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【古典落語】二階借り あらすじ・オチ・解説 | 堂々と自宅で妻の浮気を許可する呑気な亭主

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話芸の殿堂-古典落語-二階借り
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二階借り

3行でわかるあらすじ

間男の辰公が財布を忘れて困り、堂々と亭主に「近所の嫁さんと逢引したいから二階を貸してくれ」と申し込む。
電気を消して正体を隠しながら、実は亭主の妻お芳と二階で逢引する。
亭主は最後まで相手が自分の妻だと気づかず、のんびりと茶漬けを食べ続ける。

10行でわかるあらすじとオチ

亭主が茶漬けを食っている時、妻お芳が風呂に行くと言って出ていく。
実はお芳は間男の辰公と待ち合わせで、盆屋で逢引する予定だった。
しかし辰公は財布を忘れ、お芳も風呂銭しか持っていない。
困った辰公はお芳の家の二階を借りようと提案する。
辰公は堂々と亭主に「近所の嫁さんと逢引したいから二階を貸してくれ」と申し込む。
亭主は茶漬けを食いながら文句を言うが、辰公は「顔が見えたら具合が悪い」と電気を消して二階に上がる。
二階でお芳と逢引し、目的を果たした後、再び電気を消して降りて来る。
辰公は何食わぬ顔で帰り、お芳も何事もなかったかのように帰宅する。
お芳が亭主に辰公の話を聞くと、連れて来た「近所の嫁さん」の亭主について話題になる。
亭主が「おおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」と言い、自分がその当事者だと気づかないオチ。

解説

「二階借り」は、間男噺の代表的な演目で、皮肉とユーモアが絶妙に組み合わされた秀作です。亭主の鈍感さと間男の大胆さのコントラストが笑いを生み出し、関西弁の味わいが物語に温かみを添えています。

この噺の最大の見どころは、辰公の途方もない大胆さです。普通なら隠れてこそこそと行う浮気を、堂々と当の亭主に申し込んで場所まで借りるという発想は、常識を覆す斬新さがあります。「近所同士、顔が見えたら具合が悪い」という理由で電気を消す設定も、物語の核心を隠すための巧妙な仕掛けとなっています。

亭主の描写も秀逸で、始終茶漬けを食べ続けているという設定が、彼の鈍感さと平和ボケぶりを効果的に表現しています。自分の妻が目の前で浮気をしているのに、それに気づかずにのんびりと食事を続ける姿は、哀れでもあり滑稽でもあります。

オチは「おおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」という亭主のセリフに集約されています。浮気された亭主がどんな気持ちでいるかを想像しながら、実は自分がその当事者だという皮肉な状況が、落語ならではのブラックユーモアを生み出しています。観客は亭主の無自覚さに苦笑いしつつ、人間の滑稽さを味わうことになります。

あらすじ

亭主が茶漬けを食っていると、女房のお芳が隣のお咲さんと風呂へ行ってくると言う。
亭主が食べ終わってからにしろと止めるが出て行ってしまう。
お芳は外で亭主の友達の辰公と待ち合わせだ。
辰公は間男で二人で示し合わせて盆屋へ行って逢引する魂胆だ。
だが、辰公は財布を忘れ、お芳も風呂銭しか持っていない。
こうなってもあきらめないのが男と女だ。
辰公はお芳の家の二階を借りようと言い出す。
あきれるお芳に、辰さんはいい知恵があると言ってお芳を引っ張って行く。

辰公は茶漬けを食っている亭主に、「近所の嫁さんといい仲になって盆屋へ行くつもりが財布を忘れたのでので二階を貸してくれ」と堂々と申し込む。
茶漬けを食いながらごちゃごちゃと言っている亭主を尻目に辰公は、「近所の人やさかい、お互いに顔を知ってたら気まずい」と、勝手に電気を消してお芳と二階へ上がってしまった。

二階で女房が浮気しているのも知らない亭主はぼやきながらまだ茶漬けを食っている。
さて二階の二人は目的を果たし、辰公は「近所同士、顔が見えたら具合が悪い」と、また電気を消して何食わぬ顔で降りて来た。
お芳を外に出した辰公はまだだらだらと茶漬けを食っている亭主に、「えらい済まなんだ。近々必ず入れ合わせさしてもらうよって」とさっぱりした涼しい顔で帰ってしまった。

そこへお芳が「ただいま」といけしゃあしゃあとして帰って来て、
お芳 「あんたいつまで茶漬け食べてんのん」

亭主 「お前が出て行くなり、辰さんが女子(おなご)連れて来て、盆屋に行く金がないから二階の部屋を貸せちゅうてな」

お芳 「嫌やでまぁ、そんなことに使われたら。前の女子はんとまだ続いてんのか?」

亭主 「あれとはもう別れて。今度は近所の人の嫁はんや言うとったで」

お芳 「まぁ~、そんなことして、バレたらえらいことになんのに」

亭主 「何や 亭主がボ~ッとしてるやさかい、大丈夫やとは言うてたで」

お芳 「ほな、そのご亭主は何にも知らんと今時分どないしてるやろなぁ?」

亭主 「さぁ、おおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」


この噺は、亭主の鈍感さと間男の大胆さが生み出す究極の皮肉を描いた傑作です。自分が被害者であることに気づかない亭主の姿が、笑いと哀れみを同時に呼び起こします。

落語用語解説

二階借り(にかいがり)

文字通り「二階を借りること」ですが、この噺では間男が亭主に堂々と二階を借りて妻と逢引するという皮肉な状況を指します。タイトルが内容の核心を端的に表しています。

間男(まおとこ)

人妻と密通する男のこと。江戸時代には重罪でしたが、落語では人間の欲望を描く定番のテーマとして扱われます。この噺の辰公はその典型的な人物です。

盆屋(ぼんや)

密会のために部屋を貸す宿のこと。現代の「ラブホテル」に相当します。江戸時代から存在した商売で、間男噺には欠かせない舞台装置です。

茶漬け(ちゃづけ)

ご飯にお茶をかけた簡単な食事。亭主が終始茶漬けを食べ続けているという設定が、彼の鈍感さと平和ボケぶりを象徴しています。

示し合わせる(しめしあわせる)

事前に相談して計画を立てること。お芳と辰公が盆屋で逢引する計画を立てていたことを表します。

入れ合わせる(いれあわせる)

お礼をすること、恩返しをすること。辰公が亭主に二階を借りたお礼を言う場面で使われる関西弁の表現です。

いけしゃあしゃあ

図々しくも平然としている様子。お芳が浮気から帰ってきて何事もなかったかのように振る舞う態度を表します。

おなご

女性のこと。関西弁での呼び方で、この噺の温かみのある雰囲気を作り出す言葉遣いの一つです。

顔が見えたら具合が悪い

お互いに正体がバレると困るという意味。辰公が電気を消す理由として使う言い訳ですが、実際には亭主に妻だとバレないための工夫です。

何も知らんと

何も知らずに、無自覚なまま。オチの「何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」は、自分がその当事者であることに気づかない皮肉を生み出します。

ボーッとしてる

ぼんやりしている、気づいていない様子。亭主が「亭主がボーッとしてる」と言うのは、自分自身のことを指しているという皮肉です。

涼しい顔

平然とした態度、何事もなかったかのような表情。辰公が目的を果たした後に「さっぱりした涼しい顔で帰る」様子が、彼の図太さを表しています。

よくある質問 FAQ

なぜ辰公は堂々と亭主に二階を借りたのですか?

財布を忘れて盆屋に行けなかったからです。しかし、普通なら諦めるところを、辰公は驚くべき大胆さで「近所の嫁さんと逢引したいから二階を貸してくれ」と申し込みます。この途方もない発想と実行力が、この噺の最大の笑いのポイントです。

なぜ亭主は妻が二階にいることに気づかなかったのですか?

辰公が「近所同士、顔が見えたら具合が悪い」と言って電気を消したからです。さらに、亭主は終始茶漫然と茶漬けを食べ続けており、妻が風呂に行ったと信じ込んでいました。この鈍感さが、噺の皮肉な展開を可能にしています。

この噺のオチはどこが面白いのですか?

亭主が「浮気された亭主はおおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」と言いながら、自分がその当事者だと気づいていない皮肉です。観客だけが真実を知っている状況で、亭主の無自覚な発言が最高の笑いを生み出します。

江戸時代に実際にこのようなことはあったのですか?

落語的な誇張はありますが、間男や密通は江戸時代にも存在しました。ただし、この噺のように堂々と亭主に場所を借りるような大胆な行為は創作です。人間の欲望と愚かさを極端に描くことで、笑いと教訓を生み出すのが落語の手法です。

なぜこの噺は関西弁で演じられるのですか?

「二階借り」は上方落語の演目だからです。関西弁の柔らかな語り口が、間男という重いテーマを軽妙に描くのに適しています。「いけしゃあしゃあ」「おなご」「入れ合わせる」などの関西言葉が、物語に温かみを添えています。

この噺の教訓は何ですか?

表面的には「鈍感な亭主への皮肉」ですが、より深い意味では、人間は自分のことになると見えなくなるという教訓が込められています。他人事だと思っていることが実は自分事である、という人生の皮肉を笑いを通じて描いています。

名演者による口演

この噺は上方落語の代表的な間男噺として、多くの名演者が演じてきました。亭主の鈍感さと辰公の大胆さの対比が見どころです。

  • 桂米朝 – 関西弁の味わいを活かし、亭主の鈍感さと辰公の図太さを巧みに対比させた名演
  • 桂枝雀 – オーバーアクションで辰公の大胆さを強調し、笑いを最大限に引き出す演出
  • 桂文枝(五代目) – 軽妙な語り口で、皮肉な状況をユーモラスに描く上品な演出
  • 桂南光 – 亭主の間抜けぶりを愛嬌たっぷりに演じ、観客の共感を呼ぶ名演
  • 桂吉朝 – 緻密な人物描写で、三人の心理を丁寧に描き分ける繊細な演出

関連する落語演目

二階ぞめき(にかいぞめき)

https://wagei.deci.jp/wordpress/nikaizomeki/
同じく二階を舞台にした噺。「二階借り」と対をなす演目で、二階での騒動を描いています。

時そば(ときそば)

https://wagei.deci.jp/wordpress/tokisoba/
知恵と騙しを描いた古典落語。辰公の機転と大胆さという点で通じるものがあります。

文七元結(ぶんしち)

https://wagei.deci.jp/wordpress/bunshichi/
人情噺の対極として。「二階借り」の軽妙さとは対照的な、真面目な人間ドラマです。

目黒のさんま(めぐまのさんま)

https://wagei.deci.jp/wordpress/mekauma/
殿様の鈍感さを描いた噺。亭主の鈍感さという点で「二階借り」と共通するテーマがあります。

この噺の魅力と現代への示唆

「二階借り」は、人間の鈍感さと図々しさを極限まで描いた傑作です。辰公の途方もない大胆さは、常識を覆す痛快さがあり、一方で亭主の鈍感さは、自分のことになると見えなくなる人間の本質を突いています。

この噺が現代にも通じるのは、「他人事だと思っていることが実は自分事である」という普遍的なテーマを扱っているからです。私たちは日常生活で、自分に起きていることに気づかず、他人の状況を想像しながら実は自分がその当事者だということがあります。

オチの「おおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」は、観客だけが真実を知っている状況で、亭主の無自覚な発言が最高の皮肉を生み出します。この構造は、ギリシャ悲劇の「劇的アイロニー」にも通じる高度な技法です。

また、間男という道徳的に問題のあるテーマを、笑いに昇華させる落語の力も見事です。説教臭くならずに、人間の欲望と愚かさを描きながら、観客を楽しませる。これこそが落語の真髄と言えるでしょう。

江戸時代から続く人間観察の知恵が詰まった、笑いと皮肉が同居する名作です。

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