遺産お化け
またまた新作落語でございます。
遺産相続という現実的な話に、お化けという非現実的な要素を混ぜてみました。
相変わらず無茶な組み合わせですが、お付き合いください。
金持ち大旦那の遺産を巡る騒動
あらすじ
江戸一番の大店、越後屋の大旦那が亡くなって七日目。
親戚一同が集まって、遺産相続の話し合いをすることになった。
甥:「叔父上は確か、遺言状を残していたはずだ」
姪:「そうよ、金庫の中にあるって聞いたわ」
番頭:「申し訳ございません。金庫の鍵は大旦那様だけがお持ちで…」
甥:「なんだと!じゃあ遺産はどうなるんだ」
—
親戚たちは屋敷中を探し回った。
仏壇の裏、床の間の掛け軸の後ろ、庭の灯籠の下まで。
姪:「どこにもないじゃない」
甥:「待てよ、大旦那の枕の下は調べたか」
番頭:「それが、枕は燃やしてしまいまして」
甥:「なんてことだ!」
その時、ろうそくの火が不自然に揺れた。
番頭:「ひぃっ!」
—
薄暗い部屋の隅に、白い着物を着た大旦那の姿が浮かび上がった。
大旦那の霊:「おぉ…金庫…金庫の…」
甥:「で、出た!大旦那の幽霊だ」
姪:「きゃあ!」
大旦那の霊:「金庫の…番号が…」
番頭:「番号?金庫に番号なんてありましたっけ」
大旦那の霊:「新しく…つけた…」
—
甥が恐る恐る聞いた。
甥:「そ、その番号を教えてください」
大旦那の霊:「それが…忘れて…しまった…」
一同:「はぁ?」
大旦那の霊:「だから…成仏できない…」
姪:「幽霊になっても物忘れするの?」
大旦那の霊:「生前から…物忘れが…ひどくて…」
—
番頭が思い出した。
番頭:「そういえば大旦那様、最近よく金庫の前でうろうろしてましたな」
大旦那の霊:「そうだ…何か大事な…番号だった…」
甥:「思い出してください!」
大旦那の霊:「四桁…だった…ような…」
姪:「四桁の何か心当たりは?」
大旦那の霊:「誕生日…そうだ…俺の誕生日だ!」
—
一同が顔を見合わせた。
甥:「大旦那の誕生日っていつだ?」
姪:「知らないわ」
番頭:「申し訳ございません。帳簿にも載っておりません」
大旦那の霊:「えっ…誰も…知らない…」
甥:「だって、いつも『歳なんか数えるもんじゃない』って言ってたじゃないですか」
大旦那の霊:「しまった…」
こうして大旦那の霊は、永遠に金庫の前をうろうろすることになった。
まとめ
幽霊になっても物忘れが治らないという、なんとも間抜けな設定でした。
金庫の番号を自分の誕生日にしたのに、誰にも教えていなかったというオチも、我ながら強引です。
でも、こういう人情味のある幽霊なら、怖くないですよね。
…怖くないですよね?


