常太夫義太夫
3行でわかるあらすじ
お伊勢参りの喜六と清八が宿に困り、庄屋に浄瑠璃語りの「常太夫」と「義太夫」と名乗って泊まる。
翌朝早く逃げ出し、村はずれで「つねだゆう、ぎだゆう」と呼ぶ声を聞いて驚くが気味が悪い。
実はお宮の床下でお坊さんが関西弁で「つめたい、ひだるい」と言っていただけという聞き違いオチ。
10行でわかるあらすじとオチ
お伊勢参りの喜六と清八が日暮れに宿を求めるが、庄屋から旅の者は泊められないと断られる。
清八は庄屋が浄瑠璃好きと知り、自分たちを浄瑠璃語りの「常太夫」と「義太夫」と偽って名乗る。
庄屋は有名な義太夫かと驚くが、清八は「次の次のずっと後の義太夫」だと言い訳する。
庄屋は明日三味線弾きを呼んで一段聞かせてもらうと約束し、二人を泊めることにする。
二人は飲み食いして祝儀まで先取りし、夜明け前にこっそりと庄屋の家から逃げ出す。
村はずれの鎮守の森で「つねだゆう、ぎだゆう」と呼ぶような声が聞こえて気味が悪くなる。
恐い物見たさの二人は声のする方へ近づき、お宮の床下を覗き込む。
そこには宿を取り損ねたお坊さん二人が肩を寄せ合って寒そうにしている。
お坊さんたちは関西弁で「つめたい、ひだるい」(冷たい、空腹だ)と言っている。
「つめたい、ひだるい」が「つねだゆう、ぎだゆう」に聞こえたという関西弁の聞き違いオチで幕となる。
解説
「常太夫義太夫」は江戸時代の浄瑠璃文化と関西弁の音韻的特徴を巧妙に組み合わせた地口オチの傑作です。この演目の最大の魅力は、関西弁「つめたい、ひだるい」が「つねだゆう、ぎだゆう」に聞こえるという音の類似性を利用した秀逸な言葉遊びにあります。
物語の構成も巧妙で、まず二人が浄瑠璃語りと偽る詐欺的行為、次に祝儀まで騙し取って逃亡する展開、最後に偶然の聞き違いという三段構成になっています。特に清八が「次の次のずっと後の義太夫」と苦し紛れに言い訳する場面は、江戸時代の芸能界における名跡継承の慣習を背景にしたユーモアとなっています。
この落語は単なる言葉遊びを超えて、当時の人々の信心深さ(お伊勢参り)、芸能への憧憬(浄瑠璃語り)、そして旅の困窮といった江戸時代の庶民生活を生き生きと描いた作品として、現代でも親しまれ続けている古典落語の名作です。
あらすじ
喜六、清八のお伊勢参りの二人連れ、日が暮れてきたがあたりに宿はない。
村の庄屋の家で一晩の宿を乞うが、旅の者は泊められないと言う。
庄屋が浄瑠璃が好きな事を小耳に挟んでいる清八は、自分たちは浄瑠璃語りだと言い出す。
庄屋は浄瑠璃語りなら、自分から頼んだことにすれば泊められないこともないと言い名前を聞く。
清八は常太夫(つねだゆう)と義太夫(ぎだゆう)と言うと、庄屋はあの有名な義太夫さんかとびっくり。
清八はあわてて、その有名な義太夫の名を継いだ、次の次のずっと後の義太夫だと弁解する。
庄屋はおかしいと怪しみながらも泊めてやることにし、一段聞かせてくれとせがむ。
清八は三味線弾きがいないと語れないと切り抜けるが、庄屋は明日の朝、三味線弾きを呼ぶから今日はゆっくり泊ってくれとしぶとい。
腹が減って疲れている二人はこの際と腹一杯飲んで食って、祝儀まで先取りして、その晩はぐっすりだ。
そして二人は夜が明ける前に庄屋の家からとんずらを決め込む。
村はずれの寂しい鎮守の森に差しかかると、どこからともなしに「つねだゆぅ~、ぎだゆぅ~、つねだゆぅ~、 ぎだゆぅ~」と呼ぶような声がする。
庄屋と二人しか知らないはずの名前を呼ばれて気味が悪くなったが、そこは恐い物見たさでは人一倍の二人、声のする方へと近づいて行く。
お宮の下から声がするようで床下を覗き込むと、これも宿を取り損ねたのか、おこもさんか、二人で肩を寄せ合って、
「つめたぁ~い、ひだる~い、つめたぁ~い、ひだる~い」
落語用語解説
- 常太夫・義太夫 – 浄瑠璃語りの芸名。義太夫は特に有名な名跡。
- お伊勢参り – 伊勢神宮への参拝の旅。江戸時代の庶民の一大イベント。
- 庄屋 – 村の長。名主とも呼ばれ、村政を取り仕切った。
- 浄瑠璃 – 三味線伴奏の語り物芸能。人形浄瑠璃(文楽)の語りとしても有名。
- ひだるい – 関西弁で「空腹だ」「腹が減った」という意味。
- おこもさん – 乞食や浮浪者のこと。宿を持たない人々。
よくある質問(FAQ)
Q: オチの「つめたい、ひだるい」の意味は?
A: 関西弁で「つめたい」は寒い、「ひだるい」は空腹という意味です。これが「つねだゆう、ぎだゆう」という浄瑠璃語りの名前に聞こえたという地口オチです。
Q: なぜ庄屋は二人を泊めたのですか?
A: 庄屋が浄瑠璃好きだったからです。有名な浄瑠璃語りが来たと思い、翌朝一段聞かせてもらう約束で泊めることにしました。
Q: 清八の「次の次のずっと後の義太夫」という言い訳は何を意味しますか?
A: 芸能界では名跡を代々継承する慣習があり、「何代目義太夫」という形で名を継ぎます。清八は自分が有名な義太夫の遠い後継者だと苦し紛れに言い訳しました。
名演者による口演
- 桂米朝(三代目) – 人間国宝。関西弁の微妙なニュアンスを巧みに演じました。
- 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の重鎮。旅の情景を生き生きと描きました。
- 桂枝雀(二代目) – 爆笑王。聞き違いの場面を大げさに演じて爆笑を誘いました。
関連する落語演目
同じく「旅・道中」がテーマの古典落語


同じく「詐欺・嘘」がテーマの古典落語


同じく「地口オチ」の古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「常太夫義太夫」は、関西弁の音韻的特徴を巧妙に利用した地口オチの傑作です。お伊勢参りの二人が浄瑠璃語りと偽って宿を得、祝儀まで騙し取って逃げるという詐欺的行為が描かれますが、最後は偶然の聞き違いで締めくくられます。
「つめたい、ひだるい」が「つねだゆう、ぎだゆう」に聞こえるという音の類似性は、関西弁特有のイントネーションを知っているとより面白く感じられます。また、清八の「次の次のずっと後の義太夫」という苦し紛れの言い訳は、芸能界の名跡継承の慣習を背景にしたユーモアです。
現代でも、言葉の聞き違いによる滑稽な場面は日常的に起こります。この噺は、方言や音の類似性が生む可笑しさを、旅の情景と共に描いた古典落語の名作です。


