七段目 落語|忠臣蔵・一力茶屋の場面を演じる落語
七段目(しちだんめ) は、忠臣蔵の一力茶屋の場面を演じる古典落語。芝居好きの若旦那と小僧が仮名手本忠臣蔵七段目『祇園一力茶屋の場』を演じて階段から転落し、「てっぺんから落ちたか」「いえ、七段目」という言葉遊びオチが秀逸です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演目名 | 七段目(しちだんめ) |
| ジャンル | 芝居噺・滑稽噺 |
| オチ | 「てっぺんから落ちたか」「いえ、七段目」 |
| 元ネタ | 仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場 |
| 主要人物 | 孝太郎(若旦那)、定吉(小僧) |
3行でわかるあらすじ
芝居好きの大店の若旦那・孝太郎と小僧・定吉が二階で忚臣蔵七段目を演じる。
定吉がおかる役、孝太郎が平右衛門役で、本物の刀を使って演技中定吉が階段から落ちる。
大旦那の「てっぺんから落ちたか」に「いえ、七段目」と答える言葉遊びのオチ。
10行でわかるあらすじとオチ
大店の若旦那・孝太郎は芝居に失中し、店の使いに行っても芝居のまねばかりしている。
大旦那が小言を言うが、孝太郎は芝居気取りで受け流し、反省の様子は全くない。
怒った大旦那に二階に追いやられるが、孝太郎は二階でも芝居のまねを続ける。
小僧の定吉も大の芝居マニアで、二人は二階で意気投合する。
定吉は女装しておかる役、孝太郎は平右衛門役で忚臣蔵七段目を演じる。
隣から三味線の音が聞こえ、佳境に入った孝太郎は本物の刀を抜いて定吉を追い回す。
逃げ回るうちに定吉は足を滑らせ、階段から転がり落ちる。
気がついた定吉は「私には勘平という夫のある身」とまだ芝居を続けている。
大旦那が「てっぺんから落ちたか」と聞くと、定吉が「いえ、七段目」と答える。
オチ:「てっぺん(頭頂部)から落ちたか」と「七段目から落ちた」のダブルミーニング。
解説
「七段目」は、歌舞伎の代表作「仮名手本忚臣蔵」の七段目『祇園一力茶屋の場』を素材にした落語です。
この場面は、平右衛門が妹おかるを手にかけようとする緊迫した場面で、江戸時代から人気の高い演目でした。
落語の面白さは、「てっぺんから落ちたか」という大旦那の問いかけが、「頭頂部から落ちたか」という意味なのに、定吉が「七段目から落ちた」と解釈して答えるというダブルミーニングの言葉遊びにあります。
また、定吉が気を失った後も芝居を続けている姿も、芝居マニアの筋金入りぶりを表現しており、江戸時代の市民の芝居好きをユーモラスに描いた作品です。
あらすじ
芝居に凝った大店の若旦那の孝太郎。
店の使いに行ったきり帰って来ない。
やっと芝居のまねをしながら帰って来た孝太郎に大旦那は小言をいうが、暖簾に腕押し、馬耳東風、柳に風、蛙の面に・・・で、芝居気取りで受け流し、反省の様子は全くない。
かんかんに怒った大旦那は孝太郎の頭をポカリ、孝太郎も親父に掴みかかろうとした所で番頭が割って入るいつものパターンだ。
孝太郎は静かにしていろと二階に追いやられる。
階段を芝居気取りで二階に上った孝太郎は静かにしているどころか、すぐに芝居のまねに熱中し始め、そのやかましいこと。
大旦那は小僧の定吉に静かにするように二階へやるが、定吉も、3度の飯を4度食っても直らない大の芝居マニアだ。2人は二階で意気投合、定吉は孝太郎の妹の着物を着て手拭でほおかむりしたおかる。
幸太郎は平右衛門で、床の間の本物の刀を腰に差し、七段目の「祇園一力茶屋の場」の芝居を始める。
ちょうど隣から稽古屋の師匠の爪弾く三味線が音が聞こえてきて、舞台効果は満点だ。
佳境に入ると若旦那は夢中になり、抜かないと約束した刀を抜いて振り回し、「妹、その命、我がもらった」と定吉のおかるを追い回す。
逃げ回るうちに定吉は足を滑らせ階段から転がり落ちる。
水を飲まされて気がついた定吉は、「私には勘平という夫のある身」なんてまだ芝居の続きをやっている。
大旦那 「お前、うちの馬鹿と二階で芝居をして、てっぺんから落ちたか」
定吉 「いえ、七段目」
落語用語解説
- 仮名手本忠臣蔵 – 赤穂浪士の討ち入りを題材にした歌舞伎の代表作。「仮名手本」は四十七士を仮名四十七文字に掛けています。
- 七段目 – 忠臣蔵の第七段『祇園一力茶屋の場』。大星由良之助(大石内蔵助がモデル)が遊興にふける場面です。
- おかる – 七段目のヒロイン。夫・早野勘平のために身を売って遊女となった女性です。
- 平右衛門 – おかるの兄。七段目では妹を手にかけようとする緊迫した場面があります。
- てっぺん – 頭頂部のこと。「てっぺんから落ちた」は頭から落ちたという意味と、階段の一番上から落ちたという二重の意味を持ちます。
よくある質問(FAQ)
Q: 「てっぺんから落ちたか」「いえ、七段目」のオチの意味は?
A: 大旦那は「頭から(てっぺんから)落ちたか」と聞いていますが、定吉は「階段の七段目から落ちた」と解釈して答えています。忠臣蔵の「七段目」と階段の「七段目」を掛けたダブルミーニングです。
Q: なぜ若旦那と小僧は芝居に夢中になるのですか?
A: 江戸時代、歌舞伎は庶民の最大の娯楽でした。特に忠臣蔵は人気演目で、台詞や所作を真似ることが流行していました。芝居好きは「三度の飯より好き」と表現されるほどでした。
Q: 本物の刀を使う場面は危険ではないですか?
A: はい、非常に危険です。この噺では若旦那が約束を破って本物の刀を抜いてしまうことで、定吉が階段から落ちる事態になります。芝居への没入が招く危険を風刺しています。
名演者による口演
- 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙洒脱な語り口で、若旦那と定吉の芝居好きを愛嬌たっぷりに演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。歌舞伎の知識を活かし、七段目の場面を本格的に演じました。
- 柳家小三治 – 人間国宝。大旦那の呆れた様子と定吉の筋金入りの芝居好きを対比させた名演。
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この噺の魅力と現代への示唆
「七段目」は、江戸時代の芝居熱を活写した傑作です。若旦那も小僧も芝居に夢中になり、仕事そっちのけで演じ続ける姿は、現代のアニメやゲームに熱中する若者の姿と重なります。
この噺の見どころは、気を失った定吉がまだ芝居を続けているシーンです。「私には勘平という夫のある身」という台詞は、芝居への没入度の深さを表しており、聴衆の笑いを誘います。
オチの「てっぺんから」と「七段目」のダブルミーニングは、落語らしい言葉遊びの醍醐味です。忠臣蔵を知っていればより楽しめますが、知らなくても十分に笑える構成になっています。








