【AI落語】タイムトラベル居酒屋(新作落語)
タイムトラベルができるようになったら、どんな商売が生まれるでしょうか。
過去に行って昔の物を買ってくるとか、未来を見てきて株で儲けるとか…でも、一番面白いのは時空を超えた居酒屋かもしれませんな。
まくら
昔から居酒屋ってのは、色んな人が集まって愚痴を言ったり自慢話をしたりする場所でした。
でも、もし江戸時代の人と現代人が同じ店で飲んだらどうなるか…きっと面白い話になりそうですな。
本編
新宿の裏通りにある「時空居酒屋・えどっこ」。
店主の田中は、偶然手に入れたタイムマシンを使って、時代を超えた客を迎えています。
田中「いらっしゃい!今夜はどちらの時代からお越しで?」
江戸時代の客
「天保14年から来た」という江戸っ子の八っつぁん。
八つ「おう、久しぶりだな」
田中「八っつぁん、今日も時代越えですか」
八つ「現代のビールが飲みたくてな」
ぷしゅ!
八つ「おお、今日も良い音だ」
隣に座った現代のサラリーマン佐藤。
佐藤「あの、江戸時代の方ですか?」
八つ「そうだぜ。あんちゃんは現代か?」
佐藤「はい。2024年から」
八つ「200年後か。そりゃ遠いな」
時代比較談義
八つ「現代は便利になったろうな」
佐藤「確かに便利ですが、ストレスも多いんです」
八つ「ストレス?贅沢な悩みじゃないか」
佐藤「そうでもないですよ。満員電車とか残業とか」
八つ「満員電車?駕籠が混むのか?」
佐藤「いえ、もっとひどいです」
スマホで満員電車の動画を見せる。
八つ「うわあ!奴隷船みたいじゃないか」
佐藤「毎日これです」
八つ「俺なら発狂するな」
明治時代からの客登場
そこへ明治時代の客、鈴木が登場。
鈴木「文明開化で忙しくて、時代越えも久しぶりです」
田中「鈴木さん、お疲れ様」
鈴木「西洋文化の導入で大変なんです」
八つ「明治は大変そうだな」
鈴木「江戸時代が懐かしいですよ」
佐藤「僕は明治時代に憧れがあります」
鈴木「憧れ?毎日が混乱ですよ」
八つ「隣の芝生は青いってやつか」
昭和からの客
続いて昭和30年から山田がやってきた。
山田「高度経済成長で忙しいっす」
田中「山田さん、景気はどうです?」
山田「右肩上がりで最高ですね」
佐藤「昭和の成長期、羨ましいです」
山田「でも公害がひどくて」
鈴木「発展の代償ですか」
八つ「俺の時代は空気は綺麗だったぞ」
山田「でも電気はなかったでしょ?」
八つ「蝋燭で十分だ」
料理で時代比較
田中「皆さん、時代別おつまみはいかがです?」
江戸前寿司、明治の洋食、昭和の家庭料理、現代の創作料理が登場。
八つ「やっぱり江戸前が一番だな」
鈴木「ハイカラな洋食も捨てがたい」
山田「母の味の家庭料理が懐かしい」
佐藤「現代の料理は見た目がいいですね」
八つ「見た目より味だろ」
佐藤「インスタ映えも大事なんです」
八つ「インスタ?インスタントか?」
平成からの客
平成10年から来た女性、高橋が入店。
高橋「バブル崩壊後で気分が沈んでまして」
田中「高橋さん、平成不況ですか」
高橋「はい。就職氷河期で大変です」
佐藤「僕もその世代です。氷河期仲間ですね」
高橋「現代はどうなりました?」
佐藤「まだまだ厳しいですよ」
昭和の山田「バブル時代は良かったなあ」
高橋「バブル体験談聞かせてください」
山田「ディスコで踊りまくってました」
江戸の八つ「ディスコ?祭りか?」
令和からの客
最後に令和6年から来た若者、伊藤が登場。
伊藤「Z世代です。よろしく」
田中「一番新しい時代ですね」
伊藤「でも閉塞感がやばいです」
佐藤「若いのに老成してますね」
伊藤「SNS疲れとかコロナ禍とか色々あって」
平成の高橋「SNS?」
伊藤「ソーシャル・ネットワーキング・サービスです」
江戸の八つ「社会的?井戸端会議みたいなもんか?」
伊藤「まあ、似てるかも」
時代を超えた愚痴大会
酔いが回って、時代を超えた愚痴大会が始まる。
江戸・八つ「年貢が高くて困る」
明治・鈴木「文明開化についていけない」
昭和・山田「会社人間で家庭を顧みれない」
平成・高橋「就職が決まらない」
現代・佐藤「ブラック企業で体がもたない」
令和・伊藤「将来が見えない」
田中「どの時代も悩みは尽きませんね」
時代を超えた励まし合い
でも、だんだん励まし合いの雰囲気に。
江戸・八つ「でも生きてるだけで丸儲けだ」
昭和・山田「家族がいるから頑張れる」
平成・高橋「友達の支えが大きい」
現代・佐藤「この居酒屋で元気もらってる」
令和・伊藤「多様性が認められる時代で良かった」
明治・鈴木「新しいことに挑戦できるのが楽しい」
田中「皆さん、前向きになりましたね」
閉店時間
午前2時、閉店時間。
田中「皆さん、お疲れ様でした」
江戸・八つ「また来るぜ」
明治・鈴木「文明開化頑張ります」
昭和・山田「高度成長乗り切ります」
平成・高橋「就活頑張ります」
現代・佐藤「仕事頑張ります」
令和・伊藤「Z世代として頑張ります」
それぞれの時代へ帰っていく客たち。
店主の感想
一人になった田中がタイムマシンに向かってつぶやく。
田中「どの時代の人も根本的な悩みは同じだな」
タイムマシン『人間の本質は変わりませんからね』
田中「え?喋った?」
タイムマシン『AI搭載です』
田中「AIまで…」
タイムマシン『でも人と人の繋がりは時代を超えて変わりません』
田中「確かに。酒と愚痴と励ましは万国共通だ」
タイムマシン『それが居酒屋の価値ですね』
田中「哲学的なAIだな」
オチ
翌日、常連の現代人客が来店。
常連「田中さん、昨日変な客がいませんでした?」
田中「変な客?」
常連「江戸時代の格好をした人とか」
田中「ああ、コスプレの人ですね」
常連「コスプレ?リアルすぎませんでした?」
田中「役になりきるタイプなんでしょう」
常連「でも江戸弁が完璧で」
田中「研究熱心なんですよ」
常連「そうですか…でも面白かったです」
田中「また来ると思いますよ」
でも実は、タイムマシンが故障していて、
タイムマシン『時空の扉が閉じません』
田中「え?」
タイムマシン『過去の客が現代に残っているかもしれません』
田中「大変だ!時代錯誤になる」
そのとき、外から江戸っ子の声が。
江戸・八つ「おい、コンビニってのはどこにあるんだ?」
通行人「え?江戸時代の人?」
田中「やばい…」
タイムマシン『緊急事態ですね』
田中「居酒屋どころじゃない」
でも、八つが現代に適応して楽しそうにしている。
江戸・八つ「自動販売機って便利だな!未来は最高だぜ!」
田中「…まあ、楽しそうだからいいか」
タイムマシン『適応能力が高いですね』
田中「江戸っ子の順応性を甘く見てた」
まとめ
というわけで、時代が変わっても人間の本質は変わらず、酒を酌み交わせばみんな友達という話でした。
タイムトラベルができるようになっても、一番価値があるのは人と人の繋がりかもしれませんね。
ただし、江戸っ子が現代に居ついてしまうのは、時空の秩序的に問題かもしれませんが。


