スポンサーリンク

【古典落語】莨の火 あらすじ・オチ・解説 | 千両準備して待った結果がまさかの煙草借り!大富豪の粋な遊び心

スポンサーリンク
話芸の殿堂-古典落語-莨(たばこ)の火
スポンサーリンク
スポンサーリンク

莨(たばこ)の火

3行でわかるあらすじ

鴻池の大富豪が大阪の茶屋で大金をばらまく粋な遊びをして帰ってしまう。
茶屋の伊八が千両箱まで用意して富豪の再来店を待ち構える大作戦を実行。
待ちに待った富豪がやって来て「借りたいもの」を尋ねると「煙草の火が借りたい」とオチる。

10行でわかるあらすじとオチ

住吉神社前で身なりの良い老人が駕籠に乗り、大阪の茶屋「綿富」に向かう。
老人は駕籠賃から芸妓への祝儀まで全て茶屋に立て替えさせる謎の行動を取る。
五十両の立て替えを断られると、風呂敷包みから小判を出して倍額を返済。
残りの小判を座敷にばらまいて笑いながら帰ってしまう粋な遊びを見せつける。
伊八が後をつけると、正体は鴻池の大富豪「食の旦那」だと判明する。
門番から「五十両貸していれば千両箱の香々にしてくれた」と聞いて後悔。
翌年、伊八は大阪中の鰹節で屋台を作り、芸妓を従えて鴻池邸前で贈り物作戦。
食の旦那が「貸してくれと言ったものは何でも貸しておく」と約束してくれる。
茶屋では十両から千両箱まで用意して食の旦那の来店を待ち構える。
ついに現れた食の旦那の「借りたいもの」は「ちょっと、莨の火が借りたい」だった。

あらすじ

住吉神社の前で客待ちしている駕籠に、風呂敷包みを首に巻いた身なりのいい老人が乗る。
大阪のお茶屋で遊びたいと言うので駕籠屋は北の新地の綿富に案内する。

駕籠を下りた老人は綿富の若い衆の伊八に駕籠賃として帳場から一両立て替えさせ、さらに駕籠屋の親孝行用にと二両立て替えさせる。

座敷に上がった老人は祝儀にと、見習い十人に一両づつ十両、幇間衆に十五両、舞妓たちに二十両、芸妓衆に三十両を立て替えさせる。
さらに奉公人衆にと五十両を立て替えてくれと言う。
さすが帳場も初めての客にそんな大金を立て替えるわけにもいかず断る。

すると老人は風呂敷包を開け、中にぎっしりと詰まっていた小判をつかみ出し、今まで立て替えてもらった金の二倍を返し、残りは座敷にばらまいて大声で笑って、「ああ、久しぶりに面白かった」と、ぽいと帰ってしまった。

伊八はただ者ではなかろうと後をつけて行くと、今橋の鴻池の本宅に入って行った。
門番に聞くと、和泉の暴れ旦那の食(めし)さんだと言う。
門番は、「もし五十両立て替えていたら、"この御茶屋は肝っ玉の太い御茶屋や"と言って、今度旦さんが行ったときには、樽の中へお前を座らせて小判で埋めて、頭に千両箱を乗せて、おまえを千両箱の香々(こぉこ)にしたんや。 いっぺんしくじったら終いや」で伊八はしょんぼり、とぼとぼと店に戻った。

年が変わってもあきらめ切れない伊八は、大阪中の鰹節を買い集めて屋台を作り、鳴り物一式をこの上に乗せ北の芸妓衆を供に、北新地から天神橋、高麗橋、今橋へと練り歩き、 鴻池の本宅の前で伊八が屋台から飛び降り、 「綿富からお中元のおしるしでございます。ご笑覧いただきますれば、ありがたき幸せに存じ上げます」

すると二階の窓から首を出した食の旦那は、「今日はまた、結構な贈りもんありがとさんでした。二、三日経ったら、寄してもらいますがな、そのときは貸してくれと言うたもんは、何でも貸しておくれ」と、伊八の作戦は成功した。

さあ綿富では十両、二十両、三十両、 四十両、五十両。
千両箱まで用意して待っていると、三日ほど経って食の旦那が一人でひょっこりとやって来た。

食の旦那 「はい、ごめんなされや」

伊八 「お越しあそばせ!」

食の旦那 「今日は借りたいもんがあって 来ましたんじゃ」

伊八 「ちゃ~んと用意はで きております。今日は、ほいで、いかほどのお立て替えで?」

食の旦那 「ちょっと、莨(たばこ)の火が借りたい」

解説

「莨の火」は、大阪の豪商・鴻池家をモデルにした上方落語の代表作です。江戸時代の大阪商人の粋と余裕、そして期待と現実のギャップを巧妙に描いた傑作として知られています。

この噺の最大の魅力は、食の旦那の圧倒的な経済力と、それを背景にした粋な遊び心にあります。最初に茶屋で見せる立て替えから倍額返済、小判のばらまきという行動は、単なる金持ちの道楽ではなく、人を試し、楽しませる「粋」の体現です。特に「久しぶりに面白かった」という言葉からは、金では買えない人間的な面白さを求める心情が読み取れます。

伊八の必死な営業努力も見どころの一つです。鰹節の屋台に芸妓を従えた派手な練り歩きは、商人の知恵と執念を象徴する名場面といえるでしょう。千両箱まで用意して待ち構える周到さは、当時の商人気質をよく表現しています。

オチの「莨の火が借りたい」は、期待の大きさと結果の小ささの落差が生み出す笑いの典型です。千両箱を用意して待っていた伊八の落胆と、それを知りながら敢えて小さな頼み事をする食の旦那の茶目っ気が絶妙に組み合わさった、上方落語ならではの洒脱な結末となっています。

この噺は単なる笑い話を超えて、江戸時代大阪の商人文化、特に「粋」という美意識を現代に伝える貴重な文化的資料としての価値も持っています。金の力だけでなく、人を楽しませ、驚かせる心の余裕こそが真の豊かさであることを教えてくれる、深い味わいのある古典落語です。


落語用語解説

  • 莨(たばこ) – 煙草の漢字表記。江戸時代には嗜好品として広く普及していた。
  • 鴻池(こうのいけ) – 大阪の豪商。江戸時代最大の両替商で、全国に名を知られた大富豪。
  • 茶屋 – 芸妓を呼んで宴会ができる料亭。大阪では北新地が有名だった。
  • 北新地 – 大阪の花街。現在も高級料亭街として知られる。
  • 香々(こうこ) – 漬物のこと。「千両箱の香々」は小判の上に乗せて漬物のようにするという意味。
  • 幇間(ほうかん) – 宴席で客をもてなす男性の芸人。太鼓持ちとも呼ばれる。

よくある質問(FAQ)

Q: 「莨の火が借りたい」というオチの意味は?
A: 千両箱まで用意して待っていた伊八に対し、食の旦那が求めたのは煙草に火をつけてもらうだけという、期待と現実の落差を笑いにしたオチです。大富豪の茶目っ気を表現しています。

Q: 食の旦那はなぜ茶屋で大金をばらまいたのですか?
A: 金では買えない「面白さ」を求めた粋な遊びです。人を試し、驚かせることに喜びを感じる大富豪の余裕を表現しています。

Q: 伊八の鰹節屋台作戦は効果があったのですか?
A: 結果的には食の旦那を呼び戻すことに成功しましたが、期待したような大金の取引には至りませんでした。商人の努力と結果のギャップも笑いの要素です。

名演者による口演

  • 桂米朝(三代目) – 上方落語の重鎮。食の旦那の粋な振る舞いを品格たっぷりに演じました。
  • 桂小文枝(五代目文枝) – 昭和の名人。伊八の必死な営業努力を見事に表現しました。
  • 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の大御所。千両箱を用意する場面を豪快に演じました。

関連する落語演目

同じく「商人・茶屋」がテーマの古典落語

芝浜 落語のあらすじ・オチ「また夢になるといけねえ」意味を解説|泣ける名作
【人情噺の最高傑作】芝浜のあらすじとオチを5分で解説。五十両を「夢」と偽った妻の愛情。三年後の大晦日に明かされる真実と「また夢になるといけねえ」の感動オチ。志ん朝・談志の名演でも有名。
火焔太鼓 落語|あらすじ・オチ「半鐘はおじゃん」意味を完全解説
【5分でわかる】火焔太鼓のあらすじとオチを完全解説。一分の太鼓が三百両に!「半鐘はおじゃんになる」の意味とは?商売下手が大成功する痛快落語。

大富豪・豪商がテーマの古典落語

【古典落語】須磨の浦風 あらすじ・オチ・解説 | 殿様の機転とおならの涼風騒動
古典落語「須磨の浦風」のあらすじとオチを詳しく解説。鴻池家で紀州公をもてなす際の珍騒動と、殿様の機転ある対応「須磨の浦風が腐った」のオチが楽しめる上方落語の名作です。
井戸の茶碗 落語|あらすじ・オチ「また小判が出るといけない」意味を完全解説
【5分でわかる】井戸の茶碗のあらすじとオチを完全解説。正直者たちが織りなす美談から名器発見と縁談成立まで。「また小判が出るといけない」の意味とは?

期待外れ・逆転オチの古典落語

目黒のさんま 落語|あらすじ・オチ「さんまは目黒に限る」意味を完全解説
【5分でわかる】目黒のさんまのあらすじとオチを完全解説。殿様が目黒で食べたさんまに感動し「さんまは目黒に限る」と勘違い。調理法の差を理解しない世間知らずのオチとは?
ちりとてちん 落語のあらすじ・オチ・意味を完全解説|腐った豆腐を「長崎名産」と騙す爆笑落語
【ちりとてちん=腐った豆腐の架空珍味】知ったかぶりに腐った豆腐を食べさせる爆笑落語。「豆腐の腐ったような味」オチの意味、NHK朝ドラとの関係も解説。

この噺の魅力と現代への示唆

「莨の火」は、大阪の豪商・鴻池家をモデルにした上方落語の傑作です。千両箱まで用意して待ち構えた結果が「煙草の火」という、期待と現実のギャップが生み出す笑いは現代でも色あせません。

金の力だけでなく、人を楽しませ驚かせる心の余裕こそが真の豊かさであるという教訓は、現代のビジネスにも通じる普遍的なテーマです。

関連記事もお読みください

タイトルとURLをコピーしました