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【古典落語】おかふい あらすじ・オチ・解説 | 夫婦で鼻削り刑の禁断ラブストーリー

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話芸の殿堂-古典落語-おかふい
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おかふい

3行でわかるあらすじ

質屋主人・卯兵衛が美人妻・りえと結婚するが、病気で死ぬ前に妻の鼻をそがせる。
全快した卯兵衛は鼻なしの妻を疎ましく思い虐待し、奉行所で自らも鼻削り刑を受ける。
鼻なし夫婦が「いとふい」「かわふい」と愛を語り合い、番頭が「おかふい」と笑う。

10行でわかるあらすじとオチ

質屋の番頭・金兵衛が遊廓で病気をもらい鼻なしになる。
主人の卯兵衛が浅草で美人のりえに一目惚れして結婚する。
夫婦は仲睦まじく暮らすが、卯兵衛が大病になり死を覚悟する。
美人の妻を残すのが心残りで、他の男が寄り付かないよう妻の鼻をそがせる。
卯兵衛は全快するが、今度は鼻なしの妻を疎ましく思うようになる。
卯兵衛が妻を虐待し、店の金を持って家を空けるようになる。
りえの親類が怒って南町奉行所に訴え出る。
お白州の裁きで目には目をと、卯兵衛も鼻削り刑を受ける。
鼻なし夫婦になって仲が良くなり「いとふい」「かわふい」と愛を語り合う。
それを聞いた番頭が「おかふい」と笑う言葉遊びのオチ。

解説

「おかふい」は、人情噺の中でも特に複雑な人間心理を描いた作品です。美醜への執着、死への恐怖、愛憎の入り混じった感情など、人間の業の深さを浮き彫りにしています。

この噺の見どころは、卯兵衛の心境の変化です。死を前にして美人の妻を失いたくないという執着から妻の鼻をそがせ、回復すると今度はその鼻なしの妻を疎ましく思うという身勝手さが、人間の醜い部分をリアルに描写しています。

江戸時代の社会背景も重要な要素です。遊廓での遊興で性病を患い鼻を失うという設定は、当時の実情を反映しています。また、奉行所での「目には目を」の裁きは、江戸時代の刑罰制度の一面を示しています。

オチは鼻のない人の発音の特徴を利用した言葉遊びです。「いとおしい」が「いとふい」、「可愛い」が「かわふい」と発音され、それを聞いた番頭が「おかふい」(おかしい)と笑います。悲劇的な状況を軽妙な笑いに転換する落語ならではの技法が光る秀作です。

あらすじ

麹町三丁目の万屋卯兵衛という質屋の堅物の番頭の金兵衛。
友達に誘われて新宿の廓へ2、3度遊びに行って土産(悪い病気)をもらって来て、鼻なしになってしまった。

主人の卯兵衛は年頃で美人好き。
あちこちと嫁を探していたが、なかなか気に入るの女が見つからない。
ある日、浅草観音のお参りの帰り、仲見世で年頃18.9のいい女に出会い一目惚れ。
後をついて行くと本町あたりの大家の娘、りえで、器量よしで性格もよく、八方からぜひ嫁にと引く手あまたという。
卯兵衛は自ら足しげく娘の家に通い、何度も頼んだ末にとうとう嫁にもらい夫婦になった。

二人は仲睦まじく暮らしていたが、卯兵衛が医者も見放す大病になる。
臨終が近いことを知った卯兵衛は、美人のりえを残して死ぬことが口惜しく心残りだ。
番頭のように鼻なしになれば、誰も言い寄る者はいないだろうと、りえに黒髪を切らせ、鼻をそがせた。

ところが、もう思い残すことはないと安心したのか卯兵衛は全快してしまう。
そうなると、鼻なしのりえが疎ましく邪魔になる。
りえに乱暴したり、店の金を持って何日も家を空けるようになった。
これを知って怒ったりえの親類が、南町奉行所に訴え出る。

お白州での裁きで、喧嘩両成敗、目には目をで、卯兵衛は鼻をそがれてしまった。
そうなると外へも出られず、元のようにりえを可愛がり、大事にするようになり、夫婦仲は以前よりも増してよくなった。

ある日、奥の座敷で、
りえ 「旦那ひゃまが、いとふい(いとおしい)」

卯兵衛 「おまえがかわふい(可愛い)」、これを聞いた

番頭 「あはははは、これは、おかふい」


落語用語解説

鼻削り(はなそぎ) – 江戸時代の刑罰の一つで、鼻をそぐことで罪人に永久的な烙印を押す制裁。主に姦通罪や重大な不貞行為に対して科されました。この噺では私的な理由と刑罰の両方で鼻削りが登場します。

遊廓の土産(ゆうかくのみやげ) – 遊廓で遊興した結果感染する性病のこと。江戸時代には梅毒などが蔓延しており、治療法が確立されていなかったため、鼻が崩れ落ちる症状が出ることもありました。

お白州(おしらす) – 奉行所の法廷。白い砂が敷かれた場所で裁きが行われたことからこの名がつきました。南町奉行所は江戸の有名な裁判所で、多くの落語にも登場します。

目には目を – 同害報復の原則。古代からある刑罰の考え方で、被害者が受けた害と同じ害を加害者にも与えるという思想です。この噺では卯兵衛が妻の鼻をそいだため、自分も鼻をそがれる結果となります。

質屋(しちや) – 品物を担保に金銭を貸す商売。江戸時代の庶民の重要な金融機関で、質屋の主人は経済的に裕福な商人として描かれることが多い落語の定番登場人物です。

仲見世(なかみせ) – 浅草寺の参道に並ぶ商店街。江戸時代から続く繁華街で、多くの参拝客で賑わう場所でした。落語では出会いの場としてよく登場します。

よくある質問(FAQ)

Q: おかふいは江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 江戸落語の演目です。舞台が麹町、浅草、新宿といった江戸(東京)の地名であり、南町奉行所も江戸の施設です。

Q: 「おかふい」というタイトルの意味は?
A: 鼻のない人の発音で「おかしい」が「おかふい」となることから来ています。オチの番頭のセリフ「おかふい」がそのままタイトルになっています。

Q: なぜ卯兵衛は妻の鼻をそがせたのですか?
A: 死を目前にした卯兵衛が、美人の妻を残して死ぬことが心残りで、死後に他の男が寄ってこないよう鼻をそがせました。極端な独占欲と嫉妬心の表れです。

Q: 江戸時代に本当に鼻削り刑はあったのですか?
A: はい、実際に存在しました。主に姦通罪などの不貞行為に対する刑罰として行われ、永久的な烙印として機能しました。ただし、この噺のような私的な鼻削りは違法行為です。

Q: このオチの言葉遊びはどう成立しているのですか?
A: 鼻がない人は鼻音(ナ行、マ行など)の発音が「ハ行」「パ行」になります。「いとおしい」→「いとふい」、「可愛い」→「かわふい」、「おかしい」→「おかふい」という発音の変化を利用した言葉遊びです。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

古今亭志ん生(五代目) – 戦後落語界の巨匠。人間の業の深さと愚かさを絶妙に表現し、悲劇を笑いに転換する名人芸を見せました。

三遊亭圓生(六代目) – 人間国宝。卯兵衛の心境の変化を丁寧に描き、人間心理の機微を繊細に演じる重厚な口演で知られました。

柳家小三治 – 現代の名手。人情噺の第一人者として、卯兵衛の身勝手さとりえの健気さを対照的に表現し、深い余韻を残す演出が特徴です。

春風亭一朝 – 実力派の人情噺演者。江戸時代の社会背景を丁寧に描きながら、言葉遊びのオチを軽妙に決める演出が評価されています。

関連する落語演目

同じく「人情噺」の代表作

「夫婦の愛憎」を描いた古典落語

「言葉遊び」がオチの古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「おかふい」は、人間の愚かさと業の深さを描いた落語の中でも特に印象的な作品です。

この噺の最大の魅力は、卯兵衛の極端な心境の変化にあります。死を前にした執着心から妻の美貌を奪い、回復すると今度はその醜さを嫌悪する。この身勝手さは人間の本質的な弱さと醜さを象徴しています。現代でも、相手を自分の都合で変えようとし、その結果に不満を持つという行動パターンは珍しくありません。

美醜への執着というテーマも重要です。卯兵衛が美人であることだけを理由にりえを選び、美貌を失うと虐待するという展開は、外見だけで人を判断することの愚かさを示しています。現代社会でも容姿至上主義の問題は根深く、この噺は時代を超えた警鐘を鳴らしています。

「目には目を」の裁きで卯兵衛も鼻をそがれる展開は、因果応報の教訓を含んでいます。他者に与えた苦しみは必ず自分に返ってくるという普遍的な真理を、分かりやすい形で提示しています。

興味深いのは、二人とも鼻をそがれてから夫婦仲が良くなるという点です。外見が同じになったことで、ようやく対等な関係が築けたという皮肉な結末は、真の愛とは何かを問いかけています。外見の美醜ではなく、内面の理解と共感こそが夫婦関係の基盤であるという教訓が込められています。

言葉遊びのオチも秀逸です。深刻な人情噺を「おかふい」という軽妙な一言で締めくくることで、悲劇を笑いに転換する落語ならではの技法が光ります。どんなに重い状況でも笑いに変えられるという落語の本質を体現しています。

現代への示唆として、この噺は「相手を変えようとするのではなく、自分が変わること」の重要性も示しています。卯兵衛は妻を変えようとして失敗し、最終的には自分も変わることで幸せを取り戻しました。

実際の高座では、演者によって卯兵衛の身勝手さの表現や、りえの健気さの強調が異なり、それぞれの解釈が楽しめます。人情噺の深みと言葉遊びの軽妙さが融合した名作を、ぜひ生の落語会でお楽しみください。


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