七面堂
3行でわかるあらすじ
七面堂に忍び込んだ泥棒が捕まると、身体が固まって動かなくなり、堂守が拝んで治すと七面堂のご利益として噂が広まる。
10年後、七面堂は大繁盛して立派な寺になり、同じ泥棒が住職から三千両を要求する。
実は最初の身体硬直は泥棒の芝居で、寺を繁盛させたのは自分の功績だと明かし「七面倒(堂)な」で落とす。
10行でわかるあらすじとオチ
田舎の荒れた七面堂に泥棒が忍び込むが金目の物がなく、香炉と木魚を盗もうとして堂守に見つかる。
村人に取り押さえられた泥棒は「病気の母に美味い物を」と定番の言い訳をする。
許されて立ち上がろうとすると身体が固まって動かなくなり、村人は七面様の祟りだと騒ぐ。
堂守らが七面堂で「南無妙法蓮華経」と拝むと、泥棒の身体が動くようになる。
この話が村中に広まり、七面堂は厄除けのご利益があると遠方からも参拝者が押し寄せる。
10年後、七面堂は立派な大きなお堂になり、堂守は住職となって千両箱を抱えて豪遊している。
ある晩、同じ泥棒が住職から三千両を要求し、寺が繁盛したのは自分の功績だと主張する。
実は最初の身体硬直は芝居で、ご利益の噂を作り出して10年間待っていたと明かす。
住職と泥棒が金額で揉めていると、寺男が「そんな七面倒(堂)な」と言うオチ。
別のオチでは泥棒が「また身体が固まった」と芝居を打ち、住職が「また10年後に一万両か」と嘆く。
解説
「七面堂」は、詐欺師的な泥棒の長期計画を描いた古典落語の傑作です。
前半は一般的な泥棒話に見えますが、後半で実は全てが泥棒の芝居だったという大どんでん返しが待っています。
身体が固まるという演技一つで寺を大繁盛させ、10年間待ってから収穫に来るという気の長い計画は、落語の中でも珍しい設定です。
オチは二つ用意されており、一つは「七面倒(堂)な」という地口落ち、もう一つは再び芝居を打って次の10年を示唆する循環オチです。
泥棒の狡猾さと住職の欲深さ、そして民衆の迷信深さを巧みに風刺した作品となっています。
あらすじ
ある田舎の村の七面堂に忍び込んだ泥棒。
堂内は荒れていて蜘蛛の巣が張って金目の物などはない有り様だ。
仕方なく香炉と木魚を風呂敷に包んで逃げ出すところを堂守に見つかって、追いかけられる。
村人も加わってついには取り押さえられた泥棒、「つい出来心で・・・病気で寝たきりの母親に美味い物が食べさせたくて・・・」なんて陳腐な決まり文句を言っている。
もう二度とこの村に入るなと許された泥棒、立ち上がろうとすると身体が固まって動かない。
堂守と村人たちは七面様の祟りだと七面堂に泥棒を抱えて行って、「南無妙法蓮華経・・・・」と拝むと、あら不思議泥棒の身体は動くようになった。
さあ、この話は村中に広まって、七面堂は厄除けにご利益があり霊験あらたかだと、我も我もとお参りに訪れる。
噂は噂を呼んで近郷近在、遠方からも参拝者がゾロゾロ。
七面堂はお賽銭と厄除けのお札で大繁盛。
十年経った今では大きなお堂が新築され、堂守も住職となってふんぞり返り、千両箱を三つ、四つ置いて妾を囲って豪遊している。
ある晩、泥棒が入った。
泥棒 「三千両出せ」
住職 「おい、お前は十年前に入った泥棒だな。あの時、わたしが拝んでやって助かったのに何てことするのだ」
泥棒 「冗談言うな。
こんな立派な寺になって金も貯まったのは俺のお陰だ。三千両出せ!」
住職 「お前のお陰?何だそれは?」
泥棒 「あの時、俺の身体が動かなくなったのは芝居を打ったのよ。
お堂で拝んでもらって動くようになったと思い込ませて、ご利益、霊験あらたかな寺だという噂を流させたのよ。
十年経って立派な寺になるのを待ってやって来たんだ。三千両だせ」
住職 「気の長い泥棒だ。千両出すから持って行け」
泥棒 「駄目だ、三千両だ」、「千両だ」、「三千両だ」と揉めていると、
寺男 「そんな七面倒(堂)な」
もう一つのオチ、
泥棒 「七面堂のバチが当たって、また身体が固まってしまった」
住職 「この野郎、また十年経って来て一万両か」
どうぞ、お好きな方を・・・。
落語用語解説
- 七面堂 – 七面大明神を祀るお堂。日蓮宗系の神様で、この噺では田舎の荒れた小さなお堂として描かれています。
- 南無妙法蓮華経 – 日蓮宗の題目。七面大明神は日蓮宗の守護神なので、この題目で拝んでいます。
- 地口落ち – 同音異義語や似た音の言葉を使った言葉遊びのオチ。「七面倒」と「七面堂」を掛けています。
- 堂守 – お堂の管理人。この噺では後に住職となって大出世します。
- 香炉・木魚 – 仏教の法具。金目の物がない荒れた堂で泥棒が仕方なく盗もうとした物です。
よくある質問(FAQ)
Q: 泥棒の芝居はなぜ10年間も待ったのですか?
A: 泥棒は「ご利益がある」という噂が広まり、寺が繁盛して金が貯まるまで待っていました。気の長い詐欺計画として、10年という時間は説得力のある設定になっています。
Q: なぜ2つのオチがあるのですか?
A: 一つは「七面倒(堂)な」という地口落ち、もう一つは泥棒が再び芝居を打って次の10年を示唆する循環オチです。演者によって好みで使い分けられています。
Q: 身体が固まる芝居で本当に寺が繁盛するものですか?
A: 江戸時代の庶民は霊験やご利益を強く信じていました。噂が噂を呼んで遠方からも参拝者が来るという設定は、当時の宗教観を反映しています。
名演者による口演
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。泥棒の狡猾さと住職の欲深さを対比させた名演で知られました。
- 柳家小三治 – 人間国宝。泥棒と住職のやり取りを軽妙に演じました。
- 古今亭志ん朝(三代目) – 地口落ちの「七面倒な」を絶妙な間で決めました。
関連する落語演目
同じく「泥棒」が登場する古典落語


詐欺・騙しがテーマの古典落語


言葉遊び・地口落ちが秀逸な古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「七面堂」は、長期計画の詐欺を描いた珍しい落語です。泥棒が身体硬直の芝居一つで寺を繁盛させ、10年後に収穫に来るという気の長い計画は、現代の詐欺にも通じる巧妙さがあります。
この噺が風刺しているのは、民衆の迷信深さと宗教者の欲深さです。ご利益の噂を簡単に信じる庶民と、それに乗じて金を貯め込む住職、そしてその両方を利用する泥棒という構図は、人間の弱さを鋭く描いています。
2つのオチが用意されているのもこの噺の特徴で、演者の好みや客席の反応によって使い分けられています。


