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【古典落語】莨道成寺 あらすじ・オチ・解説 | 煙草狂いが道成寺の鐘に隠れる奇想天外な逃走劇

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話芸の殿堂-古典落語-莨道成寺
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莨道成寺

3行でわかるあらすじ

煙草狂いの吉助が紀州の煙の長太に煙草試合を挑むが、試合に負けて逃走する。
長太が日高川を泳いで追いかける中、吉助は道成寺の境内に逃げ込み鐘楼の鐘に隠れる。
坊さんに見つかって諭され、最後は安珍清姫の故事を引用した駄洒落でオチをつける。

10行でわかるあらすじとオチ

煙草狂いで「煙草の吉助」と呼ばれる男が、体中にヤニの臭いがしみ込んだ鼻つまみ者。
友達の家で門前払いされ、甚兵衛さんの家で七味煙管で煙草を吸っていると、紀州の煙の長太の話を聞く。
自分こそ日本一の煙草好きだとプライドを傷つけられた吉助は、紀州まで煙草試合をしに出かける。
長太の家で珍品の煙草を見せられ、本格的な煙草試合が始まり、部屋中が煙でもうろうとなる。
五分五分の勝負が続いたが、ついに吉助はかなわないと煙幕に紛れて逃げ出す。
長太が追いかけてくるが、吉助は日高川で船頭に頼んで渡し、長太を渡させないようにする。
しかし長太は裸になって煙管をくわえたまま川を泳いで渡り、なおも追いかけてくる。
吉助は道成寺の境内に逃げ込み、鐘楼に上がって隠れようとすると鐘が落ちて中にすっぽり隠れる。
長太は見つけられずに帰っていき、坊さんに見つかった吉助は煙草を慎むよう諭される。
最後に吉助が「私もそれで安珍いたしました」と安珍清姫の故事を引用した駄洒落でオチをつける。

解説

「莨道成寺」は、煙草を題材にした珍しい古典落語で、煙草狂いの主人公が巻き起こすユーモラスな逃走劇が見どころです。この演目の特徴は、実在する地名(紀州、日高川、道成寺)を舞台にしたスケールの大きな展開と、安珍清姫伝説という古典的な物語を巧みにオチに組み込んだ構成にあります。

煙草試合という当時の風俗を反映した設定や、七味煙管などの道具立て、さらには珍品の煙草の描写は、江戸時代の煙草文化をリアルに表現しています。長太が煙管をくわえたまま川を泳ぐという荒唐無稽な場面は、落語ならではの誇張表現で笑いを誘います。

最後の「安珍いたしました」は、道成寺の安珍清姫伝説の「安心(あんじん)」と「安珍(あんちん)」を掛けた駄洒落で、古典的な教訓話を茶化したオチとなっています。煙草という身近な題材から始まり、壮大な逃走劇を経て伝説の舞台で終わるという構成は、落語の醍醐味を存分に味わえる作品です。

あらすじ

たばこ狂いで、「煙草の吉助」と呼ばれている男。
体中にヤニの臭いがしみ込んでいるので、遠くからでも吉助が来ることがわかる鼻つまみ者だ。

今日も友達の家に行ったが、あまりの臭さに子どもが泣き出したり、喘息になるからと言われて門前払いされる。
仕方なく人のいい甚兵衛さんのところへ行く。
大きな煙草盆を出してくれて、

甚兵衛 「さあ、これでなんぼでも吸っとくれ」

吉助 「いやありがたい。今日は七味煙管ちゅうて、七つ雁首がついて、吸い口が一つの煙管で吸うんや」と、薩摩、駿河、朝鮮、唐などの煙草を入れて美味そうに吸い出した。
すぐに部屋は煙だら
けになって甚兵衛さんのかみさんは、燻(いぶ)し出されたゴキブリのように逃げ出してしまった。

甚兵衛 「おまえは日本一の煙草好きと自惚れているが、紀州の煙の長太にはかなわんと思うで」、この一言が吉助のプライドを傷つけた。

吉助 「煙の長太てなんや、そんなガキに負けるかいな。そなら一ぺん、試合に行って来るで・・・」と、早速、紀伊街道を紀州へと向かった。
尋ね尋ねて、煙の長太の家にたどり着いて、試合を申し込むと、

長太 「いやはや、煙草の試合とは面白い。まあ、こっちへ上がり、・・・」と、通された部屋は煙草尽くしで、床の間にも煙草の掛け軸で煙草が活けてある。

長太 「あなたはなんぞ珍しい煙草をお持ちか?」、吉助は自慢の七つ雁首の煙管、ぎやまん煙管や何種類もの煙草を見せるが、

長太 「それくらいなら私も持っておる。
ここにほんまの珍品がある。
茗荷の葉に鶯の糞を混ぜたもので、これを飲むと気が落ち着いて穏やかになる。これが珍品中の珍品の龍の髭、これを吸えば千年の寿命を得るという伝来の家宝じゃ」、見合いはこのくらいで、さあ、本番の試合が始まった。

たちまち部屋中は煙でもうろうとして相手の顔も見えなくなる。
五分五分の勝負が続いていたが、ついに吉助、こりゃかなわんと煙を煙幕にしてそろそろと逃げ出しにかかった。
気配で気づいた長太が追いかける。

長太 「くそ、逃がすもんか・・・」、どんどんあてもなく逃げる吉助は日高川へ突き当たる。
渡し船の船頭に酒代をはずみ、

吉助 「もうすぐここに体中、煙草のヤニのような男が追って来るかも知れん。決して渡さんといてくれ」、向こう岸に着いた吉助はまたどんどん走り出す。
しばらくして長太が長い煙管を抱えて渡しにやって来て、

長太 「おい、船頭、大急ぎで向こう岸まで頼む」

船頭 「今日は、もう舟は出さんのじゃ」と、正直者で義理固い。

長太 「さては、おのれ、あの男に頼まれたな。よしゃ、勝手にさらせ」と、裸になって川へ飛び込んで、煙管を口にくわえて水面に出して息をしながら川を渡ってしまった。

一方の吉助は道成寺の境内に飛び込んでしまった。
鐘楼に上って隠れるところを探していると鐘がドシーンと落ちて吉助はすっぽりと鐘の中。
そこへ飛び込んで来た長太、どこを探しても吉助の姿は見当たらない。

長太 「はて、取り逃がしたか残念なぁ~」と、大見栄切って、地団太踏んで行ってしまった。
坊さんたちが鐘を吊り下げようと持ち上げると煙草のヤニ臭い鐘の中から吉助が現れた。
今までの顛末を話すと、

坊さん 「もう行んでしもたよって大丈夫や」

吉助 「やれやれ、まず一服」

坊さん 「あんた、煙草のために命なくすところやったんやろ。煙草は慎んで、命長らえたその代わりに、ここは名高き道成寺、身も心も清姫としなはれ」

吉助 「私もそれで安珍いたしました」


落語用語解説

  • 莨(たばこ) – 煙草の漢字表記。江戸時代には嗜好品として広く普及していた。
  • 七味煙管(しちみきせる) – 七つの雁首(火皿)がついた特殊な煙管。複数の煙草を同時に吸える。
  • 道成寺(どうじょうじ) – 和歌山県日高郡にある天台宗の寺院。安珍清姫伝説で知られる。
  • 安珍清姫(あんちんきよひめ) – 僧侶の安珍と、彼を追って蛇に変化した清姫の悲恋伝説。
  • 日高川 – 和歌山県を流れる川。安珍清姫伝説の舞台として有名。
  • ぎやまん煙管 – ガラス製の煙管。当時は舶来品として珍重された。

よくある質問(FAQ)

Q: 「安珍いたしました」というオチの意味は?
A: 「安心(あんしん)いたしました」と「安珍(あんちん)」を掛けた駄洒落です。道成寺の安珍清姫伝説にちなんで、助かって安心したことを表現しています。

Q: なぜ吉助は道成寺の鐘に隠れたのですか?
A: 安珍清姫伝説で、安珍が清姫から逃れるために道成寺の鐘の中に隠れた故事を踏まえています。この伝説がオチの伏線になっています。

Q: 煙草試合とは実際にあったのですか?
A: 江戸時代には煙草の吸い比べや、煙の吐き方を競う遊びが実際に行われていました。この噺はそうした風俗を誇張して描いています。

名演者による口演

  • 桂米朝(三代目) – 上方落語の重鎮。紀州から道成寺への壮大な逃走劇を臨場感たっぷりに演じました。
  • 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の大御所。吉助と長太の煙草試合を豪快に演じました。
  • 桂文枝(五代目) – 昭和の名人。安珍清姫の故事を絡めたオチを見事に決めました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「莨道成寺」は、煙草という身近な題材から始まり、紀州から道成寺という実在の地名を舞台に壮大な逃走劇が繰り広げられる痛快な上方落語です。長太が煙管をくわえたまま川を泳ぐという荒唐無稽な場面は、落語ならではの誇張表現の真骨頂です。

最後の「安珍いたしました」という駄洒落オチは、道成寺という舞台設定を最大限に活かした見事な構成で、古典的な伝説を茶化したユーモアが光ります。

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