寄席夫婦喧嘩其の二
前回、寄席で喧嘩して有名になった夫婦の続編です。
今度は正式に寄席に呼ばれて「夫婦喧嘩」を披露することに。
でも、舞台となると、なかなか思うようにはいかないもので。
舞台で喧嘩を披露する夫婦
観客の前で喧嘩をするなんて、考えただけで恥ずかしい。
でも、それが芸になるなら、また別の話かもしれません。
あらすじ
前回寄席で喧嘩して有名になった茂吉とお松が、寄席の主人に呼ばれた。
主人:「茂吉さん、お松さん、お疲れ様でした」
茂吉:「何の用でしょうか」
主人:「実は、お二人の夫婦喧嘩が評判になって」
お松:「評判?」
主人:「お客様から、また見たいという声が」
茂吉:「また見たいって、喧嘩を?」
主人:「はい、正式に寄席で披露してもらえませんか」
お松:「正式に?」
主人:「出演料もお支払いします」
—
茂吉:「出演料?」
主人:「はい、一回につき二両」
お松:「二両!」
茂吉:「それは魅力的だな」
お松:「でも、喧嘩を商売にするって」
茂吉:「商売になるなら、いいじゃないか」
お松:「そうね、生活費の足しになるし」
主人:「では、お願いします」
茂吉:「分かりました」
—
いよいよ、夫婦喧嘩の舞台が始まった。
主人:「それでは、茂吉・お松夫婦による『生の夫婦喧嘩』をお楽しみください」
客:「楽しみだ」
茂吉:「えーと、お松」
お松:「はい」
茂吉:「喧嘩を始めるか」
お松:「そうですね」
しかし、観客の前では恥ずかしくて、なかなか始められない。
—
茂吉:「あの、お松さん」
お松:「なんですか、茂吉さん」
茂吉:「今日は天気がいいですね」
お松:「そうですね」
客:「喧嘩は?」
茂吉:「あ、そうだった」
お松:「喧嘩をしないと」
茂吉:「でも、何で喧嘩しようか」
お松:「そうですね」
客:「相談してる場合じゃないだろ」
—
茂吉:「じゃあ、お前は」
お松:「お前って言わないで」
茂吉:「すみません」
お松:「いえいえ、こちらこそ」
茂吉:「お松さんは優しいですね」
お松:「茂吉さんも優しいです」
客:「仲良くなってる」
主人:「喧嘩してください」
茂吉:「そうだった」
—
茂吉:「えーと、お松!」
お松:「はい」
茂吉:「俺は怒ってるぞ」
お松:「なんで怒ってるんですか」
茂吉:「それは…えーと」
お松:「理由がないと怒れませんよ」
茂吉:「そうですね」
客:「理由を相談してる」
お松:「じゃあ、私が怒ります」
茂吉:「お願いします」
—
お松:「茂吉さん、怒ってますよ」
茂吉:「どうして怒ってるんですか」
お松:「それは…なんででしょう」
茂吉:「分からないんですか」
お松:「観客の前だと、怒る気になれなくて」
茂吉:「私もです」
客:「二人とも優しすぎる」
主人:「どうしましょう」
—
結局、茂吉とお松は喧嘩の代わりに、仲良しぶりを披露することにした。
茂吉:「お松さん、いつもありがとう」
お松:「こちらこそ、茂吉さん」
茂吉:「君と結婚してよかった」
お松:「私も幸せです」
客:「微笑ましいな」
主人:「これはこれでいいかも」
—
客:「夫婦喧嘩より、仲良し夫婦の方がいい」
茂吉:「そうでしょうか」
客:「はい、見てて幸せな気持ちになります」
お松:「それは良かった」
主人:「じゃあ、『仲良し夫婦ショー』に変更しましょう」
茂吉:「仲良し夫婦ショー?」
主人:「はい、愛情を語り合ってください」
お松:「それなら得意です」
—
結局、茂吉とお松は仲良し夫婦として寄席の人気者になった。
茂吉:「喧嘩で有名になったのに、仲良しで成功した」
お松:「不思議ですね」
客:「今日も仲良しぶりを見せてください」
茂吉:「はい、お松さんのいいところを話します」
お松:「私も茂吉さんのいいところを」
客:「いいね」
主人:「『仲良し夫婦ショー』の方が評判いいです」
茂吉:「でも、たまには喧嘩もしたいな」
お松:「じゃあ、家でしましょう」
茂吉:「家では仲良し、寄席では仲良しショー」
お松:「いつ喧嘩するんですか」
茂吉:「忘れちゃいました」
まとめ
夫婦喧嘩を披露するはずが、舞台では仲良くなってしまう。
でも、それが新しい芸として成功してしまいました。
喧嘩も仲良しも、見せ方次第で芸になるという話でした。


