ゆとりとデジタルの新人研修
毎年四月になると、どこの会社でも新入社員研修が始まりますな。
フレッシュな新人たちが、社会人としての第一歩を踏み出す。
でも最近の新人と、研修を担当するベテラン社員の間には、思わぬギャップが。
今日は、そんな新人研修で起きた珍騒動の話をしてみましょう。
まあ、聞いてやってください。
まくら
世代間ギャップってのは、いつの時代にもあるもんです。
でも最近は特に激しい。
スマホが当たり前の世代と、FAXが主流だった世代が一緒に働くんですから、価値観が違って当然。
そんな中で行われる新人研修は、まさに異文化交流です。
あらすじ
今年も新入社員研修の季節がやってきた。
総務部のベテラン課長、佐々木さん(58歳)が研修の責任者。
一方、今年の新入社員はZ世代真っ只中の田村くん(22歳)をはじめとする5名。
佐々木「おはようございます。今日から研修を担当する佐々木です」
新入社員「おはようございます」
佐々木「まずは、社会人としての基本から学んでもらいます」
田村「すみません、Wi-Fiのパスワード教えてください」
佐々木「は?」
第一の衝突:挨拶編
佐々木「社会人の基本は挨拶です。『おはようございます』『お疲れ様でした』」
田村「はい」
佐々木「では、実際にやってみましょう。田村くん、私に挨拶してください」
田村「おつです」
佐々木「おつ?」
田村「お疲れ様の略です」
佐々木「略さないでください」
田村「でも効率的じゃないですか」
佐々木「効率の問題じゃない」
第二の衝突:電話対応編
佐々木「次は電話対応です。会社の顔として丁寧に対応しましょう」
田村「電話って、誰がかけてきてるかわからないんですか?」
佐々木「相手の名前を聞いて確認します」
田村「発信者番号表示されないんですか?」
佐々木「されません」
田村「不便ですね」
佐々木「不便て…昔からそうなんです」
実際に電話対応の練習をする。
佐々木「はい、では私がお客様役をします。リリーン、リリーン」
田村「あの、効果音は必要ですか?」
佐々木「雰囲気を出すんです」
田村「リアルじゃないですね」
電話に出る田村くん。
田村「はい、もしもし」
佐々木「『もしもし』じゃありません」
田村「え?」
佐々木「『はい、○○会社の田村でございます』です」
田村「長くないですか?」
佐々木「これが正式です」
田村「LINEの方が早いですね」
第三の衝突:メール編
佐々木「ビジネスメールの書き方を教えます」
田村「メールって、Gmailですか?」
佐々木「会社のメールアドレスです」
田村「アウトルックですね。使ったことないです」
佐々木「使ったことない?」
田村「普段はDiscordかSlackなので」
佐々木「何ですか、それ」
ビジネスメールの例文を見せる。
佐々木「いつもお世話になっております」
田村「これ、毎回書くんですか?」
佐々木「はい」
田村「テンプレートみたいなもんですね」
佐々木「まあ、そうですね」
田村「AIに書いてもらえませんか?」
佐々木「AIに?」
第四の衝突:資料作成編
佐々木「資料作成について説明します。まずはExcelで表を…」
田村「Excel苦手なんです」
佐々木「なんで?」
田村「Googleスプレッドシートの方が使いやすいです」
佐々木「会社はExcelなんです」
田村「クラウドで共有できませんよね、Excel」
佐々木「USBメモリで渡します」
田村「USBメモリ?」
佐々木「知らないんですか?」
田村「知ってますけど、今時使うんですか?」
第五の衝突:会議編
佐々木「会議の進め方について。まず配布資料を…」
田村「資料はPDFですか?」
佐々木「紙で配ります」
田村「紙?」
佐々木「コピーして人数分用意します」
田村「環境に悪くないですか?」
佐々木「…」
田村「デジタルで共有すれば、紙も印刷代も不要ですよね」
佐々木「昔からこうやってるんです」
田村「昔からが理由ですか?」
ベテラン社員の反撃
佐々木課長、ついに我慢の限界。
佐々木「田村くん、君はなんでも効率化したがるが、人間関係は効率じゃない」
田村「でも、無駄は省くべきじゃないですか?」
佐々木「無駄だと思うことにも意味があるんです」
田村「例えば?」
佐々木「手書きの手紙には、デジタルにない温かみがある」
田村「でも時間がかかりますよね」
佐々木「時間をかけるから価値があるんです」
田村「コスパ悪いですね」
佐々木「コスパって…」
価値観の対立
昼休み、佐々木課長は同世代の部長に相談。
部長「新人はどうだ?」
佐々木「参りました。全てをデジタルで解決しようとします」
部長「最近の若い子はそうだよ」
佐々木「人間味がないんです」
部長「でも、彼らの言うことも一理ある」
佐々木「え?」
部長「効率化できることは、した方がいいんじゃないか」
佐々木「部長まで…」
田村くんの本音
一方、田村くんも同期と話していた。
同期「研修、どう?」
田村「佐々木課長、昭和の人って感じです」
同期「厳しい?」
田村「厳しいというか、無駄が多いんです」
同期「無駄?」
田村「紙の資料とか、長いメールとか」
同期「でも、会社のルールでしょ?」
田村「変えればいいじゃないですか」
同期「新人が?」
田村「改善提案ってあるでしょ」
午後の研修で事件発生
午後の研修、田村くんが提案した。
田村「佐々木課長、提案があります」
佐々木「提案?」
田村「この研修内容をデジタル化しませんか?」
佐々木「デジタル化?」
田村「資料はPDFで配信、電話対応はチャットボットで自動化、メールはテンプレート化」
佐々木「…」
田村「そうすれば、もっと重要なことに時間を使えます」
佐々木「重要なこととは?」
田村「クリエイティブな仕事とか」
佐々木「基礎ができてないのに、クリエイティブもない」
衝撃の展開
そのとき、若手の先輩社員が入ってきた。
先輩「佐々木課長、お疲れ様です」
佐々木「お疲れ様」
先輩「新人研修の資料、デジタル化しました」
佐々木「え?」
先輩「社長の指示で。来年からはペーパーレスです」
田村「やったー!」
佐々木「そんな…」
さらに続けて。
先輩「電話対応も、AIが一次対応するシステム導入します」
佐々木「AIが?」
先輩「人間は重要な案件だけ対応すればいいんです」
田村「まさに効率化ですね」
佐々木「でも、人間らしさが…」
先輩「人間らしさは、お客様との深い関係構築で発揮すればいいんです」
佐々木課長の気づき
その夜、佐々木課長は家で考え込んだ。
佐々木「時代は変わったんだな…」
妻「どうしたの?」
佐々木「新人に色々言われて、最初はムカついたんだが」
妻「でも?」
佐々木「会社も変わろうとしてる。俺だけ取り残されてる」
妻「あなたらしくないわね」
佐々木「俺らしくない?」
妻「昔は新しいこと好きだったじゃない」
佐々木「そうだったかな」
妻「パソコン導入の時も、最初に使い始めたのはあなたよ」
佐々木「そういえば…」
翌日の大逆転
翌日の研修で、佐々木課長が意外なことを言った。
佐々木「田村くん、昨日の提案、もう一度聞かせてください」
田村「え?本当ですか?」
佐々木「君たちの世代の考え方も学んでみたい」
田村「ありがとうございます」
佐々木「ただし、基礎もちゃんと学んでください」
田村「はい」
佐々木「デジタルとアナログ、両方大切だと思うんです」
田村「なるほど」
新しい研修スタイル
佐々木「じゃあ、新しい研修を始めましょう」
田村「新しい研修?」
佐々木「君たちがデジタルを教えて、私がアナログの価値を教える」
田村「面白そうですね」
佐々木「Win-Winです」
田村「Win-Win…課長も若い言葉使うんですね」
佐々木「君たちに教わりました」
そして研修最終日。
佐々木「田村くん、最後に感想を」
田村「最初はおじさんだと思ってすみませんでした」
佐々木「おじさんで合ってます」
田村「でも、経験に基づく知恵は、AIにはないですね」
佐々木「君たちの柔軟性も、私たちにはない」
田村「お互い学び合いましょう」
佐々木「そうですね」
研修終了後、佐々木課長が部長に報告。
部長「研修はどうだった?」
佐々木「勉強になりました」
部長「新人がか?」
佐々木「はい。私の方が学ぶことが多かった」
部長「それは良かった」
佐々木「来年の研修は、双方向型にします」
部長「双方向型?」
佐々木「新人と私が、お互いに教え合うんです」
部長、佐々木課長の変化に驚き、自分も田村くんにスマホの使い方を教わることを決意。会社全体が「相互学習企業」になった。
まとめ
いやあ、世代間ギャップってのも悪いもんじゃないですな。
お互いに学び合えば、それぞれの良さが活かせる。
佐々木課長みたいに、最初は抵抗があっても、柔軟性を持てば新しい発見がある。
それにしても、「相互学習企業」ってのは面白いアイデアですね。今度はAIに学習方法を教わったりして。


