植物小咄四題
3行でわかるあらすじ
植物をテーマにした4つの小咄で、どれも植物の名前や特徴を使った言葉遊びのオチで締められる。
七草の風習とつまみ食いのオチ、ソテツをワサビと間違える江戸っ子のオチなどが含まれる。
笑いの中に江戸時代の風俗や地域性を反映した軽妙な小咄集となっている。
10行でわかるあらすじとオチ
《七草》では、七草を刻む際の「オテテテ」という掛け声を背景に、つまみ食い好きの太夫が登場する。
太夫がつまみ食いで魚の骨をのどに詰まらせ、苦しんで「オテテテ」と声を上げるオチ。
《妙国寺のソテツ》では、江戸っ子が上方見物で堺の大きなソテツを見る。
地元の人が「こんなソテツは江戸にもないでしょう」と言うと、江戸っ子が「ソテツ?俺はワサビかと思った」と答えるオチ。
《茄子の夢》では、大げさに言う男が大きな茄子の夢を見たと話す。
どのくらい大きかと聞かれた男が「闇の夜にヘタつけたようだった」と答えるオチ。
《長芋》では、江戸っ子が大名行列かと思ったら将軍への長芋の献上品だった。
土地の人が「仕方ない、長い物には巻かれろ」と言うオチで、長芋とことわざを掛けている。
どれも植物の名前や特徴を使った絶妙な言葉遊びで構成されている。
解説
「植物小咄四題」は、植物をテーマにした4つの短い小咄を集めた作品で、どれも植物の名前や特徴を使った言葉遊びでオチを付けています。このような小咄集は落語の中でも「こ咄」と呼ばれるジャンルで、簡潔な構成の中に機知とユーモアを詰め込んだものです。
特に「七草」の小咄は、江戸時代の実際の風俗を背景にしており、七草を刻む際の呪文「オテテテ」と、つまみ食いで苦しむ際のうめき声を掛けた高度な言葉遊びとなっています。「妙国寺のソテツ」では、江戸っ子の無骨さと上方との文化の違いをユーモアに織り込んでいます。
「茄子の夢」は、大きさを表現するために「闇の夜にヘタつけたよう」という絶妙な比喩を使い、聴手に具体的なイメージを描かせる手法が秀逸です。「長芋」の小咄は、「長い物には巻かれろ」ということわざと長芋(長い芋)を掛けたダブルミーニングのオチで、落語の言葉遊びの精巧さを示しています。
あらすじ
《七草》 昔は七草の日に、七草をまな板の乗せて、「ななぐさ、なずな、唐土の鳥が、日本の土地に渡らぬ先に、トントンパタリ、トンパタリ・・・」と節をつけ拍子を取って、包丁でトントンと刻む。
それに合わせて、家内一同が「オテテテ・・・」と唱える風習があったという。
大陸から疫病が運ばれて来ると思われていたのだろうか。
新町の七越太夫はなぜかつまみ食いだ大好きというか趣味。
ある日、客が横を向いている隙に、ちょこっと魴鮄(ほうぼう)の身を食べたところが、小骨が喉に刺さって、「オテテテ・・・」
《妙国寺の蘇鉄》 上方見物に来た江戸っ子、京都を回って「寺ばかりで抹香臭くって、青物ばっかし食わせやがって、三日も辛抱できやしねえや」、大坂の道頓堀へ行って「猿若町の芝居に比べたら、こんなもん・・・どれもこれも将軍様のお膝元にはかなわねえや」、何やかやとそれでも堺までやって来て、妙国寺の蘇鉄を見て「なるほどこいつはでけえや」、「こんな蘇鉄は江戸にもおまへんやろ」、
江戸っ子 「ソテツ? 俺はワサビかと思った」
妙国寺のソテツ
《茄子の夢》 なんでも大げさに言う男が、「わて、ゆんべどえらい大きな茄子の夢を見たんや」、「どんくらい大きかったんや?」、「闇の晩にヘタつけたようやった」
《長芋》 江戸っ子の二人連れが、西新井大師にお参りに向かう途中で千住の先まで来ると、「下にいろ、下にいろ」の声。
大名行列かと思って頭を下げていると、行列はすぐに通り過ぎてしまった。
隣にいる土地の人に、
江戸っ子 「今のは大名行列じゃないんですかい?」
土地の人 「あれは将軍さまへ献上される長芋を入れた長持だあね」
江戸っ子 「なんでえ、芋かい、馬鹿馬鹿しいじゃねえか」
土地の人 「いんや、仕方ねえや、長芋(長い物)には巻かれろだ」
落語用語解説
- 小咄(こばなし) – 短い笑い話で、落語の中でも簡潔な構成のジャンル。この作品のように複数集めて演じることも多い。
- 七草 – 正月七日に食べる七草粥の材料。せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。
- 妙国寺のソテツ – 堺市にある妙國寺の有名な大ソテツ。織田信長も鳴き声を恐れたという伝説がある。
- 長持(ながもち) – 衣類や調度品を入れて運ぶ長方形の箱。棒を通して担ぐ。
よくある質問(FAQ)
Q: 「七草」の「オテテテ」というオチの意味は何ですか?
A: 七草を刻む際の掛け声「オテテテ」と、魚の骨が喉に刺さって苦しむ声「オテテテ」を掛けた言葉遊びです。
Q: 江戸っ子がソテツをワサビと間違えたのはなぜですか?
A: ソテツの葉がとげとげしていることと、江戸っ子が上方のものを何でもけなしたがる性格を組み合わせた笑いです。
Q: 「長い物には巻かれろ」というオチの意味は何ですか?
A: 「長い物には巻かれろ」という諺と「長芋」(長い芋)を掛けた言葉遊びです。大名行列のような権力者には逆らわないほうがいいという意味も込められています。
名演者による口演
- 桂文枝(五代目) – 上方の名人。各小咄を軽妙に演じました。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。江戸っ子の小咄を得意としました。
- 桂米朝(三代目) – 人間国宝。植物にまつわる言葉遊びを品良く演じました。
関連する落語演目
同じく「言葉遊び・ダジャレ」がテーマの古典落語


小咄集・短い落語


江戸っ子がテーマの古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「植物小咄四題」は、植物をテーマにした4つの短い笑い話を集めた作品です。どれも植物の名前や特徴を使った言葉遊びでオチを付けており、落語の機知とユーモアを凝縮した構成になっています。
七草の「オテテテ」、ソテツとワサビの取り違え、闇夜に茄子のヘタなど、シンプルながら発想の妙が光る小咄ばかりです。
「長い物には巻かれろ」の長芋は、諺と植物を見事に結び付けた言葉遊びの傑作です。


