ボウリング場
今回の落語は、現代の恋愛事情を描いたお話です。初デートでボウリング場というのは、今も昔も定番のコースですね。スポーツが得意でない私には縁のない場所ですが、きっと上手い人は格好良く見えるのでしょう。今回は、そんなボウリング場で格好つけようとした男性の災難を、現代語でお聞かせします。
まくら
ボウリングは気軽に楽しめるスポーツとして人気ですが、初心者にはなかなか難しいものです。特にデートの時に失敗すると、なんとも恥ずかしい思いをするものです。
あらすじ
「田村くん、今度の日曜、ボウリングでもしない?」
「ボウリング?いいね、佐藤さん。僕、結構得意なんだよ」
「本当?じゃあ、教えてもらおうかな」
「任せといて。スコア 200は軽く出せるから」
「200?すごいじゃない」
「学生時代はボウリング部だったからね」
「楽しみ!」
実は田村は、ボウリングをしたのは5 年前が最後。しかも、そのときのスコアは80 点だった。
ボウリング場にて
日曜日、二人はボウリング場にやってきた。
「わあ、久しぶり!懐かしいな」
「佐藤さんは、ボウリング好きなの?」
「中学生の時に少しやった程度かな。全然ダメだと思う」
「大丈夫、僕が一から教えてあげるよ」
「頼もしい!」
田村は内心、冷や汗をかいていた。
「(やばい、本当に教えられるかな…)」
シューズレンタル
まずはシューズのレンタルから。
「佐藤さんは何センチ?」
「23.5 です」
「僕は 27 センチで」
ところが、田村のサイズがなかった。
「申し訳ございません、27 センチは貸し出し中で」
「え?じゃあ、26.5 は?」
「それも貸し出し中です。26 センチならありますが」
「…仕方ないか」
きついシューズを履いて、早くも足が痛い。
いざ、第 1 ゲーム
ボールを選ぶ段階で、田村は格好をつけようとした。
「僕は16 ポンドを使うんだ。重い方がパワーが出るからね」
「すごい!私は何ポンドがいいかな?」
「佐藤さんなら10 ポンドくらいかな」
田村は 16 ポンドのボールを持ち上げようとしたが、思った以上に重い。
「(あれ?こんなに重かったっけ?)」
第 1 投目の惨劇
いよいよ田村の第 1 投。格好よく決めようと大きく振りかぶった。
「見ててよ、佐藤さん!ストライクいくから!」
「頑張って!」
ところが、きついシューズでバランスを崩し、ボールはガーターへ一直線。
「あれ?おかしいな…調子が悪いみたい」
「大丈夫?」
「ああ、ウォーミングアップが足りなかったかな」
第 2 投目もガーター。
「…久しぶりだと、こんなもんだよ」
「そうなの?」
佐藤さんの番
今度は佐藤さんの番。恐る恐るボールを転がした。
ゴロゴロゴロ…
カラン!
なんと7 本倒れた。
「やった!倒れた!」
「すごいじゃない!初心者にしては上出来だよ」
「ありがとう!」
第 2 投で残り 3 本も倒し、スペア達成。
「スペアって言うんだよ、それ」
「知ってる!嬉しい!」
格差が開く一方
2 フレーム目、田村は今度こそと力み過ぎて、またもやガーター。
「(なんで入らないんだ…)」
「田村くん、力を抜いた方がいいんじゃない?」
「え?あ、うん…そうかもね」
佐藤さんは着実に8 本、6 本と倒していく。
「佐藤さん、センスがあるね」
「そうかな?田村くんが教えてくれたおかげよ」
「(何も教えてないけど…)」
中盤の悲劇
5 フレーム目で、田村にやっとチャンスが来た。ボールがまっすぐ転がっていく。
「今度こそ!」
ガシャーン!
4 本倒れた。
「やった!倒れた!」
「良かったじゃない!」
調子に乗った田村は、第 2 投で思い切りボールを投げた。ところが、ボールが手から滑って、隣のレーンに転がっていった。
「あ!すみません!」
「田村くん、大丈夫?」
「ちょっと手が滑っちゃって…」
隣のレーンの人たちに謝りながら、顔が真っ赤になった。
完全に逆転
7 フレーム目、佐藤さんに初のストライクが出た。
「きゃー!ストライク!」
「すごいじゃない!本当に初心者?」
「本当よ!でも、なんだかコツが分かってきた気がする」
「そうかあ…」
一方、田村のスコアは30 点台をうろついている。
「田村くん、もしかして緊張してるの?」
「いや、そんなことは…でも、ちょっと調子が悪いかな」
「リラックス、リラックス」
最終フレームの奇跡
最終フレーム、田村は開き直った。
「もう、格好つけるのはやめよう」
「そうよ、楽しくやりましょう」
力を抜いて転がしたボールが、ゆっくりとピンに向かっていく。
ガシャーン!
なんと8 本倒れた。
「おお!」
「やったじゃない!」
第 2 投も決まって、スペア達成。
「うれしい!最後に決まった!」
「よかったね!」
ゲーム終了
最終スコアは佐藤さん 135 点、田村 68 点という結果になった。
「佐藤さん、すごいスコアだね」
「ありがとう!すっごく楽しかった」
「僕は散々だったけど…」
「そんなことない!最後のスペア、格好良かったよ」
「本当?」
「うん。それに、一生懸命な田村くんを見てて、私も頑張ろうって思えた」
帰り道で、佐藤さんが言った。
「田村くん、今度は私が得意なことを教えてあげる」
「え?何が得意なの?」
「料理よ。今度、手料理作ってあげる」
「本当?やった!」
「でも、ボウリングよりも下手かもしれないよ」
まとめ
今回はボウリング場でのデート騒動を描いてみました。格好つけようとして失敗するのは、恋愛の定番パターンですね。でも、結果的には素の田村くんを見てもらえて、むしろ良かったのかもしれません。
「スコア 200 は軽く出せる」と言って 68 点だった田村くんは、ある意味で「期待値を大幅に下回る男」でしたが、最後は佐藤さんの優しさに救われました。恋愛においては、完璧さより誠実さの方が大切なのでしょうね。


