無駄遣いお使い
お使いというのは、本来は頼まれた物を買って帰る単純な作業。
でも、無駄遣いが大好きな人にとっては、宝探しのような楽しい冒険になってしまいます。
そんな困った性格の男の珍道中を新作落語にしてみました。
計画的な買い物って、意外と難しいんですよね。
衝動買いが止まらない男
あらすじ
無駄遣いの名人、与太郎が女房からお使いを頼まれた。
女房:「醤油が切れたから、買ってきて」
与太:「醤油な。分かった」
女房:「醤油だけよ。他の物は買わないでね」
与太:「分かってる、分かってる」
女房:「本当よ。いつも余計な物ばかり買ってくるんだから」
与太:「今度は大丈夫だ」
—
与太郎は意気揚々と出かけた。
与太:「醤油、醤油」
途中で露店を発見。
商人:「珍しい石はいかが」
与太:「石?」
商人:「この石、色が醤油みたいでしょ」
与太:「本当だ!まるで醤油みたいな色だ」
商人:「百文でどうです」
与太:「面白い!買った」
—
次の店では。
商人:「踊る人形はいかが」
与太:「踊る人形?」
商人:「これ、醤油をかけるような動きをするんです」
与太:「醤油をかけるような?」
商人:「ほら、こんな風に」
人形がちょろちょろと動く。
与太:「確かに醤油をかけてるみたいだ!これも買った」
—
さらに別の店で。
商人:「醤油の歌を歌う鳥はいかが」
与太:「鳥が醤油の歌を?」
商人:「『しょうゆ、しょうゆ』って鳴くんです」
与太:「本当?」
鳥:「しょうゆ、しょうゆ」
与太:「すげえ!これも買った」
こうして与太郎は、醤油に関係ありそうな物を次々と購入。
—
日が暮れて、与太郎が帰宅。
女房:「お帰りなさい。醤油は?」
与太:「醤油?」
女房:「そう、醤油よ」
与太:「ああ、醤油ね。買ってきた」
袋から醤油色の石を取り出す。
与太:「これが醤油だ」
女房:「これは石じゃない」
—
与太:「でも醤油と同じ色だろ」
女房:「色が同じでも、石は石よ」
与太:「じゃあ、これは?」
踊る人形を出す。
与太:「醤油をかけるような動きをする」
女房:「人形に醤油をかけてどうするの」
与太:「それから、これ」
鳥かごを出す。
鳥:「しょうゆ、しょうゆ」
—
女房:「全部、醤油じゃないじゃない」
与太:「でも、みんな醤油に関係ある」
女房:「関係あっても、料理に使えないでしょ」
与太:「そうか…じゃあ、これで我慢して」
与太郎は石を指さした。
与太:「これが一番醤油に似てる」
女房:「似てるだけじゃダメなの!」
与太:「石の醤油って、新しいと思わない?」
女房:「思わない!」
結局、女房が改めて醤油を買いに行くことになった。
与太:「でも、今日は楽しい買い物だった」
女房:「楽しいのはあんただけよ」
まとめ
醤油を買いに行って、醤油色の石を買って帰る。
衝動買いも極まれば、もはや芸術の域ですね。
でも、関連商品を買うその発想力は、案外マーケティングの才能があるかもしれません。


