住吉駕篭
3行でわかるあらすじ
住吉大社前の駕篭屋がやっと堂島の商売人の客を獲得するが、駕篭屋が酒を飲みに行っている間に客がもう一人友達を呼び入れる。
二人の客が狭い駕篭の中で相撲を取り始めたため駕篭の底が抜け、客は歩きながら駕篭に入っている状態になる。
子供が「駕篭の足が8本ある」と指摘し、父親が「あれがほんまの蜘蛛(くも)駕篭や」と雲駕篭と蜘蛛駕篭をかけたオチ。
10行でわかるあらすじとオチ
住吉大社前で客引きをしている駕篭屋が散々な目に遭った後、やっと堂島までの客を獲得する。
客は天保銭をくれて景気づけに酒を飲んで来いというので、駕篭屋二人は喜んで飲みに行く。
その隙に駕篭の中の客がもう一人の友達を呼び入れ、二人で駕篭に乗り込んでしまう。
戻ってきた駕篭屋は駕篭が重くなったのを不思議に思いながらも堂島へ向かって歩き出す。
二人の客(堂島の相場師)は駕篭の中で相撲の話をしながら実際に相撲を取り始める。
狭い駕篭の中で相撲を取るため駕篭がぐらぐら揺れ、ついに底が抜けてしまう。
駕篭屋が下りてくれと言っても客は「堂島の強気筋」だから下りないと言い張る。
仕方なく駕篭屋は底の抜けた駕篭を担いで歩くが、今度は客も歩いているので楽になる。
この光景を見た子供が「駕篭の足が8本ある」と父親に指摘する。
父親が「あれがほんまの蜘蛛(くも)駕篭や」と答えて、雲助の雲駕篭と蜘蛛駕篭をかけたオチとなる。
解説
「住吉駕篭」は古典落語の中でも視覚的なコメディを得意とする演目で、駕篭の底が抜けて8本足になるという荒唐無稽な展開が最大の魅力です。駕篭屋を雲助(うんすけ)と呼んだのは「雲のように居場所を定めない」からとされ、街道筋の駕篭かきは乱暴で怖がられていましたが、住吉大社前の駕篭屋は神社の威光で比較的安全だったという時代背景も興味深い要素です。
この噺の秀逸な点は、客である堂島の相場師二人の性格描写です。「堂島でも強気も強気、がちがちの強気で通っている」と自称し、駕篭の底が抜けても頑として下りようとしない頑固さは、相場師らしい意地っ張りな性格を見事に表現しています。狭い駕篭の中で相撲を取るという無茶ぶりも、酒に酔った大阪商人の豪快さを象徴しています。
オチの「蜘蛛(くも)駕篭」は、雲助の「雲駕篭」と音をかけた絶妙な言葉遊びです。駕篭かき2人と客2人の合計4本の足が見えることから「8本足」となり、それを蜘蛛に見立てる発想の転換は聴衆に強烈な印象を与えます。子供の純真な疑問から父親の機知に富んだ答えへと続く会話の自然な流れも、落語の巧妙な構成を示しています。
また、住吉大社という実在の名所を舞台にすることで親近感を演出し、駕篭という江戸時代の交通手段を題材にした時代性も感じさせる作品です。底の抜けた駕篭で歩く滑稽な光景は、落語の持つ「想像の演劇性」を最大限に活用したシーンといえるでしょう。
あらすじ
駕篭屋のことを雲助というのは、雲のように居場所を定めないからとか。
駕篭は客が一人にかつぎ手は二人、街道筋の駕篭かきは雲助、雲助といわれて随分怖がられました。
ところが、住吉街道の駕篭屋は町駕篭同様に安心して乗れたといいます。
変なことをすれば住吉大社の前では商売ができなくなるからです。
住吉さんの前で客を呼び込んでいる駕篭屋。
相棒が小便に行っている間に、相方が大社前の茶店の親爺を駕篭に乗せ、「一ぺんその頭(どたま)を胴体にへこませて、へその穴から世間のぞかしたろか」なんて無茶苦茶に怒られる。
新米で親爺さんの顔を知らないとはいえ、親爺さんは前掛けをして高下駄をはき、ちり取りを持った格好なのだからどなられるのは無理もない。
次に板屋橋までいくらで行くという男とその女房にからかわれ、さらに侍が何丁もの駕篭を頼むと勘違いして、仲間の駕篭屋を呼びにやったり、悪酔いした男に酔い覚ましにとからまれる始末で散々な日だ。
すると、どこからか「駕篭屋、駕篭屋」の声、あたりを見回すが誰もいない。
なんと、声は駕篭の中からだ。
駕篭に入っていた男は堂島までいくらでやると聞く。
一分というと男は二分で行けという。
そして天保銭をやるから景気づけに一杯やって来いという。
喜んだ駕篭屋の二人が飲みに行っている間に、駕篭の中の男はもう一人の友達を駕篭へ呼び入れる。
駕篭屋が戻ってきてかつぐとこれが重い。
確かやせている客だったはずだがと思いながらも堂島へ向い始める。
一方の駕篭の中の二人、妙な所で会って先斗町で遊び、伏見から三十石船に乗って、天満の八軒家から北新地、南と遊び回り住吉さんへとやって来た堂島の店へ帰る旦那たちだ。
二人は駕篭の中でぼそぼそと喋り始める。
これに気づいた駕篭屋が中を見て怒ると走り増しをはずむからこのまま堂島までやってくれという。
気前のいい堂島の旦那衆のこと、走り増しを期待して駕篭屋はまた堂島へと向う。
駕篭の中の二人はその内に相撲の話をし始める。
一方が俺はやせた力士が好きだなんていい、前みつをこう掴むといって、相手の帯を引き寄せる。
すると一方は上から押さえるように抱え込み、狭い駕篭の中で相撲が始まった。
駕篭がぐらぐら揺れだし、急に駕篭が軽くなる。
底が抜けたのだ。
駕篭屋は怒って、もう下りてくれと客にいう。
これを聞いた堂島の相場師の客、「俺達は堂島でも強気も強気、がちがちの強気で通っているのじゃ、いっぺん乗ったものには下りられん」と強情だ。
駕篭代は弁償するからこのまま行ってくれ、駕篭の中で自分たちも歩くという。
仕方なく駕篭屋は駕篭をかつぐが今度は軽くて楽だ。
この駕篭を見た子供が父親に尋ねる。
子供 「お父っつあん、駕篭って足何本あんねん」
父親 「アホかお前、二人でかついでたら4本じゃ」
子供 「そやかて向う行く駕篭、足が8本ある」
父親 「いやあ、ほんに。坊主、よく覚えておけ、あれがほんまの蜘蛛(くも)駕篭や」
落語用語解説
- 雲助(うんすけ) – 駕篭かきの俗称。雲のように居場所を定めないことから。街道筋の駕篭かきは乱暴で怖がられた。
- 住吉大社 – 大阪府大阪市住吉区にある神社。神社の威光で周辺の駕篭屋は比較的安全だった。
- 堂島 – 大阪の商業地区。米相場で有名で、多くの商人や相場師がいた。
- 天保銭 – 江戸時代の貨幣。天保通宝とも呼ばれる大型の銭貨。
- 三十石船 – 大坂から京都への旅客船。30石の米を積める大きさからこの名がついた。
よくある質問(FAQ)
Q: 「蜘蛛駕篭」というオチの意味は?
A: 駕篭かきを「雲助」と呼ぶことから「雲駕篭」と言いますが、底が抜けて駕篭かき2人と客2人の合計8本足が見えることから「蜘蛛駕篭」と掛けた言葉遊びです。
Q: なぜ客は駕篭から降りなかったのですか?
A: 客は「堂島でも強気の強気、がちがちの強気で通っている」相場師で、一度乗ったら降りないという意地っ張りな性格を表現しています。
Q: 駕篭の中で相撲を取るのは実際に可能ですか?
A: 実際には不可能ですが、落語の荒唐無稽な設定として笑いを誘います。狭い空間での相撲という発想が視覚的な面白さを生んでいます。
名演者による口演
- 桂米朝(三代目) – 上方落語の重鎮。駕篭屋と客の掛け合いを絶妙に演じました。
- 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の大御所。堂島の相場師の豪快さを見事に表現しました。
- 桂文枝(五代目) – 昭和の名人。底が抜ける場面を臨場感たっぷりに演じました。
関連する落語演目
同じく「駕篭・旅」がテーマの古典落語


言葉遊び・ダジャレオチの古典落語


上方落語の名作


この噺の魅力と現代への示唆
「住吉駕篭」は、視覚的なコメディを得意とする上方落語の傑作です。駕篭の底が抜けて8本足になるという荒唐無稽な展開が最大の魅力で、落語の「想像の演劇性」を最大限に活用しています。
「雲駕篭」と「蜘蛛駕篭」を掛けたオチは、子供の純真な疑問から父親の機知に富んだ答えへと続く自然な流れで、聴衆に強烈な印象を与えます。


