狸の鯉
3行でわかるあらすじ
八五郎に子どもからいじめられていた子狸を助けられ、恩返しのため鯉に化けて兄貴分への出産祝いの品となる。
しかし兄貴分が鯉こくにしようと料理を始めると、狸は慌てて手を出して引っ掻き、薪を伝って窓から逃げ出す。
これを見た兄貴分が「あぁ、あれが本当の鯉の薪(たき・滝)登りだ」と言って言葉遊びのオチとなる。
10行でわかるあらすじとオチ
八五郎が昼間に藪寺で子どもにいじめられている子狸を助けてやる。
夜になると子狸が八五郎のところに礼に来て、親狸から恩返しをしないのは人間にも劣ると諭されたと話す。
子狸は恩返しをして帰らなければ勘当になると言い、何にでも化けられると申し出る。
八五郎は兄貴分の奥さんが出産したが乳の出が悪いと聞き、鯉に化けてもらって祝いに行くことにする。
子狸の化けた鯉は少し生暖かく所々に毛が残っているが、八五郎は兄貴分の家に持参する。
喜んだ兄貴分は早速鯉こくにして女房に食わせようと料理の支度を始める。
八五郎は用事があると言って狸を見捨てて慌てて帰ってしまう。
置き去りにされた狸は「まな板の鯉」はまっぴら御免と、出刃包丁で切られる寸前に手を出して引っ掻く。
狸は台所の土間に積んである薪を伝わって窓へと登って逃亡を図る。
兄貴分はこの様子を見て「あぁ、あれが本当の鯉の薪(たき・滝)登りだ」と言ってオチとなる。
解説
狸の鯉は、動物の恩返しをテーマにした古典落語で、心温まる人情と洒脱な言葉遊びが魅力の作品である。
子狸が恩返しのために鯉に化けるという設定は、日本の昔話でよく見られる動物報恩譚の要素を取り入れている。
オチの「鯉の薪(たき・滝)登りだ」は、薪の「たき」と滝の「たき」を掛けた秀逸な言葉遊びで、聴衆の予想を裏切る面白さがある。
登場人物の八五郎が狸を見捨てて逃げるという行動は、人間の身勝手さを軽妙に風刺している。
鯉こくは江戸時代の庶民料理として親しまれており、当時の食文化も垣間見える作品構成となっている。
この落語は動物と人間の交流、恩返しの美徳、そして最後の機転を利かせた脱出劇という多層的な面白さを持った名作である。
あらすじ
昼間、藪寺で子どもにいじめられている子狸を助けた八五郎の所へ子狸が礼に来る。
親狸から助けられた恩返しをしないのは人間も劣る、狸の道にももとることだと諭されて来たという。
子狸は恩返しをして帰らなければ勘当になる、何にでも化けられると言うので、鯉(コイ)に化けてもらう。
兄貴分のかみさんがお産をしたが、乳の出が悪いと言うので鯉を持って祝に行こうという算段だ。
子狸の化けた鯉はちょっと生暖かく、所々に毛が残っているが、まあいいだろうと、兄貴分の家に持って行く。
喜んだ兄貴分は早速、鯉こくにして女房に食わせると料理支度を始めた。
あわてた八五郎は用事があるから狸を見捨ててさっさと帰ってしまう。
置き去りにされた狸鯉は、「まな板の鯉」はまっぴら御免と、あわや出刃包丁から切られる寸前に手を出して引っ掻き逃亡開始だ。
台所の土間に積んである薪を伝わって窓へと登って行く。
兄貴分 「あぁ、あれが本当の"鯉の薪(たき・滝)登り"だ」
落語用語解説
- 鯉の滝登り – 鯉が滝を登って龍になるという故事。立身出世の象徴とされる。
- 鯉こく – 鯉を筒切りにして味噌で煮込んだ江戸時代の庶民料理。産後の女性に滋養があるとされた。
- まな板の鯉 – 覚悟を決めて運命に身を任せる様子を表す言葉。
- 恩返し – 受けた恩義に報いること。日本の昔話に多いテーマ。
- 藪寺 – 藪の中にある荒れた寺。人気のない場所の象徴。
- 勘当 – 親子の縁を切ること。狸の親子関係にも適用される設定。
よくある質問(FAQ)
Q: 「鯉の薪登り」というオチの意味は?
A: 狸が台所の薪(たき)を登って逃げる様子を、「鯉の滝(たき)登り」という故事にかけた言葉遊びです。音が同じ「たき」を掛けた洒落たオチです。
Q: なぜ八五郎は子狸を見捨てたのですか?
A: 兄貴分が鯉こくにしようとしたため、子狸が料理される危険を察して逃げ出しました。人間の身勝手さを表現した場面です。
Q: 鯉こくは本当に産後に良いのですか?
A: 江戸時代には鯉が滋養のある食材として知られ、産後の女性の乳の出を良くするとされていました。当時の食文化を反映した設定です。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。子狸の可愛らしさと八五郎の身勝手さを絶妙に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。鯉こくの料理場面の緊迫感と最後のオチの対比が見事でした。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。狸が薪を登る場面の臨場感が絶品でした。
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この噺の魅力と現代への示唆
「狸の鯉」は、動物の恩返しという心温まるテーマと、「鯉の薪登り」という洒脱な言葉遊びを組み合わせた古典落語の名作です。子狸が恩返しのために鯉に化けるという純真さと、八五郎が危険を察して見捨てて逃げるという人間の身勝手さの対比が面白さを生んでいます。
「まな板の鯉」という覚悟を決める表現が、実際に料理されそうになる場面に使われるのも皮肉が効いています。最後に薪を登って逃げる狸を「鯉の滝登り」に例えるオチは、落語の言葉遊びの醍醐味を存分に味わえる秀作です。


