城木屋
3行でわかるあらすじ
醜男の番頭丈八が美人娘お駒に恋をして艶書を書くが母親にバレて大騒動になる。
百両を盗んで逃走後、お駒を殺そうとして失敗し、証拠を落として捕まる。
大岡越前の取り調べで東海道五十三次の宿場名を使った洒落た言い訳をするが「不忠もの」と一刀両断される。
10行でわかるあらすじとオチ
日本橋新材木町の城木屋の娘お駒は絶世の美人で評判娘。
醜男の番頭丈八がお駒に恋をして艶書を着物の袖に忍ばせる。
母親のお常に艶書が見つかり大騒動となり、丈八は店の百両を盗んで逐電。
しばらくして戻ってきた丈八は、お駒の婿取りを聞いて殺意を抱く。
お駒の寝所に忍び込み殺そうとするが失敗、泥棒と騒がれて逃走。
慌てて煙草入れと恋の歌を書いた短冊を落として証拠となる。
大岡越前の取り調べで事の始まりを問われ、棒使いや独楽回しの口上を述べる。
「駒への恋慕の始まり」を問われると東海道五十三次の宿場名を駆使した洒落た口上で答える。
宿場名に恋心を込めた巧妙な言い回しで自分の心境を表現する。
最後に駿河府中生まれと白状すると、越前は「不忠(府中)もの」と洒落でオチをつける。
解説
「城木屋」は、「評判娘」「伊勢のつぼやの煙草入れ」「東海道五十三次」の三つの題を組み合わせた三題噺の名作です。三題噺とは、客席から出されたお題を巧妙に組み合わせて一つの話にまとめる高度な技術を要する落語の形式です。
この噺の最大の見どころは、丈八が大岡越前の前で披露する東海道五十三次の宿場名を使った口上です。品川から始まり駿河まで、各宿場の名前を巧みに恋心に絡めて語る言葉遊びは、落語の醍醐味である洒落と言葉の妙技が存分に発揮された名場面です。
オチの「不忠(府中)もの」は、駿河府中(現在の静岡市)と「不忠者」をかけた地口オチで、大岡越前らしい機知に富んだ裁きを表現しています。醜男の一途な恋を滑稽に描きながらも、最後は名奉行の洒落で締めるという、江戸落語の粋な構成が光る作品です。
あらすじ
この噺は「評判娘」、「伊勢のつぼやの煙草入れ」、「東海道五十三次」の三題噺です。
日本橋新材木町の城木屋の娘、お駒は非の打ちようのない美人の評判娘。
それに引き換え店の番頭の丈八は四十を越えた醜男。
この丈八がなぜかお駒に惚れてしまった。
色目を使ったりするが、お駒はまったくの無関心、無頓着。
無愛想だ。
ついに丈八は艶書をお駒の着物のたもとへ忍ばせるが、お駒の着物をたたんでいた母親のお常に艶書が見つかってしまう。
お常からきびしく叱られ、この噂が店中にも広がり丈八は店にいたたまれず、店の百両を持ち出し上方の方へ逐電してしまう。
丈八はしばらくして上方から府中(駿府)、江戸へと戻って来る。
お駒が近々婿を取ると聞き、いっそお駒を殺して自分も死のうとお駒の寝所に忍び込む。
あいくちでお駒の胸元を突こうとしたがお駒が寝返りをうち狙いがそれて気づかれ、泥棒と騒がれて逃げ出す。
あわてて愛用の狼の上あごの根付けのついた伊勢のつぼやの煙草入れとお駒への思いの歌を書いた短冊を落としてしまい、それから足がついて召し捕られてしまう。
丈八を取り調べるのは名奉行の大岡越前だ。
越前から事の始まりはと聞かれ、
丈八 「そもそも国の始まりは大和の国。
郡(こおり)の始まりは宇陀の郡。
島の始まりは淡路島。
寺の始まりは橘寺。
棒の始まりは鹿島、香取。香取とは香(にお)い取る、棒は木辺に奉ると書く」と棒使いの口上を並べ始める。
越前 「控えろ、そうではない。駒の始まりを申せという」
丈八 「そもそもコマ(独楽)の始まりは菅相丞(かんしょうじょう)菅原道真公、筑紫博多の島へご流罪のおり・・・・何ぞよき慰みやなきやとお尋ね・・・梅の古木を切り刻みこれに金の心棒をつけ、コマと名づけて差し上ぐる。・・・・七日七夜回ったとあるが手前のコマは左様には回らん。
明けの六つから暮れの六つまでは回る。これを名づけて日暮しのコマ・・・・」と、今度は松井源水独楽(コマ)回しの口上を言い立てる。
越前 「控えろ、そうではない。駒に恋慕の始まりを申せ」と、「娘子を駿河細工と思えども駕篭の鳥にて手出しならねば」と丈八の書いた短冊を突きつける。
丈八 「白状申し上げます。
もとはと言えば東海道五十三次から出ましたことでございます。はじめお駒さんの色品川に迷い、川崎ざきの評判にもあんな女子を神奈(かんな)川に持ったなら、さぞ程もよし保土ヶ谷と、戸塚まいてくどいても首を横に藤沢の、平塚の間も忘れかね、その内大磯、こいそとお駒さんの婿相談、どうぞ小田原になればよいと、箱根の山にも夢にも三島、たとえ沼津、食わずにおりましても原は吉原、いまいましいと蒲原立てましても、口には由比かね、寝つ興津、江尻もじりいたしておりましたわけでございます」
越前 「東海道を巨細(こさい)にわきまえおる奴。してその方の生れは」
丈八 「駿河の御城下で」
越前 「不忠(府中)ものめ」
落語用語解説
- 三題噺 – 客席から出された三つのお題を組み合わせて一つの話にする落語の形式。この噺は「評判娘」「伊勢のつぼやの煙草入れ」「東海道五十三次」を組み合わせています。
- 艶書 – 恋文、ラブレターのこと。丈八がお駒に送った恋心を綴った手紙です。
- 大岡越前 – 江戸時代の名奉行・大岡忠相のこと。公正な裁きで知られ、落語や講談で人気の人物です。
- 地口オチ – 言葉の音が似ていることを利用したオチの技法。「府中」と「不忠」を掛けています。
- 逐電(ちくでん) – 逃亡すること。丈八が店の金を持って逃げたことを表します。
よくある質問(FAQ)
Q: 「不忠もの」というオチの意味は何ですか?
A: 丈八が駿河の府中(現在の静岡市)出身と答えたことに対し、「府中」と「不忠」(忠義に欠ける者)を掛けた言葉遊びです。店の金を盗んで主人を殺そうとした不忠を皮肉っています。
Q: 東海道五十三次の口上は実際に全ての宿場が出てきますか?
A: いいえ、品川から駿河までの一部の宿場名を使った口上です。各宿場の名前を恋心に絡めた言葉遊びになっています。
Q: 「伊勢のつぼやの煙草入れ」とは何ですか?
A: 江戸時代に有名だった伊勢のつぼや製の煙草入れのこと。丈八が落として証拠となった品物として登場します。
名演者による口演
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。東海道五十三次の口上を格調高く演じました。
- 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙な語り口で丈八と大岡越前のやり取りを表現しました。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。三題噺の構成の巧みさを活かした名演で知られました。
関連する落語演目
同じく「大岡政談」がテーマの古典落語


言葉遊び・地口オチの古典落語


三題噺の名作


この噺の魅力と現代への示唆
「城木屋」は、三つのお題を巧みに組み合わせた三題噺の名作です。醜男の一途な恋を滑稽に描きながら、東海道五十三次の宿場名を使った洒落た口上で笑いを誘います。
丈八の口上は、落語の醍醐味である言葉遊びの技法が存分に発揮された名場面です。各宿場の名前を恋心に絡めた表現は、江戸の粋を感じさせます。
最後の「不忠(府中)もの」は、大岡越前らしい機知に富んだ裁きを表現した秀逸なオチです。


