接骨院通い
こんにちは、今日もまた落語をひとつ作ってみました。最近は体のあちこちが痛くなる年頃でして、接骨院のお世話になることも増えてきました。そんな経験から思いついた一席、お付き合いください。まあ、私の落語も体の節々みたいに、ところどころ痛いところがあるかもしれませんが、そこは温かい目で見てやってください。
まくら
今回のお話は、腰痛持ちの男が接骨院に通い始めるところから始まります。江戸の町にも、今で言う接骨院みたいなものがありましてね。骨接ぎとか、按摩とか言ってました。
あらすじ
「おい、熊さん。どうしたい、そんな腰を曲げて」
「ああ、八っつぁんか。いやね、このところ腰が痛くてね。朝起きるのも一苦労でさ」
「そりゃいけねえ。俺の知ってる骨接ぎの先生がいるから、紹介してやろうか」
「本当かい?でも高いんじゃねえか?」
「なに言ってんだ。健康はお金に代えられねえだろ。それに、あの先生は腕もいいし、話も面白いんだ」
初めての治療
翌日、熊さんは紹介された接骨院を訪れた。
「先生、初めまして。八っつぁんの紹介で来ました、熊と申します」
「ああ、八っつぁんの。どれ、ちょっと診せてもらいましょう。ふむふむ、なるほど。これはだいぶこってますな」
「へえ、やっぱりそうですか」
「ところで熊さん、お仕事は何を?」
「大工をやってます」
「そりゃ腰も痛くなるわけだ。重いもの持ったり、中腰の作業が多いでしょう」
治療が始まると、先生の手つきは確かで、熊さんは気持ちよくなってきた。
「いや〜、先生。こりゃ気持ちいいや。まるで極楽にいるみてえだ」
「それはよかった。ところで熊さん、最近の大工仕事はどうです?」
「いやね、最近は仕事が減っちまって。若い連中に取られちまうんですよ」
「そうですか。でも熊さんみたいなベテランの技術は大事ですよ」
常連客の仲間入り
一週間後、熊さんはまた接骨院を訪れた。すると、待合室には見覚えのある顔が。
「おや、熊さんじゃないか」
「あ、権助さん。あんたもここに?」
「俺は膝がね。もう三ヶ月通ってるよ」
「三ヶ月も!治らないんですか?」
「いや、治ってるんだけどね。なんだか来ないと調子が悪くてさ」
診察室に入ると、先生が笑顔で迎えてくれた。
「熊さん、腰の調子はどうです?」
「おかげさまで、だいぶ良くなりました」
「それはよかった。じゃあ今日は軽めにして、予防のための施術をしましょう」
「予防ですか?」
「ええ、痛くなってからじゃ遅いですからね」
社交場と化す接骨院
一ヶ月が経つ頃、熊さんはすっかり常連になっていた。
「おはようございます、熊さん」
「おはよう、権助さん。今日は早いね」
「ああ、一番乗りだよ。朝一番が空いてていいんだ」
「そうそう、それに朝から体をほぐすと一日調子がいい」
待合室では、常連客たちの会話が弾む。
「昨日の相撲見たかい?」
「見た見た。あの決まり手は見事だったね」
「そういえば、隣町の豆腐屋が店じまいするらしいよ」
「本当かい?あそこの豆腐は美味かったのに」
治療そっちのけ
診察室でも、話は尽きない。
「先生、聞いてくださいよ。うちの嫁がね…」
「ああ、奥さんがまた小言を?」
「そうなんですよ。毎日ここに通うもんだから、遊んでるんじゃないかって疑われちまって」
「はは、でも熊さん、実際腰はもう治ってるでしょう?」
「え?ああ、まあ…でも念のためですよ、念のため」
そこへ権助が入ってきた。
「先生、次は俺の番だけど、ちょっと熊さんと話があるから、後回しにしてもらえます?」
「ええ、いいですよ。じゃあ、お茶でも飲んで待っててください」
エスカレートする通院
三ヶ月後、接骨院はすっかり寄り合い所になっていた。
「おい熊、今日は将棋盤持ってきたぞ」
「お、いいね。治療の後に一局やろう」
「俺は花札持ってきた」
「おいおい、ここは接骨院だぞ」
「なに言ってんだ。先生も一緒にやるって言ってたじゃないか」
先生も困り顔。
「皆さん、そろそろ本来の目的を思い出してください」
「何言ってんです、先生。健康のためには楽しく過ごすのが一番でしょう?」
「それはそうですが…」
「先生も人が悪いや。こんなに居心地のいい場所作っちまって」
ある日、熊さんの女房が接骨院にやってきた。
「あんた!やっぱりここで遊んでたのね!」
「い、いや、これは治療の一環で…」
「治療?将棋が治療になるっていうの?」
「脳の活性化ってやつで…」
「もう帰るよ!先生、すみません。うちの人がご迷惑を…」
先生が慌てて言った。
「いえいえ、熊さんは最初の頃は本当に腰が悪かったんです。今はもう治ってますけど」
「治ってる?じゃあなんで毎日…」
「それが、通院依存症ってやつでして」
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は接骨院を舞台にした落語でした。治療が目的だったはずなのに、いつの間にか社交場になってしまうという、現代の高齢者によくある光景を江戸風にアレンジしてみました。まあ、私の落語も、最初は面白い話を作ろうと思ったのに、いつの間にか説教臭くなってしまうという、同じような症状があるかもしれません。でも、人が集まる場所というのは、それだけで価値があるものですからね。


