配達員と住人の大誤解
ネット通販が当たり前になった現代、宅配便の配達員さんは本当に大変でしょうな。
一日に何十件も配達して、しかも在宅率は低い。
不在票を入れて、再配達して、それでもまた不在で…
そんな配達員さんと住人の間で起きた、ちょっとした騒動の話をしてみましょうか。
まあ、聞いてみてください。
まくら
最近のマンションってのは、オートロックにモニター付きインターホン、宅配ボックスまで完備。
便利になったもんですが、その分トラブルも複雑になってきました。
昔なら「留守だった」で終わる話も、今じゃそう簡単にはいかない。
特に、機械に慣れない人が絡むと…
あらすじ
配達員の山田さん、今日も重い荷物を抱えてマンション「ハイツ花園」にやってきた。
配達先は304号室、鈴木様。
冷凍食品で時間指定、これは確実に届けなければならない。
山田「えーっと、304号室…」
オートロックのインターホンで304を押す。
しかし、返事がない。
山田「あれ?在宅のはずなんだけどなあ」
もう一度押してみる。
すると、今度は男性の声が聞こえた。
住人「はーい」
山田「宅配便です。304号室の鈴木様でしょうか?」
住人「え?鈴木?俺、田中だけど」
山田「あ、すみません。間違えました」
新たな疑問
配達伝票を見直す山田さん。
確かに304号室、鈴木様と書いてある。
山田「おかしいな…」
もう一度304を押してみる。
住人「また?さっき間違いって言ったじゃない」
山田「すみません、でも配達先が304号室なんです」
住人「だから俺は田中だって」
山田「鈴木様はいらっしゃいませんか?」
住人「知らないよ、そんな人」
謎が深まる
困った山田さん、管理人室に行ってみることにした。
管理人「304号室?田中さんですよ」
山田「そうですよね。でも配達先は鈴木様なんです」
管理人「おかしいですねえ…ちょっと住人名簿を見てみましょう」
名簿を見ると、確かに304号室は田中誠一さん。
鈴木という名前はどこにもない。
管理人「間違いないですね。田中さんです」
山田「でも、この荷物…」
管理人「送り主は?」
山田「えーっと…鈴木花子様から」
意外な展開
管理人の顔が明るくなった。
管理人「ああ!鈴木花子さんなら知ってます」
山田「どちらにいらっしゃるんですか?」
管理人「田中さんの奥さんですよ」
山田「え?」
管理人「結婚前の名前が鈴木だったんです。旧姓で荷物を送ったんでしょう」
なるほど、そういうことか。
山田さんは再び304号室を訪れた。
山田「すみません、先ほどの宅配便です」
田中「だから、俺は田中だって」
山田「奥様の旧姓、鈴木さんじゃないですか?」
田中「奥様?俺、独身だよ」
山田「え…?」
事態は混乱の極みへ
再び管理人室に戻る山田さん。
山田「田中さん、独身だって言ってるんですが」
管理人「そんなはずは…確か結婚してるはずですよ」
山田「確か?」
管理人「いや、確実に。奥さんと一緒に住んでるのを見たことありますから」
じゃあもう一度確認してみよう、ということで管理人も一緒に304号室へ。
管理人「田中さーん、管理人です」
田中「あ、管理人さん。どうしました?」
管理人「宅配便の件で…奥様はいらっしゃいませんか?」
田中「だから、俺は独身だって」
管理人「でも、女性の方がいるのを見たことが…」
田中「ああ、妹か」
真相に近づく
田中「妹が時々来るんです。掃除しに」
管理人「妹さんの名前は?」
田中「鈴木花子。結婚して苗字が変わったんです」
山田「それです!送り主の名前と一致します」
田中「でも、妹は今日は来てないですよ」
山田「あの…この荷物、冷凍食品なんです。溶けちゃうので早く渡したいんですが」
田中「妹に電話してみますよ」
田中さんが妹に電話をかける。
田中「もしもし、花子?宅配便が届いてるよ」
電話の向こうから「えー?」という声が聞こえる。
田中「冷凍食品だって。時間指定で」
また「えー?」という声。
田中「何だって?」
衝撃の事実
電話を切った田中さんの顔が青くなった。
田中「あの…妹が言うには…」
山田「はい」
田中「その荷物、俺への差し入れだって」
山田「差し入れ?」
田中「妹が心配して、冷凍食品を送ったって。でも恥ずかしいから旧姓で送ったって」
管理人「なるほど、そういうことか」
山田「じゃあ、受け取っていただけますか?」
田中「まあ…でも何送ったんだろう」
荷物を受け取った田中さん。
中を開けてみると…
田中「冷凍の…餃子?」
山田「餃子ですね」
田中「50個入り…」
山田「大容量ですね」
田中「あと…チャーハンの素?カップ麺?レトルトカレー?」
全部独身男性の定番食品だった。
最後の真実
田中さんが再び妹に電話した。
田中「おい花子、なんで餃子50個も送るんだよ」
電話の向こうから笑い声が聞こえる。
田中「笑い事じゃないだろ」
妹の声「だって、この前会った時、『俺、料理できないから餃子しか食べてない』って言ってたじゃない」
田中「それ、冗談だったのに…」
妹の声「真に受けちゃった。ごめんごめん」
配達を終えて帰ろうとする山田さんに、田中さんが声をかけた。
田中「あの、山田さんでしたっけ?」
山田「はい」
田中「よろしかったら、餃子の一つでも…」
山田「え?」
田中「50個は多すぎて。一人じゃ食べきれないんです」
山田「でも…」
田中「妹も『みんなで食べて』って言ってましたから」
山田「ありがとうございます」
次の日、山田さんは同僚の配達員たちに餃子を分けた。
同僚A「うまいじゃないか、この餃子」
同僚B「どこで買ったんだ?」
山田「実は配達先でいただいて…」
同僚C「いい話だなあ」
すると、翌週また304号室に荷物が届いた。
今度の送り主も鈴木花子。
田中「また妹から?今度は何だろう」
開けてみると、今度はハンバーグの冷凍食品。
100個入り。
山田「今度はハンバーグですね…100個」
田中「妹に聞いてみます」
電話で確認すると、妹の声が聞こえてきた。
妹の声「配達のお兄さんたち、餃子美味しいって言ってくれたんでしょ?今度はハンバーグ!」
田中さん、妹の優しさに泣きながら冷凍庫を二台注文した。
まとめ
いやあ、現代の兄弟愛ってのは冷凍食品で表現されるんですな。
それにしても、妹さんの気遣いが裏目に出て、お兄さんは冷凍庫が餃子とハンバーグでパンパン。
でも配達員さんたちは大喜びで、結果オーライ。
ただ、次は何が届くのか…冷凍庫がもう一台必要かもしれませんね。


