風呂屋大工
職人の世界には「仕事中は真面目に」という不文律がございますが、
風呂屋で働く大工となると、誘惑に勝てないこともあるようで。
今日はそんな、職人魂が湯に溶けてしまった話。
湯船で仕事する大工の末路
あらすじ
腕はいいが風呂好きで有名な大工の熊五郎に、風呂屋の主人から修理の依頼が来た。
主人:「熊さん、男湯の床板が傷んでるんだ」
熊:「おう、任せとけ」
主人:「ただし、営業中に頼むよ。休みが取れなくてね」
熊:「営業中?じゃあ風呂に入りながらか」
主人:「いや、そういう意味じゃ…」
熊:「大丈夫だ、俺は器用だから」
—
熊五郎は道具を持って男湯に入った。
熊:「まず、どこが傷んでるか確認しないとな」
そう言いながら、服を脱ぎ始めた。
客 A:「おい、大工さん何してるんだ」
熊:「床を確認するには、裸足が一番だ」
客 A:「裸足どころか、全部脱いでるじゃないか」
熊:「ついでだ」
—
熊五郎は湯船に浸かりながら、床板を調べ始めた。
熊:「ああ、いい湯だな。仕事もはかどる」
客 B:「湯船から出て仕事しろよ」
熊:「これが俺の仕事スタイルだ」
熊は湯船の縁に道具を並べ、時々手を伸ばして床板を叩いた。
熊:「うん、この辺が腐ってるな」
トントンと金槌で叩くが、力が入らない。
—
一時間後、熊五郎はすっかりのぼせていた。
熊:「ふう、いい湯だった…じゃなくて、いい仕事だった」
主人:「熊さん、修理は進んでるかい」
熊:「ああ、バッチリだ。問題箇所は全部チェックした」
主人:「で、いつ直すんだ」
熊:「今から…今から…」
熊五郎は湯船から出ようとしたが、のぼせて立ち上がれない。
—
熊:「ちょっと休憩…」
そのまま湯船の縁で居眠りを始めてしまった。
寝返りを打った拍子に、置いていた金槌が湯船に落ちた。
ドボン!
客 C:「なんだ今の音は」
金槌は湯船の底を突き破ってしまった。
ゴボゴボゴボ…
客たち:「湯が抜けてる!」
—
主人:「熊さん!何してるんだ!」
熊:「え?あ、つい居眠りを…」
主人:「床板を直しに来て、湯船を壊してどうする!」
熊:「す、すみません」
主人:「もう二度と頼まん!」
ところが翌日、別の風呂屋から連絡が。
別の風呂屋:「古い湯船を壊して新しくしたいんだが」
熊:「壊す?」
別の風呂屋:「熊さんが風呂を壊したって聞いてね。壊し専門でやってくれないか」
熊:「壊し専門…まあ、得意だけど」
熊五郎は「風呂屋専門の解体業」として新たな道を見つけた。
熊:「建てるより壊す方が性に合ってたんだな。怪我の功名ってやつだ」
まとめ
修理に行って逆に壊してしまい、それが新しい仕事につながる。
失敗も度が過ぎれば才能になるという、なんとも都合のいい話。
でも世の中、案外こんなもんかもしれませんね。


