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【古典落語】たちぎれ線香 あらすじ・オチ・解説 | 線香が「立ち切れ」た時に止まる三味線!芸者小糸の壮絶恋慕と悲劇の結末

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話芸の殿堂-古典落語-たちぎれ線香
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たちぎれ線香

3行でわかるあらすじ

船場の若旦那が芸者の小糸に入れあげて散財し、100日間の蔵住まいの処分を受ける。
その間に番頭が小糸からの文を隠していたため、小糸は返事がないと思い込み病死してしまう。
若旦那が仏壇で線香を上げると三味線がひとりでに鳴るが、線香が立ち切れると演奏も止まる。

10行でわかるあらすじとオチ

船場の大家の一人息子の若旦那が、ミナミの芸者・小糸に入れあげて散財を続けている。
親族会議が開かれ、殺害案まで出るほどだったが、番頭が乞食体験を提案して一同を説得。
結局、若旦那は100日間の蔵住まいという処分を受けることになる。
その間、小糸は連日文を送るが、番頭がそれを隠して若旦那に見せなかった。
80日目を最後に文が来なくなり、番頭は「色街の恋は八十日か」とつぶやく。
蔵住まいを終えた若旦那は反省し、小糸への熱も冷めたように見えた。
しかし最後の手紙を読んで驚き、天神参りと偽って小糸に会いに行く。
小糸の家では女将が仏壇を開け、小糸が若旦那を恋い焦がれて病死したと告げる。
若旦那が線香を上げていると、仏壇の三味線がひとりでに「地唄の雪」を奏で始める。
途中で演奏が止まると、女将が「線香が立ち切りました」と説明する言葉遊びのオチ。

解説

たちぎれ線香は、恋に身を持ち崩す若旦那と芸者の悲恋を描いた人情噺で、最後に巧妙な言葉遊びのオチがつく上方落語の傑作です。
タイトルの「たちぎれ」は「断ち切れ」(恋を断つ)と「立ち切れ」(線香が燃え尽きる)の掛詞になっており、物語全体の構造に組み込まれています。
前半は若旦那の放蕩ぶりと親族の対応を滑稽に描き、後半は小糸の死という悲劇的展開で人情味を加えています。
番頭の善意ある行動が結果的に悲劇を招くという皮肉な構造も見どころです。

最後の超自然的な現象(三味線がひとりでに鳴る)は怪談的要素を含みながらも、線香の燃焼時間という現実的な理由で説明される絶妙なバランスが特徴的です。
上方落語らしい言葉遊びと人情の深さが融合した名作といえます。

あらすじ

お茶屋遊びが過ぎた船場の大家の一人息子の若旦那。
近頃はミナミの芸者の小糸に入れ上げていて親が意見しようが、番頭が諌めようが馬耳東風、馬の耳に念仏、暖簾に腕押し、で一心不乱に通いつめる。

どうしたものかと親類が集まって親族会議が開かれる。
親旦那は勘当も考えているというが、京都のおじさんは、京へ連れて行って高瀬舟の綱引きをさせると言う。
重労働ですぐに体を壊し死んでしまうと言う算段だ。

丹波のおじさんは、田舎へ連れて行って野良へ出て牛を追わすと提案。
言うことを聞かない牛の尻をけとばして、怒った牛の角に突かれて死んでしまうという寸法だ。

兵庫のおばさんは、釣り好きの若旦那を嵐になりそうな日に須磨の浦に壊れかけた舟で釣りに出せば、舟が転覆してフカの餌食になって跡形なし、後腐れなし、葬式もなしで金もかからず万事好都合と、血の繋がる縁者とも思えない言いようだ。

哀れ若旦那の行く末はこの三者択一で決まりそうな気配だったが、そこへ番頭が来て、乞食になってもらうと言い出す。
そうすれば金の尊さ、金を稼ぐ難しさが身に染みるだろうと、なるほど正論、名案で一同も納得だ。
すぐに乞食の衣装を女中のお清、お竹、飯炊きの権助が作って準備万端という。

ここまでの顛末を丁稚の定吉から聞き出した若旦那、怒って親類一同が集まっている部屋に乗り込む。
番頭に「できるものなら乞食にして見ぃ」と居直るが、逆に番頭からきつく意見され、言い返す言葉もない。
ついには勘当は免れたものの、番頭の発案で百日間の蔵住まいという運びとなった。

一方、若旦那と相思相愛の芸者の小糸は連日のように文を送るが梨のつぶてだ。
番頭が文をしまい込んで若旦那に見せないのだ。
八十日目を最後に文は来なくなり、番頭は「色街の恋は、八十日か」とつぶやき、胸を撫で下ろすとともにがっがりもした。

もしも文が百日続けば二人の仲をなんとかしようと大旦那に相談するつもりでいたのだ。
そして若旦那の百日の蔵住まいも終わった。
蔵から出た若旦那はやっと小糸への熱も下がり、目が醒めたようで、今までの行状を反省する。

番頭は小糸からの最後の文を若旦那に手渡す。
それにはかすれて乱れた字で、「この状をご覧に相成りそうろう上からは、即刻のおん越しこれ無き節には、今生にてはお目にかかれまじく候」とある。

驚いた若旦那は、蔵から出られたお礼参りに天神さんへ行くと言って家を出る。
途中で伴の丁稚を巻いて、ミナミの小糸の家へ行くと、女将は仏壇を開けて白木の位牌を見せ、若旦那に恋い焦がれて文を出し続けたが、梨のつぶて、何の返事もなく、そのうちに飯が喉を通らなくなって病の床についた。
やせ細った小糸は若旦那からこしらえてもらった三味線を弾きながら死んで行ったと語る。

若旦那は線香を上げ、小糸に謝り、小糸を偲んで仏壇の前で酒を飲み始める。
すると仏壇に供えてある三味線がひとりでに鳴り始めた。
若旦那は涙を浮かべながら耳を傾けていると、「地唄の雪」を奏でていた三味線が途中でピタリと止まった。

若旦那 「何でや?三味線の糸が切れたん違うか?ちょっと見て」、仏壇の三味線を見て、

女将 「糸は切れてぇ しまへん」

若旦那 「わしの好きな地唄の雪やないか、何で終いまで弾いてくれへんのや」

女将 「若旦那、もう小糸は三味線を弾かしまへんは」

若旦那 「なんでや」

女将 「お仏壇の線香が、ちょうど立ち切りました」


落語用語解説

  • 立ち切れ(たちぎれ) – 線香が燃え尽きること。「断ち切れ(縁を断つ)」との掛詞になっている。
  • 船場(せんば) – 大阪市中央区の商業地区。江戸時代から大商人の町として栄えた。
  • 蔵住まい – 土蔵に閉じ込めて謹慎させる処分。商家の跡取りに対する懲罰として行われた。
  • 地唄の雪 – 上方の三味線音楽の一曲。冬の情景を描いた名曲として知られる。
  • 梨のつぶて – 返事がないこと。「無しのつぶて」との掛詞。
  • 芸者 – 宴席で歌舞音曲を披露する女性。上方では「芸妓」とも呼ばれる。

よくある質問(FAQ)

Q: 「線香が立ち切りました」というオチの意味は?
A: 「立ち切れ」は線香が燃え尽きることと、縁が断ち切れることの掛詞です。線香が消えると小糸の霊も去り、三味線が止まるという設定で、言葉遊びと人情を融合させたオチです。

Q: 番頭は悪役ですか?
A: 番頭は若旦那を更生させようとする善意で文を隠しましたが、結果的に悲劇を招きました。善意が悲劇につながるという皮肉な構造が物語に深みを与えています。

Q: 三味線がひとりでに鳴るのは怪談ですか?
A: 怪談的要素を含みますが、純粋な怪談ではありません。小糸の霊が若旦那への愛を示す切ない場面として描かれており、恐怖よりも哀切さが強調されています。

名演者による口演

  • 桂米朝(三代目) – 上方落語の重鎮。小糸の哀切さと若旦那の悔恨を情感豊かに演じました。
  • 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の大御所。人情味あふれる語り口で知られました。
  • 桂春団治(三代目) – 上方落語の名手。三味線が鳴る場面を臨場感たっぷりに演じました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「たちぎれ線香」は、上方落語を代表する人情噺の傑作です。若旦那の放蕩、番頭の善意、小糸の純愛という三者の思いが交錯し、悲劇的な結末を迎える構成は見事です。

線香が燃え尽きると三味線も止まるという超自然的な現象と、「立ち切れ」という言葉遊びを融合させたオチは、上方落語ならではの技巧が光ります。真摯な愛と誤解がすれ違う悲しさは、現代にも通じる普遍的なテーマです。

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