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【古典落語】おもと違い あらすじ・オチ・解説 | 万年青と女性名の聞き間違いから始まる殺人犯扱いの大騒動

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話芸の殿堂-古典落語-おもと違い
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おもと違い

3行でわかるあらすじ

博打で作った借金を返すため、大工の棟梁辰五郎が預かっていた万年青を質屋に入れ「万年青をぶち殺して穴埋めした」と話す。
飯炊きの権助が聞き間違い、女性の「おもとさん」を殺害したと勘違いして兄貴分に報告し大騒動になる。
最後は質屋の川上屋と川の名前を混同した権助の「もうとうに流れちまった」発言で締めくくられる。

10行でわかるあらすじとオチ

大工の棟梁辰五郎は博打で作った借金の穴埋めのため、兄貴分から預かっていた万年青の盆栽を質屋の川上屋に入れる。
弟分に博打の怖さを語る際「万年青をぶち殺してなんとか穴埋めした」と説明する。
隣の部屋で居眠り半分に聞いていた飯炊きの権助が、店の旦那の娘おもとさんを殺したと勘違いする。
権助は一大事と辰五郎の兄貴分の家に駆け込んで報告する。
兄貴分は半信半疑で辰五郎を呼び出し、預かったおもとを殺したのかと問い詰める。
辰五郎は「バレちまったですかい」「ぶち殺して穴を埋めちゃった」と答えて誤解が深まる。
兄貴分が人殺しだと責めると、辰五郎は驚いて万年青を質屋に入れただけだと説明する。
押し入れから出てきた権助が「川上へ放り込んだのはいつのことだ」と質問する。
辰五郎が「九か月ばかり前だ」と答えると、権助は「もうとうに流れちまったんべえ」と言う。
辰五郎の「心配するねぇ、ちゃんと利上げしてあらぁね」で質屋と川の混同が明らかになるオチ。

解説

落語「おもと違い」は、万年青(植物)と女性名「おもと」の聞き間違いから生じる勘違い噺です。
二つの「おもと」のアクセントが異なるため、混同に無理があると指摘されることもありますが、初代円座から新朝まで多くの名人が演じてきた古典落語です。
初代円座や八代目文楽は「おもと」という言葉をなるべく使わず、テンポよく進めることでこの欠点を目立たなくする工夫をしました。
オチは質屋の「川上屋」と川の名前を混同した言葉遊びで、権助の「流れちまった」(質流れ)と辰五郎の「利上げしてある」(質屋の利子)の対比が秀逸です。

ただし、質屋制度の存在から江戸時代設定には無理があるとされています。
五代目新朝はオチを「心配するねぇ、ちゃんと利上げしてあらぁね」に変更してより分かりやすくしました。
博打の怖さを描きながらも、最終的には平和な勘違いで終わる安心感のある噺として親しまれています。

あらすじ

大工の棟梁の辰五郎は博打に凝って都合の悪い借金をこしらえてしまった。
急場をしのぐために兄貴分から預かっている万年青(おもと)の盆栽を質屋の川上屋に入れて借金の穴埋めにした。

そのことを辰五郎の家に遊びに来ていた弟分に、「・・・万年青をぶち殺してなんとか穴埋めした・・・」と博打の怖さを話していた。
それを隣の部屋で辰五郎が出入りしている店の飯炊きの権助が居眠り半分で聞いてしまった。

権助は辰五郎が預かっている店の旦那の娘のおもとを殺して穴に埋めたと勘違いし、一大事と辰五郎の兄貴分の家に駆け込んだ。
話を聞いた兄貴分は半信半疑で若い者に辰五郎を呼びにやる。

ばつが悪そうな顔でやって来て、
辰五郎 「どうも兄貴、ご無沙汰しちまってすまねえ、兄貴にはちょいと顔を合わせにくくて・・・」

兄貴分 「ちょいとじゃねえだろう。てめえは預かったおもとを殺したっていうじゃねえか」

辰五郎 「もうバレちまったですかい?悪事千里を走るとはよく言ったもんで・・・」

兄貴分 「じゃあ、やぱっりてめえは殺したんだな」

辰五郎 「へぇ、ドジ踏んじまって苦しまぎれにぶち殺して穴を埋めちゃったんですよ」

兄貴分 「なんだ、とんでもねえことして、へらへらしやがってやがって。すぐに自首しろ」

辰五郎 「自首?それほどの事でもありゃしませんが」

兄貴分 「人一人殺してるのに何という言い草だ。
旦那の一人娘のおもとさんがお屋敷の奉公から帰って来て店には若い者が大勢いるから、間違いでもあっちゃいけねえと旦那に相談されて、俺んとこは若い者がいてまずいから、てめえの所ならかみさんと二人きりだから安心だと預けたんだ。そのおもとさんをぶち殺しちまって・・・」

辰五郎 「ええっ!誰がそんな事を!冗談いっちゃいけねえや。
俺が言ってるおもとは兄貴から預かってる万年青だよ。
その万年青を川上の質屋へ放り込んだんだ。万年青をぶち殺して博打で負けた借りの穴を埋めたってわけなんだよ」

兄貴分「おい、権助、出て来い!」、権助さん押し入れからのこのこと出て来て、

権助 「川上へ放り込んだんはいつのこんだ」

辰五郎 「もう、九か月ばかり前だ」

権助 「ああ、それじゃ、もうとうに流れちまったんべえ」

辰五郎 「心配するねぇ、ちゃんと利上げしてあらぁね」

落語用語解説

万年青(おもと)

ユリ科の常緑多年草。江戸時代から観賞用植物として珍重され、盆栽や鉢植えで育てられた。特に珍しい品種は高値で取引され、財産価値があった。この噺では質屋に入れられるほどの価値ある盆栽という設定。

質屋(しちや)

品物を担保に金を貸す店。江戸時代から庶民の生活に密着した存在で、困った時の金策の場として利用された。一定期間内に利子をつけて返済しないと「質流れ」となり、品物は質屋のものになった。

質流れ(しちながれ)

質に入れた品物を期限内に請け出せず、質屋の所有となること。この噺では権助が「流れちまった」と言うのは、川に流されたという意味と質流れの二重の意味がかかっている。

利上げ(りあげ)

質屋で品物を請け出す際に支払う利子のこと。定期的に利子だけを支払い、品物を預けたままにすることもできた。辰五郎の「ちゃんと利上げしてある」というセリフは、質流れにならないよう利子を払っているという意味。

博打(ばくち)

賭博のこと。江戸時代は禁制だったが、裏では盛んに行われていた。職人が博打で身を持ち崩す話は落語の定番テーマの一つ。

棟梁(とうりょう)

大工の親方。職人の中でも一目置かれる存在で、弟子や職人を束ねた。辰五郎は棟梁という立場にありながら博打で借金を作ってしまったという設定。

川上屋(かわかみや)

質屋の屋号。この噺では「川上」という部分が、川の名前と混同されるオチの仕掛けとなっている。権助は質屋の「川上屋」を川の「川上」と勘違いしている。

よくある質問

Q1: この落語はどの地域の演目ですか?

A: 江戸落語の演目です。大工の棟梁や質屋など、江戸の庶民生活を舞台にした噺で、江戸の噺家によって演じられてきました。ただし、二つの「おもと」のアクセントの違いなど、演じる上での工夫が必要な演目でもあります。

Q2: なぜ「おもと」の聞き間違いが起こったのですか?

A: 権助が居眠り半分で聞いていたこと、そして「ぶち殺して穴を埋めた」という物騒な表現が重なったためです。本来、万年青(植物)と女性名のおもとはアクセントが異なりますが、半分寝ていた権助には区別がつかなかったという設定です。

Q3: 「万年青をぶち殺す」とはどういう意味ですか?

A: 大切に育てていた万年青を質屋に入れてしまったこと、つまり手放してしまったことを「ぶち殺す」と表現しています。生き物のように大切にしていた植物を手放す無念さを、このような強い言葉で表現しているのです。

Q4: 最後のオチの「流れちまった」と「利上げしてある」の意味は?

A: 権助は質屋の「川上屋」を川の「川上」と勘違いして、川に流されて失われたと思っています(「流れちまった」)。一方、辰五郎は質屋に預けたまま定期的に利子を払っているので質流れにはなっていないと答えています(「利上げしてある」)。この食い違いがオチとなっています。

Q5: なぜこの噺は演じるのが難しいとされるのですか?

A: 二つの「おもと」のアクセントが異なるため、聞き間違いに無理があるという指摘があるからです。そのため、名人たちは「おもと」という言葉をなるべく使わず、テンポよく進めるなどの工夫をしています。また、質屋制度の時代設定など、細かい矛盾も指摘されることがあります。

名演者による口演

八代目桂文楽

文楽の「おもと違い」は、テンポの良さと緻密な構成が光ります。「おもと」という言葉をなるべく使わず、状況描写で聞き手を引き込む技術が見事です。辰五郎の焦りと権助の勘違いを、明確に演じ分けます。

五代目古今亭志ん生

志ん生の演じる辰五郎は、どこか憎めない愛嬌があります。博打で失敗した棟梁の情けなさと、殺人犯扱いされた時の驚きを、飄々とした語り口で表現。権助の田舎訛りも効果的に使います。

五代目柳家小さん

小さんは、登場人物の心理描写を丁寧に演じます。辰五郎のバツの悪さ、兄貴分の怒り、権助の勘違いと、それぞれのキャラクターが生き生きと描かれます。最後のオチまでの流れが自然で、聴きごたえがあります。

十代目柳家小三治

小三治の「おもと違い」は、勘違いが深まっていく過程の描写が秀逸です。辰五郎と兄貴分の会話のすれ違い、そして真相が明らかになった時の権助の間抜けさを、巧みに演じます。博打の怖さも説得力を持って伝わります。

関連する落語演目

勘違い・聞き間違いの噺

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https://wagei.deci.jp/wordpress/konnyakumondou/
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博打・賭け事の噺

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言葉遊び・ダジャレオチの噺

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https://wagei.deci.jp/wordpress/hirabayashi/

この噺の魅力と現代への示唆

「おもと違い」は、聞き間違いから始まる勘違いが雪だるま式に大きくなっていく様子を描いた噺です。

権助の聞き間違いは、居眠り半分で話を聞いていたことが原因です。これは現代でも起こりうる状況で、中途半端に話を聞いて勝手な解釈をしてしまう危険性を示しています。

辰五郎の「バレちまったですかい」「ぶち殺して穴を埋めた」という発言は、万年青を質に入れたことを指していますが、殺人事件と勘違いしている兄貴分には完全に自白と聞こえてしまいます。同じ言葉でも、前提が違えば全く異なる意味に取られてしまうという教訓です。

博打の怖さも描かれています。棟梁という立場にありながら、博打で借金を作り、大切な預かり物を質に入れてしまう辰五郎の姿は、ギャンブル依存の恐ろしさを表しています。

最後のオチは、質屋の「川上屋」と川の「川上」を混同した権助の勘違いです。「流れちまった」(質流れと川に流される)と「利上げしてある」(質屋の利子)という言葉の二重性が、見事に活用されています。

聞き間違い、勘違い、そして言葉遊び。「おもと違い」は、コミュニケーションの難しさと、誤解から生まれる笑いを描いた一席なのです。

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