素人鰻
3行でわかるあらすじ
元旗本の武士が神田川の金という鰻職人と鰻屋を開業するが、金さんは酒癖が悪く祝い酒で暴れて吉原通い。
ついに金さんが帰らなくなり、困った主人が自分で鰻をさばこうとするが鰻が捕まらない。
鰻を追いかけている主人に女房が「どこへ行くの?」と聞くと「前に回って鰻に聞いてくれ」と答える。
10行でわかるあらすじとオチ
元旗本の武士が汁粉屋をやろうと考えていたところ、贔屓にしていた神田川の金という鰻職人に出会う。
金さんの勧めで鰻屋を開業することにし、金さんは腕がいいが酒癖が悪いため酒を断って店を手伝うと約束。
開店日に主人の友達が祝い酒を金さんに飲ませると、だんだん悪い酒癖が出て暴れて店を飛び出してしまう。
金さんは吉原から付き馬を引いて帰ってくるが、昨日のことは覚えていないという。
主人が黙って遊び代を払ってやると、今度は金さんは酒を飲まず一生懸命働いて店も順調になる。
ある日、主人が閉店後に酒を出すが金さんは飲まずに寝てしまう。
しかし夜中に家の酒を盗み飲みして、また悪口雑言の末に店を飛び出してしまう。
これが続いて、ついに金さんは帰って来なくなってしまう。
困った主人は自分で鰻をさばこうとするが、鰻が捕まらずに追いかけ回すことになる。
女房が「どこへ行くの?」と声をかけると、主人は「どこへ行くか分かるか。前に回って鰻に聞いてくれ」と答える。
解説
素人鰻は、明治維新後の士族の商法をテーマにした滑稽噺です。
「士族の商法」とは、武士が慣れない商売に手を出して失敗することを指す言葉で、この噺はその典型例を描いています。
主人公の元旗本は商売の素人で、頼みの職人・神田川の金の酒癖の悪さに振り回されます。
金さんの「腕はいいが酒癖が悪い」という設定は、江戸時代の職人気質を表現したもので、技術は優秀だが人格に問題があるという職人の典型的なパターンです。
オチの「前に回って鰻に聞いてくれ」は、鰻を追いかけ回している主人の混乱ぶりを表現した愉快な落としで、商売に不慣れな武士の右往左往ぶりを象徴しています。
この噺は、時代の変化についていけない武士階級の悲哀を、ユーモアを交えて描いた作品でもあります。
あらすじ
元旗本の武士が汁粉屋をやろうと店を探していると「神田川の金」という、贔屓(ひいき)にしていた鰻さきの職人に出会う。
金さんの勧めで鰻屋を開業することにした。
士族の商法というやつだ。
腕がいいが、酒癖の悪い金さんは酒を断って店を手伝うという。
開店の日に祝いの酒だと主人の友達が金さんに飲ませたところ、だんだん悪い酒癖が出てきて暴れ出し、店を飛び出してしまう。
職人がいなくなって困っていると、金さんは吉原から付き馬を引いて帰ってきた。
昨日のことは、何も覚えていないという。
黙って遊び代を払ってやると、今度は金さんは酒を飲まず一生懸命働きだし、腕はいいので店も順調になる。
主人はすっかり喜び、ある日閉店の後、酒を出してやるが飲まないで寝てしまう。
ところが夜中に家の酒を盗み飲みして、またもや悪口雑言の末、店を飛び出してしまう。
次の日も同じだ。
仏の顔も三度やらでもう帰って来ない。
困った主人は仕方なく自分で鰻をさばこうとし、捕まえにかかるが捕まらない。
糠(ぬか)をかけたりしてやっと一匹捕まりかかるが指の間からぬるぬると逃げて行く。
なおも鰻を追って行く主人。
それを見て女房がどこへ行くのかと声をかける。
主人 「どこへ行くか分かるか。前に回って鰻に聞いてくれ」
落語用語解説
- 士族の商法 – 明治維新後、武士が慣れない商売を始めて失敗することを指す言葉。この噺の主人公の元旗本がまさにその典型です。
- 神田川の金 – 腕のいい鰻さきの職人。「神田川」は鰻屋の名前として有名で、鰻職人の代名詞的存在です。
- 付き馬 – 遊郭で遊んだ客が支払いをせずに帰ろうとした時に、店の者が付いて行って取り立てること。
- 鰻さき – 鰻を捌く技術、またはその職人のこと。「さく」は「裂く」の意味です。
- 糠(ぬか) – 米糠のこと。滑りやすい鰻を捕まえるために使います。
よくある質問(FAQ)
Q: 「前に回って鰻に聞いてくれ」というオチの意味は何ですか?
A: 鰻を追いかけ回している主人が、女房に「どこへ行くの?」と聞かれて、「自分でも分からないから鰻に聞いてくれ」という混乱ぶりを表現しています。商売に不慣れな武士の右往左往を象徴しています。
Q: なぜ金さんは酒を飲むと吉原に行ってしまうのですか?
A: 江戸時代の職人気質を表現しています。腕は良いが酒癖が悪く、酔うと放蕩に走るという職人の典型的なパターンです。
Q: この噺は明治時代の設定ですか?
A: はい、「士族の商法」という言葉が使われていることから、明治維新後の設定です。武士が商売を始めた時代背景を反映しています。
名演者による口演
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。素人の主人と職人の金さんの対比を見事に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。士族の商法の悲哀をユーモラスに表現しました。
- 桂文楽(八代目) – 鰻を追いかける場面を臨場感たっぷりに演じました。
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この噺の魅力と現代への示唆
「素人鰻」は、明治維新後の士族の商法をテーマにした滑稽噺です。武士が慣れない商売に手を出して右往左往する様子を、ユーモラスに描いています。
金さんの「腕はいいが酒癖が悪い」という設定は、江戸時代の職人気質を表現したもので、技術と人格のアンバランスが笑いを誘います。
最後の「前に回って鰻に聞いてくれ」は、商売に不慣れな主人の混乱ぶりを象徴した愉快なオチです。


