいこと言い出すなあ」
太助「面白いやないか。一人ずつ、一番怖いもん発表するんや」
こうして順番に始まることになった。
太助「俺は幽霊が怖い。夜中にトイレ行くのも嫌やねん」
次郎「俺は注射が怖いわ。病院の匂い嗅いだだけで気分悪なる」
三平「俺は虫が怖い。特にゴキブリなんか、見ただけで失神しそうになる」
さあ、最後に四蔵の番や。
四蔵「俺は…火事が怖い」
太助「火事?」
四蔵「そやねん。炎を見ただけで震えが止まらへんねん」
次郎「そんなに怖いか?」
四蔵「ろうそくの火でも怖いねん。あの炎がゆらゆら揺れとるの見てたら、いつ大火事になるかと思うて」
三平「それやったら、四蔵をからかうたろか」
三人は悪だくみを始めた。
太助「おい四蔵、ちょっと待っとけ。火事の真似してみたるわ」
四蔵「やめてくれ!そんなことしたら死んでしまう!」
次郎「大丈夫や。本物の火事やないから」
三平「みんなで火事ごっこしよ」
太助は手をぱたぱた振りながら、
「めらめら、ぼうぼう」と言い始めた。
太助「火事やで〜、燃えとるで〜」
四蔵「うわあああ!やめてくれ!」
次郎「がらがらがら、家が燃えるで〜」
四蔵「ほんまにやめて!想像するだけで怖い!」
三平「煙がもくもく出とるで〜」
四蔵は本当に震え上がって、部屋の隅に逃げ込んだ。
ところが、しばらくすると四蔵が震えながらも口を開いた。
四蔵「ちょっと待てや…その火事の真似、おかしいで」
太助「え?」
四蔵「まず煙が出てから炎が見えるねん。順番が逆や」
次郎「詳しいやないか」
四蔵「それに、『がらがら』やなくて『ばりばり』て音がするねん」
三平「なんでそんなこと知ってるんや?」
四蔵「火事が怖いから、敵を知ろう思て勉強したんや」
四蔵はだんだん調子に乗ってきた。
四蔵「木造家屋やったら、まず屋根から燃えるねん」
太助「へえ、そうなんか」
四蔵「風向きも大事や。西風やったら火の回りが早い」
次郎「よう知ってるなあ」
四蔵「消火の方法かて勉強したで。水をかけるだけやなくて、延焼を防ぐために建物を壊すこともあるねん」
三平「まるで消防士みたいやな」
四蔵は得意そうに続けた。
四蔵「火災報知器の仕組みかて知ってるで。煙を感知して警報鳴らすねん」
太助「詳しすぎるやろ」
四蔵「避難経路の確保が一番大事や。いざっちゅう時にどこから逃げるか、普段から考えとかなあかん」
次郎「四蔵、実は火事好きなんやないか?」
四蔵「とんでもない!大嫌いや!でも…」
三平「でも?」
四蔵「知識があったら、ちょっとは安心やろ?」
みんなが感心してると、四蔵がポツリと言うた。
四蔵「実はな…俺、消防署で働いてるねん」
一同「ええええ!?」
四蔵「火事が怖いから、火事をなくそう思て消防士になったんや」
太助「火事が怖いのに消防士?」
四蔵「怖いからこそ真剣やねん。危険を察知する能力も高いし」
次郎「なるほどなあ」
四蔵「明日も火災予防の査察に回る予定や」
三平「頑張れよ」
四蔵「怖いけど、やらなあかん仕事やからな」
四蔵は少し考えてから、また口を開いた。
四蔵「実は…他にも怖いもんがあるねん」
太助「まだあるんか?」
四蔵「消防署の食堂や」
まとめ
火事をテーマにした「まんじゅうこわい」、いかがやったでしょうか。
今回のオチは「消防署の食堂が怖い」にしました。火事は怖いけど、同僚と一緒に食事するのも怖いという、消防士らしい悩みかもしれませんね。職場の人間関係は、どこでも微妙なもんです。
火事が怖くて消防士になったという設定も、なかなか面白い展開やったと思います。恐怖を克服するんやなくて、恐怖と向き合う方法もあるんやなと。
次回も「まんじゅうこわい」シリーズ、続けさせてもらいますので、お楽しみに。


