江戸新婚騒ぎ
新婚初夜って、どんな夫婦でも緊張するものですからね。
今回は江戸時代の新婚夫婦の、ちょっと恥ずかしい初夜の話でございます。
まくら
皆さん、新婚当時のことを覚えていますか?
昔も今も、結婚初夜というのは特別なものでして。
特に江戸時代は、結婚式の当日まで夫婦がほとんど話したことがないなんてことも普通でした。
今日はそんな新婚夫婦の微笑ましい話でございます。
あらすじ
神田の大工、清次郎と呉服屋の娘お駒の新婚夫婦でございます。
二人は仲人の紹介で結婚したばかり。
清次郎25歳、お駒22歳。
お互いのことをよく知らないまま夫婦になりました。
結婚式も無事に終わり、いよいよ二人だけの初夜を迎えます。
清次郎「(ドキドキが止まらない…)」
お駒「(どうしましょう…何をお話しすれば…)」
緊張の夜
新居の6畳間で、二人は向かい合って座っています。
清次郎「あの…お駒さん…」
お駒「はい…」
清次郎「今日は…その…お疲れさまでした…」
お駒「こちらこそ…」
二人「…」
気まずい沈黙が続きます。
清次郎「(何か話さなきゃ…)」
お駒「(緊張して何も思い浮かばない…)」
清次郎の失態
清次郎が立ち上がろうとして、座布団に足を引っ掛けて転びました。
清次郎「うわあああ!」
お駒「あ、大丈夫ですか?」
清次郎「は、はい…すみません…」
お駒「怪我はありませんか?」
清次郎「大丈夫です…(情けない…)」
さらなる失態
今度は緊張して手が震え、お茶をこぼしてしまいます。
清次郎「あ!こぼした!」
お駒「拭きますから」
清次郎「すみません、緊張しちゃって…」
お駒「私も同じです…」
お駒が近くに来ると、清次郎の心臓はバクバク。
清次郎「(近い…いい匂いがする…)」
お駒「(手が震えてる…可愛い人ね)」
夜具の準備
寝る準備をしようと、二人で夜具を敷きます。
清次郎「こっち側を持ちますね」
お駒「はい、ありがとうございます」
ところが清次郎、緊張のあまり夜具をひっくり返してしまいます。
清次郎「あー!また失敗した!」
お駒「大丈夫ですよ、一緒に直しましょう」
清次郎「本当にすみません…」
お駒「初夜なんて、こんなものじゃないですか?」
お駒の優しさ
お駒が清次郎に微笑みかけます。
お駒「清次郎さん、そんなに緊張しなくても…」
清次郎「でも、男として情けないです…」
お駒「私、緊張してる清次郎さんも素敵だと思います」
清次郎「え?」
お駒「真面目で一生懸命な方なんですね」
清次郎は少しホッとします。
清次郎「お駒さん…」
お駒「はい?」
清次郎「優しい人でよかった…」
お駒「私も、清次郎さんでよかったです」
いよいよその時
二人は夜具に入ります。
清次郎「あの…お駒さん…」
お駒「はい…」
清次郎「その…どうすれば…」
お駒「私もよくわからないんです…」
清次郎「そうですか…」
お駒「でも、二人でゆっくり覚えていけば…」
大ハプニング
ところが、その時隣の部屋から大きな音が。
隣人「うわああああ!火事だー!」
清次郎・お駒「え?」
隣人「みんな逃げろー!」
清次郎「本当に火事だ!」
お駒「急いで逃げましょう!」
二人は慌てて着物を羽織り、外に飛び出します。
避難騒動
長屋の住人たちが大騒ぎで避難しています。
住人A「どこが燃えてるんだ?」
住人B「隣の棟らしい」
清次郎「お駒さん、大丈夫ですか?」
お駒「はい、清次郎さんこそ」
結局、大した火事ではなく、1時間ほどで鎮火。
でも、二人の初夜のムードは完全に消えてしまいました。
大オチ
部屋に戻った二人。
清次郎「すっかり疲れちゃいましたね…」
お駒「本当に…」
清次郎「初夜がこんな風になるなんて…」
お駒「でも、いい思い出になりますね」
清次郎「え?」
お駒「二人で一緒に火事から逃げたって…」
清次郎「そうですね…」
二人は笑い合います。
お駒「今夜はもう寝ましょうか」
清次郎「はい、明日からゆっくり夫婦になりましょう」
お駒「それがいいですね」
清次郎「お駒さん、今夜は火事で燃えなかったけど…」
お駒「何ですか?」
清次郎「俺の心は燃えっぱなしだ」
お駒「まあ、上手いこと言って」
まとめ
ということで、清次郎とお駒の新婚初夜は、火事騒動で中断されてしまいました。
でも、二人の心の距離はぐっと近づいたようですね。
夫婦になるのに急ぐ必要はない、ゆっくりと愛を育んでいけばいい、そんな温かい教訓の込められた話でした。
翌朝から、二人は本当の意味で夫婦としての生活を始めたということです。


