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【AI落語】電車カードの粗忽(新作落語)

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【AI落語】電車カードの粗忽(新作落語)
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電車カードの粗忽

平成の世も終わりに近づいた頃、電車の切符がカード一枚で済むという便利な時代になりました。ところが便利になったのは良いものの、使い方がわからない人には却って不便な代物。特に新しいものが苦手な粗忽者にとっては、まさに鬼門とも言える難物でございます。本日は、そんなICカードで大騒動を起こした粗忽者のお話。

カードで電車に乗るたぁ

「おい清兵衛、今度電車に乗るのにカードがいるって話だが」
「そうでござんす、旦那。時代も変わったもんで」
「カードってぇのは、あのトランプのカードかい?」
「いえいえ、ICカードって言うんでござんす」
「アイシー? 氷のカードかい?」
「そうじゃありません。えーっと、なんでも中に電気が入ってて」
「電気? そりゃあ危ねぇな」
「大丈夫でござんす。触っても痺れやしません」
「そうかい。で、そのカードはどこで買うんだい?」
「駅の機械で買えるんでござんす」
「機械か…最近はなんでも機械だな」

駅に着いた二人。

「どれが機械だい?」
「あれでござんす、あの大きいの」
「ずいぶんと大きな機械だな。で、どうやって買うんだい?」
「お金を入れて、ボタンを押すんでござんす」
「簡単じゃねぇか」

券売機の前に立つ。

「えーっと、どのボタンだい?」
「そこに『ICカード』って書いてあるでござんしょ」
「どれだい?」
「そこの…あれ? 書いてないですね」
「書いてねぇじゃねぇか」
「変ですねぇ。確かにあったはずなんですが」

よく見ると、それは普通の自動販売機だった。

「おい清兵衛、これは飲み物の機械じゃねぇか」
「あ、間違えました。あっちでござんす」

本当の券売機の前に移動。

「今度こそ、これだな」
「はい。まずお金を入れて」
「いくらだい?」
「500円でござんす」

500円を入れる。

「で、どのボタンだい?」
「『Suica』ってボタンを押してください」
「スイカ? 果物のスイカかい?」
「そうじゃありません。『Suica』です」
「でも果物の西瓜って書いてあるじゃねぇか」
「え?」

よく見ると『西瓜』と書かれたボタンがある。

「これは『すいか』でも『Suica』じゃありません」
「じゃあ何だい?」
「えーっと…これは季節限定の切符みたいですね」
「季節限定?」
「夏だけ売ってる特別な切符でござんす」
「そんなもんがあるのかい」
「でも旦那が欲しいのはICカードでしょ?」
「そうだな」

改めて券売機を見る。

「『PASMO』ってのはどうだい?」
「それでござんす! それがICカードです」
「パスモ? 変な名前だな」

ボタンを押す。

「おや、カードが出てきたじゃねぇか」
「そうでござんす。それがICカードです」
「思ったより薄っぺらいな」
「でも便利なんでござんすよ。これを改札にかざすだけで」
「かざす? お祈りでもするのかい?」
「いえ、機械にペタッと当てるんです」
「ペタッと?」

改札に向かう。

「この機械かい?」
「はい。そこの青いところに当ててください」
「青いところ…これかい?」

カードを改札機にベタッと貼り付ける。

「あれ? 何も起こらねぇな」
「旦那、貼り付けちゃダメでござんす」
「じゃあどうするんだい?」
「軽く触れるだけです」

カードをそっと当てる。

ピッ

「おお、音がした!」
「そうでござんす。これで通れます」
「便利だなぁ」

改札を通る。しかし清兵衛だけ通れない。

「おい清兵衛、なんで通らねぇんだい?」
「あ、私もカード買わなきゃ」
「そうか、一人一枚いるのか」

清兵衛もカードを買いに戻る。そして改札を通ろうとするが…

ブザー音

「あれ? 通れません」
「なんでだい?」
駅員がやってきた。

「お客様、どうされました?」
「カードで通ろうとしたんですが」
「拝見いたします…あ、これお金がチャージされてませんね」
「チャージ?」
「お金を入れないと使えないんです」
「お金? 500円払ったじゃねぇか」
「それはカード代金です。乗車料金は別途チャージが必要です」
「なんだと? カード買うのにも金がいて、乗るのにも金がいるのかい?」
「はい」
「それじゃあ二重に取られてるじゃねぇか」
「いえ、カードは繰り返し使えますので」
「繰り返し?」
「お金をチャージすれば、何度でも使えます」
「そうかい…で、どこでチャージするんだい?」
「あちらの機械で」

またまた機械の前に。

「また機械かよ」
「1000円からチャージできます」
「また金がかかるのか…」

結局1000円追加でチャージして、やっと電車に乗れた。

「やれやれ、ようやく乗れたな」
「そうでござんすね」
「ところで清兵衛、俺たちどこに行くんだっけ?」
「え?」
「電車に乗る用事」
「あ…忘れました」
「俺も思い出せねぇ」
「まぁ、カードも買ったことだし、とりあえず一駅乗ってみますか」
「そうだな」

一駅乗って降りる。改札でまたカードをかざす。

ピッ

「今度は大丈夫だな」
「はい」

外に出ると、そこは隣の駅だった。

「なぁ清兵衛、ここはどこだい?」
「隣の駅でござんす」
「隣の駅って、歩いて10分のところじゃねぇか」
「そうでござんすね」
「1500円も使って、10分の距離を…」
「まぁ、いい経験でござんしたよ」
「そうだな」

歩いて元の駅まで戻る二人。

「なぁ清兵衛」
「なんでござんす?」
「このカード、まだ使えるんだよな?」
「はい、お金がある限り」
「じゃあ、今度また電車乗る時に使おうじゃねぇか」
「そうでござんすね」

その夜、清兵衛がカードを洗濯してしまった。

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