鈴ヶ森
3行でわかるあらすじ
泥棒の見習いが頭と一緒に鈴ヶ森で追剝ぎの実地訓練を行うことになるが、「舅」が犬の符牒だということすら知らない初心者。
頭に教わった脅し文句をたどたどしく旅人に言うものの、旅人に「とうしろう上り、泥棒の前座だな」と見抜かれる。
逆に旅人に脅されて見習い泥棒は「やめて、やめて!身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」と降参してしまう。
10行でわかるあらすじとオチ
泥棒の見習いが頭と一緒に追剝ぎの実地訓練に行くことになり、頭が「舅に食わせる」と言うが見習いは意味がわからない。
頭が説明すると舅は犬の符牒で、「ドス」も「ドッと刺してスッと抜く」から来ていることを教える。
物騒な二人が家から出ていくと「物騒なのが二人出て行くから大丈夫」と見習いが言って頭を呆れさせる。
鈴ヶ森に向かう道中、頭は追剝ぎの決まり文句を教えるが長すぎて見習いは覚えられない。
「紙に書いてください」「暗くて書けない」「読めないから相手に読んでもらいましょ」と頼りない会話が続く。
鈴ヶ森に着くと見習いは竹藪に隠れるが筍に尻を突かれてもがいている始末。
旅人が通りかかると頭に押し出された見習いがたどたどしく脅し文句を並べ始める。
なんとか「身ぐるみ脱いで置いて行け」「二尺八寸段平物をうぬが土手っ腹にお見舞え申す」まで言い切る。
しかし旅人は「とうしろう上り、泥棒の前座だな」と見抜き「四の五の言うと首根っこ引っこ抜くぞ」と反撃する。
見習い泥棒は「やめて、やめて!身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」と情けなく降参してしまう。
解説
「鈴ヶ森」は、泥棒稼業の師弟関係と初心者の失敗を描いた古典落語です。
鈴ヶ森という実在の処刑場を舞台に選んだことで、本来恐ろしい場所での滑稽な出来事という対比効果を生んでいます。
見習い泥棒の無知ぶりは徹底しており、「舅」が犬の符牒であることを知らない、長い脅し文句を覚えられない、竹藪で筍に突かれるなど、連続したドジ描写が笑いを誘います。
最大の見どころは、脅す側と脅される側の立場逆転で、プロの旅人に素人がバレてしまう結末は、準備不足の教訓的な意味も含んでいます。
江戸時代の実際の符牒や泥棒の作法も紹介されており、当時の社会背景を知る上でも興味深い作品となっています。
あらすじ
ちょっと抜けている泥棒の見習いが、頭(かしら)と追剝ぎの実地訓練に行くことになる。
頭が「舅(しゅうと)に食わせるからむすびを風呂敷に包め」と言うと、「誰の舅ですか?」と、まだ泥棒の基礎知識も頭に入っていない。
舅はうるさいから犬の符牒なのだ。
頭が「ドスを差して行けよ」、見習い「どうしてドスと言ぅんですか」、「うるせぇな、ドッと刺して、スッて抜くからだ」と、頭はもう投げ槍だ。
頭、「表へ出ろ。
戸締まりはしたか。近頃、物騒だからな」、「もう大丈夫です。物騒なのが二人出て行きますから」、なるほどごもっともだ。
頭は今日は鈴ヶ森で追剝ぎだと明かすと、見習いは「鈴ヶ森は幡随院長兵衛や白井権八みたいな強いのが出て来るし、暗くて怖いから、もっと明るい所にしましょ」なんてすっかり逃げ腰で頼りない。
頭は歩きながら追剝ぎの決まりゼリフを教える。「お~い、旅人。
ここを知って通ったか、知らずに通ったか。
明けの元朝から暮れの晦日まで、俺の頭の縄張りだ。
知って通れば命は無し、知らずに通れば命は助けてやるが、身ぐるみ脱いで置いて行け。嫌じゃ何じゃと抜かせば最後の助、伊達には差さぬ二尺八寸段平物をうぬが土手っ腹にお見舞え申す」だが、覚えられるはずがない。
見習いは、「紙に書いてください」、頭「こんな暗くて書けるか」、見習い「あっしも読めませんから、相手に読んでもらいましょ」と情けない。
やっと鈴ヶ森に着いて見習いは、竹藪に身を隠すが筍に尻を突かれもがいている。
そこへ旅人が通り掛かった。
怖がる見習いを頭はポンと押し出した。
旅人の前で見習いはたどたどしく脅し文句を並べ始める。
それでも何とか、「身ぐるみ脱いで置いて行け。・・・・・二尺八寸段平物をうぬが土手っ腹にお見舞え申す」にたどり着いた。
旅人は追剝ぎの様子から、とうしろう上り、泥棒の前座だなと見破り、「四の五の言うと首根っこ引っこ抜くぞ」と、反撃に出た。
見習い泥棒 「やめて、やめて! 身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」
落語用語解説
- 鈴ヶ森 – 東京都品川区にあった江戸時代の処刑場。現在は史跡公園として整備されている。
- 追剝ぎ(おいはぎ) – 街道や寂しい場所で旅人を襲い、金品を奪う盗賊のこと。
- 頭(かしら) – 盗賊団の親分。見習いを指導する立場。
- 舅(しゅうと) – 泥棒の符牒で「犬」のこと。うるさい存在だから。
- ドス – 短刀の俗称。「ドッと刺してスッと抜く」から来ている。
- とうしろう上り – 素人上がりのこと。プロではない初心者という意味。
よくある質問(FAQ)
Q: 「身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」というオチの意味は?
A: 本来は旅人に「身ぐるみ脱いで置いて行け」と言うはずの追剝ぎが、逆に旅人に脅されて自分が「身ぐるみ脱ぐ」と言ってしまう立場逆転のオチです。
Q: なぜ見習いは旅人に見抜かれたのですか?
A: 脅し文句がたどたどしく、態度も怯えていたため、プロの旅人にはすぐに素人とバレてしまいました。準備不足の典型例です。
Q: 鈴ヶ森は本当に危険な場所だったのですか?
A: 実際の鈴ヶ森は処刑場であり、そのため人気がなく追剝ぎが出やすい場所でした。落語では恐ろしい場所での滑稽な出来事という対比で笑いを生んでいます。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。見習いの間抜けさを愛嬌たっぷりに演じました。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。頭と見習いの掛け合いを絶妙に演じました。
- 立川談志 – 現代落語の革新者。見習いの情けなさを独自の解釈で演じました。
関連する落語演目
同じく「泥棒・盗賊」がテーマの古典落語


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立場逆転がテーマの古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「鈴ヶ森」は、泥棒稼業の師弟関係と初心者の失敗を描いた古典落語の傑作です。見習い泥棒の無知ぶりは徹底しており、「舅」が犬の符牒であることを知らない、長い脅し文句を覚えられないなど、連続したドジ描写が笑いを誘います。
最大の見どころは脅す側と脅される側の立場逆転で、準備不足で仕事に臨んではいけないという教訓的な意味も含んでいます。現代のビジネスにも通じる普遍的なテーマです。


