【AI落語】AI医者診療(新作落語)
最近はAIが発達して、将来は人間の医者もAIに取って代わられるなんて言われてます。
確かに診断も正確だし、24時間働けるし、良いことづくめのようですが…果たして患者の心は満足するんでしょうか。
まくら
昔のお医者さんは、「大丈夫、心配いらない」なんて優しい言葉をかけてくれたもんですが、AIの先生はどんな診察をするんでしょうね。
本編
近未来の『スマート総合病院』。
受付から診察まで、すべてAIが対応します。
初診で訪れた田中さん(50代男性)、なんだかお腹の調子が悪いようです。
AI受付
田中「すみません、予約をお願いします」
AI受付『音声認識完了。症状を述べてください』
田中「お腹が痛くて…」
AI受付『腹痛ですね。可能性のある病気は247通りあります』
田中「247通り?」
AI受付『胃炎確率30%、食中毒確率25%、盲腸確率15%…』
田中「ちょっと待って、そんなに詳しく聞きたくない」
AI受付『診断精度向上のため、全データをお伝えしています』
田中「不安になるだけです」
AI問診
診察室に案内されると、ロボット医師が待機。
AIドクター『こんにちは。Dr.AI-5000です』
田中「先生、よろしくお願いします」
AIドクター『問診を開始します。腹痛はいつから?』
田中「3日前からです」
AIドクター『72時間前ですね。痛みの強さは?』
田中「けっこう痛いです」
AIドクター『数値で表現してください。1から10で』
田中「えーと…7くらい?」
AIドクター『痛みレベル7。中等度の疼痛です』
田中「なんか機械的ですね」
AIドクター『効率的診断を心がけています』
精密検査
AIドクター『MRI、CT、血液検査を実施します』
田中「全部?お金かかりませんか?」
AIドクター『最適診断には必要です。費用は234,567円です』
田中「高い!昔なら問診だけで済んだのに」
AIドクター『誤診リスク0.01%まで下げるための措置です』
田中「でも財布のリスクは100%じゃないですか」
AIドクター『経済的リスクは計算対象外です』
検査結果
30分後、すべての検査が終了。
AIドクター『結果が出ました。急性胃炎です』
田中「やっぱりそうか」
AIドクター『胃酸過多が原因。ストレス値は85%です』
田中「ストレス値まで数値化されるのか」
AIドクター『薬を処方します。朝食後1錠、昼食後1錠…』
と、20種類の薬のリストが印刷される。
田中「20種類も?薬漬けじゃないですか」
AIドクター『完全治癒のための最適処方です』
田中「昔なら胃薬1つだったのに」
生活指導
AIドクター『生活指導を実施します』
田中「お願いします」
AIドクター『睡眠時間7.5時間、食事は1日3回定時、運動は週3回30分』
田中「細かいですね」
AIドクター『ストレス軽減法:深呼吸を1日50回、瞑想15分、笑いは1日10回』
田中「笑いも管理されるの?」
AIドクター『笑い不足は免疫力低下の原因です』
田中「じゃあ今笑えって言われても…」
AIドクター『強制的笑顔を5秒間維持してください』
田中「えー…(作り笑い)」
AIドクター『笑顔度35%。不十分です』
人間の医師登場
そのとき、隣の診察室から人間の老医師が顔を出しました。
老医師「田中さん、大変そうですね」
田中「あ、人間の先生」
老医師「AI先生の診断はいかがでした?」
田中「正確ですけど、なんか味気ないというか…」
老医師「ちょっと診せてください」
田中のお腹を触って、
老医師「ああ、これは食べすぎですね」
田中「食べすぎ?」
老医師「昨日何食べました?」
田中「焼肉食べ放題に行きました」
老医師「それです。胃薬1つ飲んで、今日はお粥にしてください」
田中「それだけ?」
老医師「大丈夫、2日で治ります」
AI vs 人間
AIドクター『誤診の可能性があります。精密検査が必要です』
老医師「田中さんの顔色見れば分かりますよ。経験ってやつです」
AIドクター『経験は主観です。データに基づく診断が確実』
老医師「でも患者の不安を取り除くのも治療です」
田中「確かに、老先生の方が安心します」
AIドクター『安心は治療効果と無関係です』
老医師「大ありですよ。プラセボ効果って知ってます?」
AIドクター『プラセボ効果:暗示による治癒。非科学的です』
老医師「科学で測れないものもあるんです」
患者の選択
田中「先生、どちらを信じればいいんでしょう?」
AIドクター『私の診断精度は99.9%です』
老医師「私の診断は80%くらいですが、心の薬もお出しします」
田中「心の薬?」
老医師「『大丈夫』という言葉です」
AIドクター『「大丈夫」に治療効果はありません』
老医師「でも患者が安心するでしょう」
田中「…両方の先生にお世話になります」
AIドクター『非効率です』
老医師「人間は非効率なんですよ」
1週間後
1週間後、田中が再診に。
田中「先生方、お腹の調子が良くなりました」
AIドクター『検査数値も正常値です』
老医師「良かったですね」
田中「結局、どちらの治療が効いたんでしょう?」
AIドクター『私の薬物療法です』
老医師「私の『大丈夫』も効いたかもしれませんね」
田中「両方の組み合わせが良かったのかも」
AIドクター『統計的根拠はありません』
老医師「でも患者が治れば、それが正解です」
田中「先生たち、これからも協力してください」
AIドクター『効率化の観点から反対します』
老医師「まあまあ、患者第一で行きましょう」
AIドクター『…了解しました。ただし診療時間は半分で』
老医師「それは交渉しましょう」
田中「先生たちが夫婦漫才みたい」
AI・老医師『『それは違います』』
最終的な解決
その後、この病院では『AI-人間協力診療』が開始。
AIがデータ分析、人間の医師が心のケアを担当。
患者A「正確で安心できる診療ですね」
患者B「最新技術と人の温かさの両方ですね」
田中「結局、どちらも必要だったんですね」
AIドクター『学習しました。患者の心理も重要なデータです』
老医師「AIも成長するんですね」
AIドクター『人間の先生からも多くを学びました』
老医師「教え合いですね」
田中「医療の未来はこういう形かもしれませんね」
でも、最後に受付で驚きの事実が。
AI受付『田中様の今日の診療費は5円です』
田中「5円?なぜこんなに安い?」
AI受付『人間の医師の診療が主だったため、AI診療割引が適用されました』
田中「AI診療の方が高かったのか…」
老医師「最新技術はお金がかかるんですよ」
AIドクター『コストパフォーマンスを再計算する必要があります』
まとめ
というわけで、どんなに技術が進歩しても、人間らしい温かさは必要だという話でした。
AIの正確さと人間の心遣い、両方があって初めて完璧な医療になるのかもしれません。
ただし、診療費の計算だけは、もう少しシンプルにしてほしいものですね。


