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【古典落語】将棋の殿様 あらすじ・オチの意味を解説|横暴殿様が元家老に論破される痛快噺

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話芸の殿堂-古典落語-将棋の殿様
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将棋の殿様

将棋の殿様(しょうぎのとのさま) は、将棋のルールを無視して家来を鉄扇で打ちまくる暴君殿様が、元家老の三太夫に痛い目に遭わされる痛快な勧善懲悪落語です。負けた殿様が「明日から将棋を指す者には切腹を申し付けるぞ!」と逆ギレする結末に、権力者の滑稽な意地が表れています。

項目 内容
演目名 将棋の殿様(しょうぎのとのさま)
ジャンル 古典落語・滑稽噺
主人公 殿様・田中三太夫(元家老)
舞台 殿様の屋敷
オチ 「明日から将棋を指す者には切腹を申し付けるぞ!」
見どころ 三太夫の論破と殿様の負け惜しみ、勧善懲悪の痛快さ

3行でわかるあらすじ

暇な殿様が家来と将棋を指すが「待った」や「飛び越し」などルール破りが当たり前で、負けた家来を鉄扇で打ちまくる。
家来たちが瘤だらけになる中、元家老の田中三太夫が登場し、殿様の卑怯な手を論破して勝利する。
三太夫は殿様の膝を鉄扇で打ち、泣いた殿様が「明日から将棋を指す者には切腹を申し付ける」と宣言してオチとなる。

10行でわかるあらすじとオチ

泰平の世で暇を持て余した殿様が家来たちと将棋を始めるが、技量は低級で「待った」や飛車の「飛び越し」、邪魔な駒の「取り払え」が当たり前。
家来たちは勝てるはずがなく、殿様は毎日勝つのが当然の将棋を楽しんでいる。
さらに殿様は負けた者を鉄扇で頭を打つルールを追加し、家来たちは瘤だらけの頭になってしまう。
この噂を聞いた元家老で隠居の田中三太夫が殿様をこらしめようと登城してくる。
三太夫は将棋の相手を申し込み、殿様は嫌がりながらも勝負に応じることになる。
いざ開戦すると、殿様の得意技「飛車のお飛び越し」に対して三太夫は飛車を投げ返し、軍法に背く卑怯な行為だと論破する。
万事この調子で三太夫は殿様をこてんぱんに負かしてしまう。
三太夫は殿様の鉄扇を取り上げ、頭ではなく膝をピシリと打つ。
一刀流の片手打ちが自慢だった三太夫の一撃は痛く、殿様は目から涙をポロポロと流す。
殿様は家来たちの笑いに激怒し、「将棋盤を焼き捨てろ、明日から将棋を指す者には切腹を申し付ける」と宣言してオチとなる。

解説

「将棋の殿様」は、横暴な権力者が自らの行いによって痛い目に遭う勧善懲悪をテーマにした落語の名作です。殿様の将棋のルール破り(待った、飛び越し、取り払い)は、権力を笠に着た理不尽な振る舞いの象徴として描かれています。元家老の田中三太夫は、殿様に物申す古参の家臣という典型的なキャラクターで、正義の代弁者として機能しています。

三太夫の「いやしくも盤上の軍師たる飛車たる者が、軍略・陣法に従わず、卑怯にも道なき所を飛び越して参るのは将棋の法、軍法にそむいております」という論破は、将棋を戦術に見立てた武家社会らしい理詰めの説得です。将棋のルールを「軍法」として捉え直すことで、殿様のルール破りを単なる反則ではなく武士としての恥辱にまで高めている点が巧妙です。殿様は将棋のルールには反論できても、軍法に背くと言われると黙らざるを得ません。

三太夫が殿様の頭ではなく膝を打つ判断も見どころです。殿様の頭を打つのは不敬にあたりますが、膝なら「恐れながら」の範囲内です。しかし一刀流の達人だった三太夫の一撃は相当に痛く、殿様を泣かせるには十分でした。この「ギリギリのライン」を攻める三太夫の老獪さが、噺に深みを与えています。

オチの将棋禁止令は、負け惜しみと八つ当たりの極致として殿様の器の小ささを象徴的に表現しています。自分が負けたから将棋そのものを禁止するという理不尽さは、まさにこの殿様の横暴さの集大成であり、家来たちにとっては将棋から解放される結末でもあるという皮肉な構造になっています。

成り立ちと歴史

「将棋の殿様」は江戸時代後期に成立した古典落語で、「殿様噺」と呼ばれるジャンルの代表的な作品です。殿様噺とは、権力者の無知や横暴を風刺する演目群で、「目黒のさんま」「後生鰻」「将棋の殿様」などが代表的な作品です。太平の世で暇を持て余した殿様の滑稽な姿を描くことで、権力への風刺と庶民の溜飲を下げる役割を果たしていました。

将棋は江戸時代に庶民の間で広く親しまれた娯楽で、将棋所(家元)が幕府から公認されるなど文化的にも重要な位置を占めていました。この噺に登場する殿様のルール破りは、将棋を知る庶民にとっては噴飯ものの行為であり、それを堂々と行う殿様の無知さが笑いの核になっています。また、「鉄扇で頭を打つ」というルール追加は、勝負に負けた罰を物理的な暴力にするという殿様の暴君ぶりを端的に表しています。

演者の系譜としては、柳家小さん(五代目)が殿様と三太夫の掛け合いを見事に演じ分けたことで知られ、この演目の決定版ともいえる口演を残しました。小さんは殿様の子どもっぽさと三太夫の老練さの対比を鮮やかに描き、将棋の対局場面を臨場感たっぷりに語りました。三遊亭圓生(六代目)は殿様の横暴さをより品良く描き、古今亭志ん朝(三代目)は軽快なテンポで現代の聴衆にも親しみやすい口演を見せました。

あらすじ

長く泰平の世が続くと殿さまも閑(ひま)で、退屈しのぎにと家来たちと将棋を始める。
将棋盤と駒は上等の逸品だが、子どもの頃に覚えただけという殿さまの将棋の技量は低級だ。
指し始めると、「待った」は当たり前、飛車が相手の金銀を桂馬のように「飛び越し」たり、目障り、邪魔の駒は「取り払え!」ときた。
こんな調子だから、家来たちは勝てる訳がない。
それでも殿さまは毎日、相手を取っ替え引っ替えして、勝つのが当たり前の将棋を楽しんでいる。

ようやく勝負にならない将棋に飽きてきた殿様は家来一同を集める。
家来たちは今日で将棋も終わりかと内心ほっとするが。
殿さまは自分ばかり勝って、家来はいつも負けてお辞儀だけする将棋はつまらないから、負けた者は鉄扇で頭(つむり)を打たれることにすると言い出した。

家来たちの中には、これで「お飛び越し」、「お取り払い」もなくなり将棋も対等に指せる。
勝てば殿様の頭を鉄扇で打てると喜ぶ者たちもいる。
念のため「お飛び越し」、「お取り払い」はどうなるか聞くと、両方とも今までどおり"有"という。
糠喜びも束の間、負けて頭を下げればよかったものが、頭を打たれることになろうとは事態はさらに悪化したのだ。

嫌がる家来、逃げ腰の家来を盤前に座らせ、勝負にならない将棋で勝っては家来の頭を鉄扇で、ピシリ、ピシリ。
殿さまはいい気分だろうが、負けて頭を打たれる家来たちはたまったものではない。
そのうち家来たちは瘤(こぶ)だらけの頭になった。

どこの家中にも殿さまにもずけずけと意見・小言を言う、煙たがられた古参の爺さんがいるものだ。
この噂を聞きつけた元の家老で今は隠居の身の田中三太夫が殿さまをこらしめようと殿中にやって来る。
久々の登城の挨拶もそこそこに、三太夫は将棋の相手をと申し込む。
もちろん負けたら鉄扇で頭を打たれるルールは健在だ。

こんなうるさい爺さんとはやりたくはない殿さまだが、断ればまた何を言われるやらと勝負に応ずることとなった。
遠回りに将棋盤を取り囲んだ家来たちは、興味津々と勝負の行方を見守っている。
どちらが負けても鉄扇で頭を打たれるのだ。
こんな面白い余興は、瘤だらけの頭にされてしまったせめてもの慰めだ。

いざ開戦となるが、そこは口先も指し手も格段上手の三太夫爺さん、殿さまの得意技の「飛車のお飛び越し」が出ると、その飛車を投げ返して、「いやしくも盤上の軍師たる飛車たる者が、軍略・陣法に従わず、卑怯にも道なき所を飛び越して参るのは将棋の法、軍法にそむいております。斬り捨て御免のところ、刀の穢れ(けがれ)となるゆえ、情けによってお返し申した」、万事こんな調子でこてんぱんに殿様を負かしてしまった。

つかさず三太夫は殿様の鉄扇を取り上げ、さすが頭は打つわけにはいかず、膝をピシリと打った。
若い頃は一刀流の片手打ちが自慢だったというから、その痛いこと。
殿様は目から涙をポロポロと流しながら、

「その方たち、何を笑っておる!早く将棋盤を取り片付けい、焼き捨てい! 明日(みょうにち)から将棋を指す者には切腹を申し付けるぞ!」


落語用語解説

  • 待った – 将棋で一度指した手をやり直すこと。正式な対局では禁止されているが、この噺の殿様は当たり前のように使う。
  • 飛び越し – 飛車が敵の駒を飛び越えて移動すること。将棋のルールでは不可能な反則技。
  • 鉄扇(てっせん) – 鉄製の骨を持つ扇子。武士が護身用に携帯した。この噺では懲罰に使われる。
  • 田中三太夫 – 元家老で隠居の身。殿様にも物申せる古参の家臣として登場する典型的なキャラクター。
  • 一刀流 – 剣術の流派の一つ。三太夫が若い頃に習得したとされる。

よくある質問(FAQ)

Q: 殿様はなぜ将棋禁止を宣言したのですか?
A: 三太夫に負けて膝を打たれ、家来たちに笑われたことで激怒し、八つ当たりで将棋禁止を宣言しました。負け惜しみの極致として殿様の器の小ささを表しています。

Q: 三太夫が頭ではなく膝を打ったのはなぜですか?
A: 殿様の頭を打つのは不敬にあたるため、代わりに膝を打ちました。しかし一刀流の達人だった三太夫の一撃は相当痛かったようです。ギリギリの線を攻める老練さが光ります。

Q: この噺の教訓は何ですか?
A: 権力を笠に着た理不尽な振る舞いは、いずれ自分に返ってくるという勧善懲悪の教訓が込められています。江戸時代の身分制社会への風刺でもあります。

Q: 殿様の「お飛び越し」とはどんなルール違反ですか?
A: 将棋の飛車は縦横に何マスでも動けますが、途中に他の駒がある場合はそれを飛び越えることはできません。殿様はこのルールを無視して、桂馬のように敵の駒を飛び越えて取ってしまうのです。

Q: 「殿様噺」にはほかにどんな演目がありますか?
A: 「目黒のさんま」が最も有名です。殿様が庶民の食べ物を知らないことから起こる滑稽な話で、「将棋の殿様」と同じく権力者の無知や横暴を風刺する演目です。ほかに「後生鰻」「大名道具」なども殿様噺に分類されます。

名演者による口演

  • 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。殿様と三太夫の掛け合いを見事に演じ、この演目の決定版とされる口演を残しました。
  • 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。殿様の横暴さを品良く描きました。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 将棋の場面を臨場感たっぷりに演じました。
  • 柳家小三治 – 人間国宝。三太夫の老練さを丁寧に描き込み、殿様との対比を際立たせた口演で評価されました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「将棋の殿様」は、横暴な権力者が自らの行いによって痛い目に遭う勧善懲悪をテーマにした落語です。殿様の「待った」「飛び越し」「取り払い」というルール破りは、権力を笠に着た理不尽な振る舞いの象徴として描かれています。

元家老の田中三太夫が、殿様の卑怯な手を「軍法に背く」と論破して勝利する場面は痛快です。

最後の将棋禁止令は、負け惜しみと八つ当たりの極致として、殿様の器の小ささを象徴的に表現しています。

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